視線速度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
視線速度(しせんそくど、radial velocity)とは、天体が持つ速度のうち、観測者の視線方向に沿った速度成分のことである。視線速度を持つ天体からの光はドップラー効果を受け、その天体が遠ざかっている場合には光の波長が伸び(赤方偏移)、近づいている場合には波長が縮む(青方偏移)。
これに対して、天体を観測した時の視線に垂直な速度成分(天球上の見かけの運動)を固有運動または横断速度と呼ぶ。
恒星や銀河など、光を放射する遠方の天体の視線速度は、高分解能の分光観測を行なって、既知のスペクトル線の波長を実験室での測定値と比較することによって正確に測定することができる。
多くの連星では普通、我々地球から観測した時の軌道面が視線に対して傾いているため、軌道運動によって両方の星の視線速度が数km/s程度変動する。このような星ではスペクトルがドップラー効果によって周期的に変化するため、光学的観測で二つの星を分解できない場合でも、実際には連星であることが分かる。このような連星を分光連星と呼ぶ。分光連星の視線速度を調べると、その星の質量や、離心率・軌道長半径などの軌道要素を見積もることができる。これと同様の方法は、系外惑星の検出にも使われている。