箪笥
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
本来の表記は「簞笥」です。この記事に付けられた題名は記事名の制約から不正確なものとなっています。 |
簞笥(たんす)とは、衣類や道具を収納するための、引き出しや扉を備えた家具。通常は木製で、一人では持ち運べない大型のものが多い。
助数詞として、棹(さお)という語を使って数える。
種類
通常は衣服を収納する衣装簞笥、洋服簞笥や、食器を収納する茶簞笥などが一般的であるが、手回り品を入れる用簞笥、帳面を入れる帳簞笥、薬屋で生薬を入れるのに使われた百味簞笥、武家の刀簞笥など、入れるものに合わせて様々な大きさや形の簞笥が作られてきた。
また、西洋式の洋簞笥と、日本式の和簞笥がある。
和簞笥には、両脇に棹通し金具がつけられており、長持と同様に、棹を通して持ち運べるようになっている。これが簞笥の数え方「棹」の由来である。
また、婚礼簞笥といわれる、結婚時に用意される一式揃いのものがある。
なお、簞笥の中には盗難防止のからくりを施したからくり簞笥というものもある。逆に、非常時に簞笥ごと押して持ち出せるように車輪を付けた、車簞笥というものもある。
材質別では、関東の和簞笥では、桐で作られたものが高級品として有名である。他に、スギ、タモ、サクラ、ケヤキ、ナラなどの木材がよく使われる。
歴史
簞笥の登場は寛文年間(1661年-1673年)の大坂といわれ、正徳年間(1711年-1716年)ころから普及したとされる。それまで衣服は竹製の行李、木製の長持や櫃といった箱状の物に収納されてきた。
これらと比べた簞笥の特徴は何といっても引き出しを備えたことで、これにより、大量の衣類や持ち物を効率よく収納できるようになった。逆に言えば、元禄時代の経済成長を経て、簞笥を使わなければいけないほど、人々の持ち物は増えてきたということである。ただし、長持に比べ、多くの材料と高度な技術を必要とする簞笥は、まだまだ高価な品物であった。貧しい庶民にまで簞笥が広まるのは、江戸時代末期からである。
「たんす」は、古くは「担子」と書かれ、持ち運び可能な箱のことを指していた。江戸時代に引き出し式の「たんす」が登場すると、いつの間にか「簞笥」の字が当てられるようになった。中国では「簞」は円形の、「笥」は方形の竹製収納容器をさす言葉である。現在、中国では日本で簞笥と呼ぶものには「櫃」という語を用いる。