持ち替え
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楽器の持ち替えは、主に木管楽器で行われる。通常オーケストラで3管編成以上の場合、派生楽器が加わる。それを曲の中で必要に応じて持ち替えることを言う。(フルート奏者はピッコロ、オーボエ奏者はコーラングレ、クラリネット奏者はバスクラリネットや、B♭管からA管、E♭管などへの持ち替え、ファゴット奏者はコントラファゴット.....など)
特殊な例としてはモーツァルトの交響曲で当時のフルート奏者がオーボエに持ち替えた例があり、スコアにそのように書かれているが、現在では別々の奏者によって演奏される。
例は少ないが、ホルンとヴァーグナーテューバのように金管楽器で行われることもある。またアルノルト・シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」でのヴァイオリンとヴィオラの持ち替え、ジャック・イベールの「交響組曲パリ」でのクラリネットとアルトサクソフォンの持ち替えなど、通常はあまり見られない持ち替えが指定されることもある。独奏としてではなくオーケストラの中でのピアノ奏者は、時にチェレスタとの弾き替え(持つ楽器ではないためこう呼ばれる)が指定される曲もある。打楽器奏者はさまざまな打楽器を持ち替えることが頻繁に行われるが、伝統としてはティンパニ奏者はティンパニのみを担当するのが一般的である。
いずれの場合も、楽章の間で持ち替えるか、同一楽章内では持ち替える直前に十分な休符が必要とされる。また楽器と言うものは一般的に連続して弾くことによって楽器が温まってきたり奏者が操作感覚に慣れたりして初めて良い音が出るものであり、それを別の楽器に持ち替えることはその温まっていない楽器や、どんなに優れた奏者でも楽器の交替による一瞬の不慣れや違和感を意味する。これらを慣らすためにも、持ち替えには相応のタイミングが要求とされることに作曲家は留意しておく必要がある。