直轄市 (中華民国)
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中華民国における直轄市(ちょっかつし)は、中央政府である行政院直轄の都市である。正式名称を行政院直轄市といい、その略称で院轄市とも呼ばれる。地方制度法第4条により、人口125万人以上で、政治や経済・文化・都市圏の発展の上で特別な必要のある地区に設置できると規定されている。省と同格の行政区分とされ、市長は閣議にあたる行政院会議に出席する資格を持つ。このため直轄市の市長は強い政治的な影響力を持つ。
現在、直轄市は台北市(1967年昇格)と高雄市(1979年昇格)の二つである。台湾省の凍結(精省)に伴い県や省轄市との差異が分かりにくくなっているが、首長や議会の選挙日や財政面において県市と直轄市は法制上異なるものとして扱われている。特に財政面における直轄市の優遇は著しく、全自治体への地方交付税(統籌分配稅款)のうち、43%が直轄市の取り分とされている。一方、22県市は全体で39%の取り分しかない[1](残りは、6%が特別交付税に当てられ、12%が郷鎮市へ交付金となる)。
こうした格差の是正を目的として、人口の多い台北県や台中市、桃園県を始め、多くの県市が直轄市への昇格を求めている。当然、現在の直轄市は自らの取り分が減るため、県市の直轄市昇格には反対を表明している。しかし、2007年5月、立法院において地方制度法の第4条と第7条が改正され、人口200万人の県市には直轄市昇格の前でも、直轄市に関する第34条、第35条が適用され、事実上の「準直轄市」になる道が開かれた。行政院は、まず台北県にこれを適用する意向だと報道されている[2]。台北のベッドタウンとして人口増加が著しい桃園県も、すでに190万人を突破しており、200万人突破は時間の問題とされる。台中市は台中県との合併による直轄市昇格を目指しているが、合併が実現すれば、準直轄市の扱いを受ける可能性がある。台北市や高雄市は、行政院に対して地方交付税の配分そのものを変更し、自らの取り分が減らないよう要求している[3]。
直轄市に改められたあとの台北市長に初めて直接選挙で選ばれた陳水扁は、市長時代の手腕を評価され、後に中華民国総統当選を果たした。前総統である李登輝も直轄市昇格後に官選だった台北市長の職を経験している。1998年に陳水扁を破り2006年まで台北市長であった馬英九は、2005年から最大野党中国国民党の主席も務め、メディアへの露出が多く、外省人や保守層から将来の総統候補としての期待が高い。前高雄市長の謝長廷も、1996年総統選挙において民主進歩党の副総統候補として出馬した経験があり、党主席(2000年~2002年)や行政院長(2005年2月~2006年1月)を歴任している。
中華人民共和国建国前の中華民国期の直轄市は、首都南京と上海、漢口、青島、大連、瀋陽、哈爾浜、西安、北平(北京)、天津、重慶、広州の12あった。
[編集] 参考資料
- ^ 臺北市政府財政局新聞稿「因應臺北縣升格準直轄市,財政部擬減少北高二市之中央統籌分配稅款 臺北市民權益將受到嚴重損害,市政府表達嚴正反對之意見」
- ^ 台北市政府新聞局「地方制度法修正案通過 北縣升格準直轄市」北縣新聞
- ^ 「郝龍斌陳菊出席行政院會 吁勿減北高統籌款」『多維新聞網』2007年8月1日