次元解析
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次元解析(じげんかいせき、dimensional analysis)とは、物理量における、長さの次元、質量の次元、時間の次元、電荷の次元などから、他の物理量の次元との関係や未知の物理量の次元を解析、予測すること。
[編集] 例
[編集] 調和振動
例としてばねにつないだ物体の振動運動について考える。水平面上に質量 m の物体をおき、垂直に立った壁と物体との間をばね定数 k のばねで結ぶ。ばねの自然長の状態から物体を x だけずらし、静かに手を離すと物体は振動運動を始める。このときの振動の周期(1振動にかかる時間) T を与える式を推測する。水平面との摩擦や空気抵抗は考えない。
式に含まれるであろう定数は、物体の質量 、ばね定数 、初期変位 の三つで、求めるべき周期 T の次元は である(長さの次元を 、質量の次元を 、時間の次元を とした)。この中で長さの次元を含んでいるのは初期変位のみなので、式に含めることができない。なぜなら式の左辺と右辺では次元が一致しなくてはならず、初期変位を含めるならば両辺に同じだけかける必要があり、それならば無くても同じである。
次元が になるように m と k を組み合わせる方法は一つしかない。結果次の式が求まる。
A は無次元量の定数で次元解析から求めることはできない。この解は運動方程式を解いて求めたもの(振動運動を参照)と見事に一致している。このように簡単な問題ならば次元を考えるだけで見通しが立つ。式の次元が合うことは必須の要請であるので、式の間違いをチェックする場合にも使える。
[編集] 減衰振動
ばねにつながれた物体が、速度に比例した大きさの抵抗(粘性抵抗力)を受けながら一次元運動することを考える。
式に現れる定数は、物体の質量 m [M]、粘性抵抗の比例係数 γ [MT-1]、ばね定数 k [MT-2]の三つである。
この運動では、特徴的な時間尺度( characteristic time scale )が二つ存在する。即ち、
この場合、時間尺度の競合が起こる。つまり、τω の大きさがどの程度かによって運動の様子が変わることが予想される。