永青文庫
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永青文庫 (えいせいぶんこ) は、東京都文京区目白台にある財団法人で、日本・東洋の古美術が中心の私立美術館を有する。
目白台の閑静な住宅街のなかにある永青文庫は、昭和25年(1950)、肥後熊本54万石の藩主だった細川家に伝来する文化財の散逸を防ぐ目的で、細川家の屋敷跡の一隅に設立された。名称は、室町時代の細川頼有以後8代の菩提寺である京都建仁寺塔頭永源庵の「永」と近世細川家の祖となった細川藤孝(幽斎)の居城青龍寺城の「青」の二字をとって名付けられた。一般公開されるようになったのは昭和47年(1972)からである。
約4000点の収蔵品の中には国宝8件、国の重要文化財31件を含む。細川家代々の宝物の他、「美術の殿様」と言われた16代当主・細川護立(1883-1970)侯爵の収集品を多く収める。護立は、貴族院議員、国宝保存会会長などを務め、日本の文化財保護行政に多大な貢献をした人物である。現在の理事長は護立の孫で元首相の細川護熙。
美術品の他、700年もの間分離・散逸せずに残されている全国的にも有数の藩政史料・大名家文書群「細川家史料」を所有するが、その大部分(約5万点)は熊本大学附属図書館の「細川家北岡文庫」(通称「熊本大学永青文庫」)に寄託している。また、漢籍及び欧州で刊行された東洋学研究書(コルディエ文庫)を慶應義塾大学附属研究所に寄託している。
なお、永青文庫は熊本県と協定を結び、平成20年(2008)4月から、県が熊本城二の丸の熊本県立美術館に「細川コレクション 永青文庫展示室」を新設、定期的に所蔵品を借り受け、内容を入れ替えながら常設展示することで合意している。
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[編集] 主な収蔵品
[編集] 国宝
- 太刀 銘豊後国行平作(古今伝授の太刀)
- 短刀 無銘正宗(名物庖丁正宗)
- 短刀 銘則重(日本一則重)
- 刀 金象嵌銘光忠 光徳(花押)生駒讃岐守所持(生駒光忠)
- 柏木兎螺鈿鞍(かしわみみずくらでん くら)
- 時雨螺鈿鞍
- 金銀錯狩猟文鏡(中国・戦国時代)
- 金彩鳥獣雲文銅盤(前漢~後漢時代)
[編集] 重要文化財
絵画
- 絹本著色細川澄元像 狩野元信筆
- 紙本著色長谷雄草紙
- 紙本著色洋人奏楽図 六曲屏風(熊本県立美術館寄託)
- 紙本墨画芦雁図(伝宮本武蔵筆) 六曲屏風(熊本県立美術館寄託)
- 紙本墨画鵜図 宮本武蔵筆(熊本県立美術館寄託)
- 紙本墨画紅梅鳩図 宮本武蔵筆(熊本県立美術館寄託)
- 紙本著色落葉図 菱田春草筆 六曲屏風 1909年(熊本県立美術館寄託)
- 絹本著色黒き猫図 菱田春草筆 1910年(熊本県立美術館寄託)
- 髪 小林古径筆 絹本著色 1931年(熊本県立美術館寄託)
彫刻
陶磁
- 宋白地黒掻落牡丹文瓶(そう しろじくろかきおとし ぼたんもん へい)
- 唐三彩花文大盤
- 唐三彩花文盤
刀剣武具
- 太刀 銘守家造
- 破扇散鐔 無銘林又七
- 春日野図鐔 銘城州伏見住金家
- 毘沙門天図鐔 銘城州伏見住金家
- 牟礼高松図鐔 銘利寿(花押)
- 白糸威褄取鎧 兜付(しろいとおどしつまどりよろい かぶとつき)
書跡
- 後深草天皇宸翰消息(十二月十日)
- 織田信長自筆書状 十月二日 長岡与一郎宛
- 伏波神祠詩巻 黄庭堅筆
- 清拙正澄墨蹟 与鉗大冶蔵主法語
- 楚石梵琦墨蹟 無我省吾心華室銘 至正丙午秋九月
- 大休正念墨蹟 悼聖一国師状 (十二月九日)
考古資料
- 銀胡人像 1箇・銀杯 3口 伝河南省洛陽金村出土
- 嵌珠金銀錯斜格子文壺(かんしゅきんぎんさく しゃこうしもん こ)
歴史資料
- 天球儀(渾天新図)(銅製)渋川春海、津田友正作
建造物
- 細川家船屋形(熊本市に寄託。所在:熊本城天守閣内)