月報
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月報(げっぽう)とは、文学全集などの連続して刊行される出版物に、別刷として添付される印刷物の総称である。
1920年代後半、改造社と春陽堂とによって、日本ではじめての本格的な文学全集が企画された。両者は予約販売などの購読者獲得のためにいろいろな宣伝戦略をこころみたが、その中で、春陽堂は付録としてはさみこみの小冊子を添付し、その巻に収められた作家の逸話や研究ノートなどを掲載した。これが月報のはじめといわれている。その後、岩波書店の漱石全集(1928年)にも月報が添付されたことから、各種の全集には月報を添付することが日本の出版界のならわしとなった。
月報には、その巻に関係したさまざまな資料や研究ノートが掲載される。その中で、新しい知見が披露されることも多く、研究者の必読文献とされている。
月報掲載の長編がまとめられて単行本として出版されることも多い。石川淳が鴎外全集(1971年から1975年、岩波書店)に掲載したエッセイが『前賢余韻』としてまとめられたり、平凡社は中国古典文学大系(1967年から1975年)の月報掲載文章から選択して『中国古典文学への招待』を編んだりしたことがその例である。