結合価
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言語学において結合価(けつごうか)は、動詞の、決まった数・種類の項(名詞句)を取る能力のこと。項を一つだけ取る一価動詞(たとえば sleep)は直接目的語を取れない(*He sleeps it.)。三価動詞は三つの項を取る(たとえば、give には与える人、与えられる人、与えられるものが要る)。
結合価(valency)という言葉は、化学の原子価(valency)から来ている。
結合価は他動性の概念と(同一ではないが)密接に関係している。他動性も省略できない項の数によってきまり、自動詞、他動詞、二重他動詞などが定義される。たとえば、
- (1) Newlyn lies. (lie の結合価 = 1、自動詞)
- (2) John kicks the ball. (kick の結合価 = 2、他動詞)
- (3) John gives Mary a flower. (give の結合価 = 3、二重他動詞)
結合価の概念にも問題がないわけではない。省略できない、本質的な項というものは常にはっきりしているわけではないからだ。たとえば、
- (4) Ask, and God will give.
- (5) John kicks Mary the ball.
- (6) The horse kicks.
など、何が省略できないのかを定義するのは難しい。現在トレンドの認知文法などでは、省略可能性は程度の問題だという立場を取っている。いわく、いろんな項はいろんな程度で共起する。よって結合価は問題にならない。