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誤用 - Wikipedia

誤用

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

誤用(ごよう、英語Misuse)とは、通常、言葉について云われ、ある言葉の伝統的・慣用的な意味や用法とは異なる、間違った意味や用法で、その言葉が使用されることを云う。

言葉や単語の意味における誤用以外に、ある特定の目的や用途を持つ物品や道具などが、本来の用途以外の目的などで使用される場合にも、誤用ということがある。

目次

[編集] 概説

[編集] 言葉の後天性

人間において、言語の普遍的な構造は先天的なものであるが、個別言語が存在することからも分かる通り、現実に使用される言語は後天的に学習され、フェルディナン・ド・ソシュールが述べた通り、シニフィエ(言葉の意味内容)とシニフィアン(意味を示す記号)のあいだの関係は恣意的である。

人間にとって言語を習得することは、それに必要な言語習得能力は先天的で共通のものとはいえ、ひとりひとりが個別的に文法構造や単語や、その単語の意味・用法を学習する過程になる。イヌネコはどう違うのかは、言葉(記号)それ自体を学習・記憶する過程と同時に、それと関連づけられている画像や実物を見ることや(あるいは他の感覚で提示されることや)、その語がどのような文脈・規則の中で使われているのか、使用例を聞いたり読んだりすることで学習されてゆく。言語習得過程では、子供は非常に多数の言葉の「誤用」を行うが、経験を積むに連れ、誤用は減って行く。

[編集] 誤用の起こる原因

人が成人したという場合、その言語における日常的な使用法については、「正しい用法」を習得しているということが暗黙で認められている。しかし、成人においても、言語習得過程で間違って覚えた言葉の意味や用法が残っていることがあり、また、使用したことがない言葉や、専門的な言葉などについては、その言葉の意味や用法で、知識の欠如の為や、言葉の独自な解釈などから、間違った理解が生じることがあり、この場合、誤用となる。

あるいは、似たような言葉と混同することで、誤用が生じたり、新しく造語された言葉や、外来語新語などの場合、意味や用法をよく理解していないにも拘わらず、他の人が使っているというので、自分でも使った結果、誤用となることもある。専門的な分野などの術語(term)などでは、専門的な前提知識の理解が欠如または不足しているにも拘わらず、よく分からないままに言葉を使うことで誤用が生じることがある。

[編集] 誤用の例

日本語などの場合では、漢字で表現される言葉が多く、表意文字として漢字自体に固有な意味があるので、二つ以上の漢字からなる言葉について、個々の漢字の意味から類推して言葉の意味を理解する、あるいは想定するということがあり、正しい理解になる場合と、間違った理解になって誤用を導くことがある。例えば、近年「性癖」という言葉を、「性的な」と考えて、性的嗜好の意味で使う誤用が生じているが、これは漢字の意味から類推して間違った意味理解が生じたのだと考えられる(性癖とは、癖と同じ意味の言葉である)。

英語フランス語などでも、ラテン語ギリシア語などから来る、「接頭語語幹接尾語」というような形で単語が構成されていることがあり、ここから複雑な単語の意味を類推することが可能であるが、このような方法がうまく行く場合もあれば、意味の取り違え、誤用となる場合がある。例えば、defuse と diffuse は、前者は、de + fuse で、後者は、dis + fuse であるが、接頭辞が同じラテン語起源で似たような意味であっても、英語では同じ綴りになる「fuse」が語源的には別の意味の言葉である。発音的にも「ディフューズ」のような音で、後ろの「フューズ」にアクセントがあるため、両者の混同が生じ、誤用となっている例がある。

また古典的な例で、意図的な造語であり、かつ現在では誤用でないが、語源了解で誤解の起こり得る言葉に、トマス・モアが造語した Utopia(ユートピア)がある。これは元々は、「ou + topos + ia」で、「存在しない場所」の意味であるが、ギリシア語の接頭辞に「良い」を意味する eu があり、発音においては、英語ではどちらも「ユー」のような音の為、Utopia を、EUtopia と解釈して、意味的に間違いではないが語源的には勘違いを誘導していることがある(ユートピアは「理想郷」という意味に理解され、「良い場所=eu+topia」がこの解釈に合致する)。トマス・モア自身が、冗談半分で、Eutopia という言葉を、後になって造語しているので、余計に間違いが起こりやすい。

[編集] 言語学的意味

言葉の誤用は、個別言語学における通時的変異の一つの重要なファクタである。意味・用法の誤用に加え、発音における誤用も存在し、他の個別言語との接触や混成の過程では、発音が系統的に変化することがある。これは、変異が起こる具体的な場面・状況で見れば、個別的な発音の誤用(誤った発音)の蓄積である。このようにして、例えば印欧語に見られるグリムの法則などが成立したと云える。

[編集] 関連項目

他の言語


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