自然債務
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自然債務(しぜんさいむ)とは、債務としての最低限の効力(給付保持力)しかもたない債務のこと。
債務者が進んで実行すれば有効な債務であり、債権者はそれによって得た目的物等を返還する義務はない(これを給付保持力という)。しかし、裁判手続によって実体法上の権利の存否を判断してもらうことはできず(訴求力がない)、従って債務の内容を強制的に実現することはできない(執行力がない)。
[編集] 概要
歴史的な起源は、ローマ法まで遡る。日本法においては、旧民法(いわゆるボアソナード民法(1890年(明治23年)公布、施行されないまま1898年(明治31年)に廃止)の明文で規定されていた概念であるが、現行民法(1898年(明治31年)施行)の明文からは削除されており、これを直接規定した条文はない。
裁判上は、「カフェー丸玉女給事件」(大審院判決昭和10年4月25日 法律新聞3835号5頁)において、「自然債務」が認められたとされる。もっとも大審院は「特殊の債務関係」としか言っておらず、「自然債務」という概念を直接に用いているわけではない。