診療報酬
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診療報酬(しんりょうほうしゅう)は、保険診療の際に医療行為等について計算される報酬の対価。診療報酬点数表に基づいて計算され、点数で表現される。「医師の報酬」と誤解されがちだが、医療行為を行った医療機関・調剤薬局の医業収入の総和を意味する。医業収入には、医師の医療行為に対する対価である技術料、薬剤師の調剤行為に対する調剤技術料、処方された薬剤の薬剤費、使用された医療材料費、医療行為に伴って行われた検査費用などが含まれる。保険診療では患者はこの一部を窓口で支払い、残りは公的医療保険で支払われる。
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[編集] 概要
保険診療機関は実施した診療内容等にもとづき、診療報酬明細書を作成し公的医療保険を請求するが、明細書の各項目は金額ではなく点数化されている。診療報酬点数は厚生労働省が告示する。1点=10円。患者は診療報酬によって計算された一部(3割負担など)を医療機関窓口で支払う。医療機関等で保険を使って診断・治療を受ける(保険診療)ときに用いられる医療費計算の体系となっている。診療報酬点数には医科[1]・歯科・調剤の3種類がある。急性期病院で用いる診断群分類点数 (DPC点数表)もある。健康保険法と老人保健法に基づく。
[編集] 日本における問題点
[編集] 報酬価額
日本では、中央社会保険医療協議会により診療報酬は決定される。その報酬額が国際的安価かは不明である。なぜなら、国際標準額が不明だからである 。(一部の医師、医師会等が「報酬額は国際標準額の10分の1であり、国民に平等に広く、安価に医療を提供してきた[2]。」とする主張をしているが、参考資料を見ると「国際標準額の10分の1」とする 根拠は米国の再診料と比較してのようであるが、10分の1とならないのは一見して明らかである。さらに、同参考資料は技術料が米国より日本の方が高くなる事例を隠して発表しており、著しく公正さに欠け信用できるものではない。また、調査者は医療費抑制に批判的な医師であり、調査方法の公正さの点でも信用できない。)
医療費抑制に反対する一部の医師、医師会は過剰なほどの反対意識をもっており、公正さが著しく欠けるため、医師会等の医療費抑制を実現する上で利益を得 る団体の発表資料は信用すべきでない。第3者的な立場の団体が適切な医療費分析をすることが求められる。
ちなみに、2006年10月7日付けの週刊東洋経済によれば、医師の時給は医師の平均時給は4985円(標準労働時間の年収にすれば約1078万円)で、200以上ある職種中11位に入っている。よく医師会等が「医師の診療報酬は安く、薄利多売に医師は疲れきっている」という批判をするが、時給が1000円台、2000円台である職種が数多く存在することを考えれば、日本国内の職種比較の観点では医師の診療報酬は決して"薄利"などではなく、十分に高額である。
[編集] 薬価
厚生労働省の方針により、度重なる大幅な薬価引き下げが行われ、薬価差益が経営の根幹となることは無くなった。薬の納入価は先発品といわれるもので対薬価基準で88%~90%前後、特許切れ後の後発品とよばれるものでも80%~85%前後である。消費税を含めるとそれぞれ 95%,85%である。以前は、薬価差益が社会的な問題としてクローズアップされたが、先発品では薬剤の管理費用や借入金利などを考慮すれば、かつて問題となったような薬価差益は既に存在していない。それよりは、基本効果を同じくする新薬が毎年の如く出て、実際の治療に使われる薬価自体の低価格化が進まないことの方がより問題といえる。
[編集] 検査差益
医療機関等において患者から採取された検体の検査は、検査ごとに診療報酬が定められている。多くの検査が医療機関内で実施されるが、登録衛生検査所や医師会検査センターなどの検査受託機関に検査を外注することもしばしばである。
検査外注では、検査受託機関が検査料金を割り引くと保険医療機関のもうけが生じる。この委託検体検査の検査価格差を「検査差益」という。より安く請け負う検査受託機関を探し、検査差益で利益を確保することは、医療機関(または臨床検査科等)の重要な経営要素となっていると考えられる。検体検査はモノであり入札の対象となっている。(公正取引委員会 審決等データベースシステムで臨床検査を検索のこと)
検体検査の診療報酬は市場実勢価格、すなわち、検査受託機関の受託価格を参照して決定される。検体検査は「もの代」とされ、医療機器や薬品類と同じように市場原理が働くことが期待されている。このため、「(患者さんの)検体検査->モノとして安い外注先->検査差益->実勢価格低下->診療報酬引き下げ->検査差益維持のためより安い外注先->・・・・」という循環が生じている。
- 「もの代」については、たとえば「平成20年度診療報酬改定基本方針」(平成19年12月3日)の7ページに記載がある[3]。医療費配分で効率化の余地がある領域の項の中で、医薬品、医療材料、検査等は「もの代」として市場実勢価格を反映して診療報酬が決められる。
検体検査において検査試薬価低下、試薬調整・自動化・少人化などにより検査原価低減の余地がある場合は、検査の診療報酬が実勢価格に基づいて決められることは適正と考えることができるが、競争の結果、検査の精度が維持できないまでに受託価格が低下するばあいは、院内・院外問わず、検体検査において有害事象が生じることが危惧される。人件費配分が大きい検査項目では効率的であることで検査が疲弊し医療の質の低下につながる恐れが否定できない。
また、日本臨床検査医学会を含む臨床検査関連6団体協議会からは「医療制度改革における検体検査の取扱いに関する要望書」(平成13年12月20日)が出されており、この要望書の中に検査差益の記載がある[4]。
[編集] 関連項目
[編集] 注釈
- ^ http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/03/tp0330-1a.html
- ^ http://www.iryoseido.com/toukou/02_001.html
- ^ http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/dl/p0118-1b.pdf
- ^ http://www.jaclap.org/youbou-01.html