見島のカセドリ
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見島のカセドリ(みしまのカセドリ)は、佐賀市蓮池町の見島地区で小正月に行なわれる来訪神行事。寛永時代(1630年代)頃から350年以上も伝わるといわれ、2002年2月20日に重要無形民俗文化財に指定されている。
[編集] 概要
毎年2月の第二土曜日の夜、土地の独身男性2人が白装束と蓑を身につけて2羽の雄雌「カセドリ」に扮し、下半分を裂いた長さ2メートル程の青竹を手にし、地区内の22戸を巡る。各家では、夕刻から玄関の戸を外すなどして、カセドリが家に入りやすいように準備をする。
カセドリは家の中に勢いよく飛び込み、手にした竹の先で床を激しく打ちつけて悪霊を払う。これによりその年の家内安全や五穀豊穣などが祈願され、1年の幸せを約束されると信じられている。数分すると、家人がねぎらいのお茶を出す。このときにカセドリの顔を見た者は幸せになれるといわれており、顔を見やすいように大きな器が用意され、子供たちは一斉にカセドリの顔を覗き込もうとする。
本来は旧暦1月14日に行なわれていたものだが、土地の若者たちが働きに出るようになってからは平日に集まることが困難となったため、できるだけ帰省して参加しやすいようにとの計らいで、現在の2月第2土曜日に変更された。また、かつては藁蓑であった装束を神事らしい白装束にしたり、装束の下に着る服をトレーニングウェアに変えたりと、時代に合うよう工夫をしつつも、行事は土地の人々の尽力により現代まで続けられている。
このように来訪神に扮した者が家々を訪れる民族行事は日本各地に伝わっているが、見島のカセドリは北部九州での同様の行事として、日本人の民間信仰の理解の上で貴重なものとして注目されている。また、カセドリが竹で悪霊を祓う所作は他の類例がほとんどなく、地域的特色も豊かとされて地域の人々に親しまれている。