泛緑連盟
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泛緑連盟(はんりょくれんめい、中国語繁体字:泛綠聯盟)とは、中華民国(台湾)において台湾ほぼ共通の政治的主張を行なっている政治集団の総称であり、具体的に組織化された集団の集合体のことではない。泛綠聯盟の他に“泛綠陣營”や“泛綠軍”という別称もあるが、いずれの名称も連盟の主要な構成団体である民主進歩党(民進党)のイメージ・カラーに由来している。民進党の他にも台湾団結連盟(台連)と台湾建国党(建国党)、新国家連線の三党[1]がこれに分類されている。民進党は現在のところ中華民国の与党という立場にある。台連は公式的には野党ながら、対中関係などでは民進党と台湾アイデンティティを共有していることから、民進党に協力することが多い。連盟の構成員・支持者は総じて台湾の独自性を強調し、台湾人としてのアイデンティティーを求める傾向が強く、そのことは連盟が主張する政策に明確に反映されている。なお、日本では泛緑連盟よりも“グリーン陣営”と呼ばれることの方が多い[2]。
[編集] 連盟の主張
泛緑連盟の構成員が行なっているほぼ共通の政治的主張とは、現在の中華民国の国家体制を変革して中華民国の「台湾本土化」を達成することである。
そもそも中華民国は中国大陸を統治する「中国(China)の国家」として建国されたものであり、1945年に台湾が中華民国に編入された際は、台湾は中国の中の一地方という位置づけがなされていた。その為、1948年に誕生した中国国民党政権も全中国を統治することを前提とした国家体制を形成しており、国共内戦における相次ぐ敗北によって事実上台湾のみを統治する国家となってからも、自身を「全中国の正当な政権」であるとして、「大陸は中国共産党という反乱勢力(共産匪賊)に統治されているが、将来は『大陸反攻』(武力による領土奪回)によって大陸部を『解放』する」ことを基本姿勢としてきた。その為に、台湾には全中国を代表する中央政治機構と台湾省統括のための政治機構が両立してきたのだが、このような中華民国の国家体制には徐々に制度的矛盾が生じるようになり、1980年代末から国家体制の変革が行なわれるようになった。しかし、1990年代に入ると李登輝がそれまでの「中国の国家たる中華民国」という国家の基本概念から脱し、中華人民共和国との関係を「国対国」とするなど、中華民国の国家体制を台湾のみに限定する「国家体制の台湾化」を図るようになっていった。もっとも、それでも中華民国は「中国の国家」という名目上に国家体制を形成し続けており、李登輝の「政治体制の台湾化」は不十分な結果に終わっている(中華民国の政治を参照のこと)。
その為に泛緑連盟は、李登輝の後を継いで「中国の国家」として中国大陸を本土と見なす現在の中華民国の国家体制を変革し、最終的には中華民国を現在の統治区域に即した「台湾の国家」として再編成することを目標としている。目標の為の具体的行動として、現在連盟とその支持者たちは台湾正名運動という形で「台湾本土化」の啓発・促進を促しており、2004年現在では幾つかの点において政府の動きに進展が見られるようになってきている。なお、連盟の支持者の中にはアメリカや日本の親台湾派の人々に協力を求める人もおり、両国でも台湾正名運動が行なわれている。なお、これに反対する勢力として、中華民国アイデンティティの強い、国民党や親民党を中心とした泛藍連盟もある。
[編集] 連盟の現状
日本語では汎緑連合、緑連合、グリーン陣営などとも称される。新聞などでは「与党連合」と一括される場合もあるが、台連は与党ではなく連立政権でもないので、これは誤りである。泛緑連盟が主張している「台湾本土化」は、近年では泛藍連盟と国論を二分するまでに「台湾本土化」を支持する人々が増えている。このことは中華民国総統選挙の結果にも現れており、陳水扁・民進党主席が当選した2000年の総統選挙における約39%の得票率は、再選を狙う2004年の総統選挙では約50.1%にまで上昇した。しかし、連盟の主張の実施は究極的には台湾独立(台湾共和国建国)につながるものである為、台湾を中国の一部と見なした上で中国の再統一を目指している泛藍連盟や中華人民共和国は「台湾独立を促す動き」であるとして反発している(台湾問題も参照のこと)。また、連盟と対立する泛藍連盟が立法院(日本の国会に相当)における議席を連盟より多く獲得しているため、「台湾本土化」を目指す陳水扁総統も中華人民共和国・泛藍連盟の立場を意識せざるを得ない状況にある。
だが、陳水扁二期目の2004年以降、台湾の世論が徐々に台湾独立に傾斜し、台湾主体性意識(独自性意識)が急速に広がっていることもあって、2006年以降は民進党政権も、「国家統一綱領」運用停止、国営企業の正名、蒋介石を象徴するものの排除など、台湾独立色の強い政策を進めている。
また、泛緑連盟の中でも「台湾本土化」を巡って温度差が見られ、「台湾独立」の定義も違いがみられる。
民進党内でも、中華人民共和国に対する配慮を行いながら徐々に「台湾本土化」を行なうという勢力と、より急進的な即時独立建国を目指す勢力とが拮抗している。また、台連は陳総統の「台湾本土化」を支持する一方で、中華民国・中華人民共和国の関係が「国対国」であるという中華人民共和国が反発する主張を明言している他、建国党は台湾の即時独立建国を主張している。
近年台湾主体性意識が急速に広がっており、その意味では泛緑連盟の基盤は増えているはずだが、従来の政治対立図式に飽きている国民の意識を反映して、泛緑連盟の政治勢力としての支持の広がりは鈍い。しかし、連盟と対立する中国国民党の中にも連盟の主張と親和的な「台湾本土派」勢力が存在し、今後の泛藍連盟の動きによっては泛緑連盟の支持者が更に増加する可能性がある。最も、上記のように連盟内には主張の実施をめぐってしばしば波紋が起きることがあり、今後の中華民国の「台湾本土化」には様々な紆余曲折が予想されている。