油田遺跡 (南アルプス市)

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油田遺跡（あぶらだいせき）は、山梨県南アルプス市（旧中巨摩郡甲西町）田島字油田にある遺跡。

甲府盆地西部、東流する滝沢川の形成する小扇状地上標高は260mの位置。付近は釜無川の氾濫原で、微高地上に縄文時代からの遺跡がわずかに分布している。国道52号甲西道路の改修工事に際した事前調査として、1992年（平成4年）から翌年にかけて東西40キロ、南北230キロの範囲で山梨県埋蔵文化センターによる発掘調査が行われ、出土遺物は同センターに所蔵された。調査後には甲西道路の開発が進められた。

南からⅠ～Ⅳ区が設定されている。Ⅰ区には弥生時代中期中葉の遺物包含層があり、須和田式併行期の壺や甕、黒曜石の石核、剥石や石鏃、イノシシの獣骨などが検出されてる。遺物包含層の下層には中期中葉から後葉の時期に発生した地震により作られたと考えられている地震痕があり、地砂脈や噴砂、液状化層や断層が検出されている。また、埋没河道には中期後葉の遺物が含まれ、中期後葉の土器や磨製石鏃、打製石斧のほか木製堅杵が出土している。木製堅杵は土器類と同じく中期中葉の木製品で、最大長78.5cm、最大幅7.2mで、両部分の境は不明瞭であるが握部が搗部より細く加工されている。表面にも加工痕が認められ、鉄製工具で削られたと考えられている。ほか、Ⅰ区からは古墳時代の杭列2条も検出されている。

Ⅱ区では古墳時代後期の土器集中区が1基、Ⅲ区では集石を伴う古墳時代の祭祀遺構が1基と平安時代の水田跡11枚が検出されている。前期末葉から中期初頭土器はわずかで、Ⅳ区の遺構外からは条痕文系甕が検出されている程度。弥生土器は長野の中部高地系や静岡の東海系と共通した特徴を持ち、文化交流の中継地であった可能性が指摘されている。

出土した弥生中期の土器には肉眼観察により籾や雑穀の種子圧痕が報告されていたが、山梨県立博物館学芸員の中山誠二は栽培植物の起源に関する研究の一環として、土器の圧痕部にシリコーン樹脂を流し込み表面情報をコピーしたレプリカを作成し、顕微鏡での観察を行うレプリカ・セム法による油田遺跡出土の弥生Ⅲ～Ⅳ期の試料を用いた詳細な分析を行った。報告では玄米痕や籾圧痕などを正確に同定し、現生標本との比較から人為的な脱穀の可能性を指摘している。