累犯
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累犯(るいはん)とは、第1の犯罪について懲役刑の執行を終わり若しくはその執行の免除を得た後、5年以内に更に第2の犯罪を犯し、有期懲役に処すべき場合(再犯)、又はそのような犯罪が3回以上続く場合(三犯以上の累犯)をいう(刑法56条、59条)。
累犯者に対しては、懲役刑の刑期が加重される(累犯加重)。
もっとも、以上のような刑法上の定義とは異なり、繰り返し犯罪を行うことを指して用いられることもある。
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[編集] 趣旨
累犯の刑が加重されるのは、一度刑を科したにもかかわらず、懲りずにまた罪を犯したという点で、初犯者よりも強い責任非難が加えられるからであるという見解(行為責任説)、行為者の反社会的危険性に対する保安処分としての性格を有するとする見解(行為者責任説)、その両者を根拠とする見解がある[1]。
[編集] 再犯
以下の要件を満たす場合に、刑法56条の再犯(さいはん)となる。
- 前に懲役に処せられた者であること
- 前犯について、宣告刑として懲役刑が言い渡された場合を意味する。
- 例外の第一として、懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者が、(1)その執行の免除(31条、5条、恩赦法8条等)を得た場合、(2)減刑(恩赦法6条、7条)により懲役に減軽されてその執行を終えた場合、又は(3)減刑により懲役に減軽された上その執行の免除を得た場合は、累犯加重の理由となる(同条2項)。
- 例外の第二として、併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなされる(同法56条3項)。例えば、前犯が内乱謀議参与(同法77条1項2号前段。法定刑は無期又は3年以上の禁錮)と現住建造物等放火予備(同法113条、108条。法定刑は2年以下の懲役)の併合罪であったとき、刑法10条により内乱謀議参与の方が重いため禁錮刑が言い渡されるが、懲役に処すべき現住建造物等予備があることから、累犯加重の理由となる。
- 前刑の執行を終わった日又は執行の免除があった日から5年以内に今回の犯罪が行われたこと
- 今回の犯罪について有期懲役に処するべき場合であること
- このため、累犯加重は、刑種の選択をした後に判断することとなる。
[編集] 三犯以上の累犯
三犯(さんぱん)以上の者についても、再犯の例による(同法59条)。
三犯とは、(1)第1の犯罪と第2の犯罪が56条の再犯の関係に立ち、(2)第2の犯罪と第3の犯罪(今回の犯罪)が再犯の関係に立ち、かつ(3)第1の犯罪と第3の犯罪(今回の犯罪)が再犯の関係に立つものをいう[2]。四犯以上も同様である。
[編集] 累犯加重
累犯の処断刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とされ(同法57条、59条)、30年にまで上げることができる(同法14条2項前段)。
累犯加重は、他の減軽・加重に先立って行わなければならない(刑法72条)。ただし、科刑上一罪との関係では、科刑上一罪の処理をした後に累犯加重すべきであるとされている(大審院明治45年3月28日判決・刑録18輯383頁)。
[編集] 累犯の原因
犯罪者自身の問題のほかにも、出所後の生活に困り万引きや無銭飲食を繰り返して重い刑を言い渡される者が多い。元暴力団組員が所属していた暴力団に戻ったり、覚せい剤など依存性の高い薬物の犯罪者が再び薬物に手を出したりすることも多い。また、服役歴の長さが犯罪者の「勲章」とみなされていることも原因と言われる。
日本の刑務所は再犯予防教育が不完全であるとの指摘が以前からあり、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律では再犯予防教育の充実が図られることとなった。
[編集] 盗犯防止法の特則
常習累犯窃盗罪・同強盗罪について、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律参照。
[編集] 脚注
- ^ 『大コンメンタール刑法〔第2版〕第4巻』(青林書院・1999年)375頁
- ^ 最高裁判所昭和29年4月2日判決(刑集8巻4号299頁)・最高裁判例情報。第1の犯罪と第3の犯罪が56条の関係に立たないときは、三犯とはならず、第2の犯罪との関係で再犯になるにとどまる。