猫股の火
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猫股の火（ねこまたのひ）は、越後国（現・新潟県）に伝わる怪火。
[編集] 伝承
ある武家で、毎晩のように正体不明の火の玉が出没していた。大きさは手毬ほどで、床から高さ一寸（約9センチメートル）ほどの空中を漂っていた。寝ている家人の部屋に入り込み、その者を脅すこともあった。
また火が現れるだけでなく、人がいないはずの部屋で物がひとりでに動いたり、夜に眠っていた者が、朝になると寝ている姿勢が正反対になっていた、といった奇妙な出来事も起こるようになった。
この武家の主人は、こうした怪事件に怯むような者ではなかった。しかし、やがて国中に噂が広まったために見物客が訪れ始め、それを迷惑に思った主人は、火の玉の正体を暴こうと考えていた。
そんなある日のこと。主人が庭に出ると、非常に年老いた猫が頭に赤い布をかぶり、2本の後ろ脚と尾のみで木の上に立っていた。これを怪しんだ主人は、弓矢をつがえて猫を射った。急所に矢を受けた猫は、死力を振り絞って矢を噛み砕いたものの、力尽きて息絶えた。
主人が猫の死骸に近づくと、それは五尺（約1.5メートル）もの大きさで、尻尾が二股に分かれた怪猫だった。この怪猫の死後、それまで家で起きていた様々な怪異は一切、起こることはなかったという。
