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成人向け漫画 - Wikipedia

成人向け漫画

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

成人向け漫画(せいじんむけまんが)とは、自主規制により販売等を制限している、成人向けの漫画のことである。いわゆるエロ本の一種。18禁漫画、あるいはエロマンガとも呼ばれる。

目次

[編集] 概要

成人向け漫画(男性向)の内容は、ほとんどが異性、同性の性的描写(いわゆるセックス)を描いたもので占めている。海外と違い、日本の漫画においては、映画ゲーム等のような暴力表現、反社会的行動表現等で規制されることがほとんどないためであろう。実際に、『ベルセルク』・『北斗の拳』・『バガボンド』・『ゴルゴ13』等過激な残虐描写のある漫画作品であっても、他の書籍と同様に成人向けに規制されていない。それゆえに、エロ漫画エロマンガ)と一般的に呼ばれる。女性向の同様のジャンルの漫画の場合、レディースコミックと呼ばれることが多い。

成人向け漫画を専門とする出版社は意外に少なく、ポルノ雑誌(または一般漫画雑誌、ホビー雑誌等)の一部門にとどめていることが多い。講談社集英社白泉社等大手出版社も多く参入している。

とはいえ、現在流通している(一般向け)書籍,ゲームには、何らかの形で性的描写を描いたものが多く、このような表現は、少年漫画及び少女漫画にも少なくない。具体的なセックス描写、及び性的なオーガズムを描きつつも18禁指定のない漫画単行本及び漫画雑誌も多数存在する(色気描写が強い一般向けの作品でもエロマンガと呼ばれることがある)。

[編集] 出版側の自主規制

標記について、該当する単行本には以下に示されるマーク(以下ゾーンニングマーク)が付けられる。(主に男性向漫画に付けられることが多い)

  • 楕円形で黄色地に黒文字(もしくは黒地に黄色文字)の「成年コミック」(主に単行本)
  • 黄地長方形に黒文字の「成年向け雑誌」(主に漫画雑誌)
  • 赤地の正方形もしくは円に白色の18を書きその上を黒のバッテン、または18の黒字が中に入った四角や円の「車両通行禁止」標識風(成人向け漫画では少なく、主にゲーム雑誌,写真集などに用いられる)

ゾーニングマーク付雑誌は、書籍販売店及び漫画雑誌専門店での販売が主流であるが、上記雑誌と同様の形式で、性器描写等の修正を強め、コンビニエンスストア販売規制に合わせた雑誌(コンビニ誌)も存在する。

一方、販売店側の自主規制として、販売箇所の分別、販売箇所の販売物の明示、袋がけ等立読み防止対策及び18歳未満の未成年への販売禁止の徹底などが主に行われている。(一部都道府県では条例でも定められている一方、煩雑さからほとんど行われていない書店もあるなどあまり統一されていない)

上記に書かれたとおり、(一般向け)書籍,ゲームには、何らかの形で性的描写を描いたものが多いため、非18禁漫画と18禁漫画の差は、主に具体的男女性器描写の有無(または修正の程度)で判断されている。とはいえ、性交描写及び性器描写が見当たらないのにゾーニングマークを付ける(瓦敬助著作品『菜々子さん的な日常』のような単行本等、ただしその後同作家の出した画集「九十九織」(コアマガジン刊)に同作品が掲載されたが、ゾーニングマークはつかなかった)「グレーゾーン」も存在する。

[編集] 歴史

成人向け漫画は、ジャンルとしてはそれほど古いものではない。1960年代までは、成人向けの雑誌は読み物や体験手記と言った文章が中心であり、それらの雑誌の合間に漫画が入る場合、古典的な漫画の絵で描かれた艶笑譚といったものであった。

[編集] 男性向けエロ漫画

劇画調のような成年向け漫画、つまりエロ劇画あるいは官能劇画は、1970年代に出現する。当初は文章中心のエロ雑誌に発表され、すぐに専門の雑誌を生むに至る。劇画調の成人向けの劇画雑誌は時に三流劇画雑誌と呼ばれ、多くは劇画調のポルノ的な漫画が描かれていた。1970年代にこの形の雑誌が出現し、1980年代まではエロ系の漫画雑誌はこの類だけであった。

現在は劇画調が薄まり、アニメ絵への接近が感じられる絵柄が増えている。このようなスタイルは自販機本「少女アリス」(1980年)などに吾妻ひでおが連載したものが元祖になっている。吾妻は友人らと同人誌「シベール」を出版しており、商業誌、同人誌ともにこの分野の開拓者であるといえよう。

その後、久保書店あまとりあ社から、世界初の現在のようなスタイルの成年向け漫画誌レモンピープル(1982年2月号創刊)が創刊される。また、1982年成年向け劇画雑誌として発行されていたセルフ出版(後の白夜書房)の漫画ブリッコ1983年5月号より誌面を全面リニューアルして、レモンピープルの後を追うことになる。これらはロリコン漫画、およびロリコン漫画雑誌と呼ばれ、ロリコンブームに乗ってその範囲を広げた。

その後、アニメ調の絵柄を使用した類似の雑誌が大量に発行され、劇画調の成年向け漫画が衰退していく形で、現在に至っている。

[編集] 背景

ロリコン漫画とそれ以前のエロ劇画では、当初は新しい表現としてはっきりとした絵柄の違いがあったが、その境界は次第に埋まりつつある。これはエロ劇画からも可愛い絵柄への歩み寄りがあり、またロリコン漫画も一方ではチャイルドポルノへの規制により描く年齢が上がったこと、雑誌の数が増えて幅が広がったことなどが挙げられるだろう。

ただ、この両者の大きな違いは、想定する読者の違いでもある。エロ劇画は教養の高くない、粗野な男性をその対象に想定していた。この手の雑誌編集者が想定する読者について自嘲的に「労務者が読む」と言っているのが確認されている。これに対して、ロリコン雑誌の場合、想定する読者はオタク的若者であった。こちらは一般的教養はともかく、ある分野についてはその追求心が強い。それらは雑誌の雰囲気に大きな差を与えた。これをエロ漫画のサブカルチャー化という声もある。

[編集] 女性向けエロ漫画

また、1980年代後半からのレディースコミックの台頭で、劇画誌の作家が流入し、新たな成人向け漫画の舞台となった。これにやや遅れて、少女向きの雑誌から少女漫画的絵柄で性体験をより色濃く描く漫画が出現し、それらはティーンズラブと呼ばれるようになった。ただしこれは成人指定されていない。

[編集] アダルトゲームとの関連

成年向け漫画はアダルトゲームと連携して発展してきた。光栄マイコンシステム(現コーエー)の「ナイトライフ」が日本最初のアダルトゲームとされているが、ゲーム性はなく実用ソフトとも言えるものであった。その後1982年九十九電機が野球拳ゲームを、またパソコンショップ高知(PSK)が「ロリータ野球拳」を発売するが、前者は漫画家の槙村ただし氏が作成したソフトで、後者はタッチが吾妻ひでお風であった。これら、漫画とアダルトゲームの関係はその後の流れを暗示しているとも言えよう。このように、アダルトゲームは草創期からアニメ調の絵柄が受け入れられてきた。これは、成年向け漫画の購買層と重なる。極初期には、劇画調のアダルトゲームもあったが、現在はほとんどすべてがアニメ調のゲームである。

その後、多数のアダルトゲームが発売されるが、成年向け漫画の作家と、ゲームの原画家や彩色家、シナリオ作家などと多くの人材の交流が行われている。また、ヒットしたアダルトゲームの漫画化なども行われている。ただし成人向け漫画は毎回性的描写をいれつつ雑誌に一話ずつ掲載するのが主な発表形式であり、アダルトゲームを漫画化した場合は性的描写不足になりがちなため、性的描写をなくして一般向け漫画にする場合の方が主流である。また、アダルトゲームの漫画作品化については、大半がアニメ化など何らかの別のメディアミックス企画やその構想に関連し、動向調査などの役割も持っている事が多く、この様な性格を持つ作品の大半では性的要素が排除される。

また、アダルトアニメとの連携も大きい。アダルトアニメの原作として、成年向け漫画が選択されることも多い。

[編集] 規制と現状

ゾーニングマークによる自主規制があるとはいえ、何を描いてもいい訳ではない。多くの自治体では、条例で18才未満への販売及び内容が規制される。内容(主に社会情勢と連動する)等に問題があると、東京都の場合、東京都青少年健全育成審議会から不健全指定図書(他道府県における有害図書)に指定される。同一タイトルの雑誌(増刊含む)が連続3回、または年間通算5回指定されると「雑誌を自主廃刊する」もしくは「一般書店での販売をやめ、直販もしくは成人向け雑誌専門店での販売に特化する」といった出版業界内自主規制機関による申し合わせがある。東京都の規定は、警察基準同様に尊重される。他の道府県条例では、基本的に東京都基準に準ずることが多いので独自の影響力は持たないが、指定が続くとその県に配本されない「局地廃刊」が行われることもある。

東京に出版業界が集中していることもあり、条例でありながらも絶大な影響力を持つ。過度の規制に繋がるおそれがあり、表現の自由との兼ね合いから批判の的になっている。「自主規制という名の行政による発禁処分である」という意見もある。

近年の規制対策から、コンビニ誌もシーリング等立読み防止策を施すようになった。そして、日本雑誌協会と出版倫理懇話会等は、2005年10月20日に書店等で販売する成人雑誌の内容を18歳未満の目に触れないよう封印するシールを強化して、のぞき見できないようにする自主規制強化策を実施すると発表した。懇話会の取決め通り、11月中旬発売の雑誌から強化策が順次実施されている。しかし、この規制が逆に18歳未満の購入を促進しているという指摘もある。

過度の影響力を考慮してか、現在のところ、警察による販売規制につながる警告はほとんど行われていない。過去には、18禁漫画(書籍)の発行元がわいせつ図画販売容疑で逮捕される事件(松文館裁判等)が発生している。この警告は、新たな出版物規制に繋がりかねず、業界全体に与える影響は多大であるということで話題となった。また、逮捕までに至らなくても、官公庁から作家個人に警告をする例も少なくない(まれであるが、作家個人の逮捕に至る例もある。[1]

とはいえ、警告の基準は、ネコの目のように変わる不安定なものであるため、具体的男女性器描写の修正を薄めた再販版が出ることも珍しくない。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 「わいせつコミック」裁判 ― 松文館事件の全貌 (ISBN 4-86086-011-X)

[編集] 脚注

  1. ^ ただしこれは、同人誌という形態で大量に委託販売を行っていたことと、その同人誌に成人指定のマークが明記されていなかったこと、自主規制処理が薄かったことなどが原因であるという。

[編集] 外部リンク

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