岡野雅行 (会社社長)
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岡野 雅行(おかの まさゆき、1933年2月14日 - )は、日本の技術者、経営者。現在、金属加工会社・岡野工業(株)の社長。東京都墨田区出身。
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[編集] 概要
金属深絞り加工の世界的職人として知られ、東京都墨田区の従業員数6人という小さな町工場でありながら、その高い技術カが日本はもちろん、世界の大企業やNASAなどに注目され、製品が次々に採用される実績を持つ。講演、著書多数。
国民学校初等科を卒業後、実父が創業した金型工場を手伝い始める。20代の頃に父親に「夕方5時から翌朝の8時まで」工場を貸してくれるように頼み、昼間は工場の仕事を、夜の時間に自ら受注した仕事をこなしながら技術力を磨いた。
1972年、父親が社長を務めていた岡野金型製作所の2代目社長(自称「代表社員」)に就任、社名を岡野工業と改める。以後プレス加工へ進出、更には生産設備開発へと発展する。
現在では世界的にも技術を認められ、テレビ番組にも取り上げられたりと「世界的職人」や「中小企業の星」・「カリスマ職人」などの名を博しているが、依然として会社規模を少数精鋭で数名のままとし、他に真似のできない生産設備の開発を続けている。
講演では、かつての吉原界隈で噺家にまみれて身に付いた、落語調の飾らない語り口で、ユーモアを交えて話すことから人気がある。大っぴらな性格から、NASAの依頼を受けた話をラジオで喋ってしまい、アメリカ大使館から注意を受けたりと、反省もしているようだ。ただ近年は余りに講演回数が多過ぎて本業に差し障るから…とやや控えているという。
なお「『出来ない』といわれると俄然成功させたくなる」という性格だと自身で述べており、「誰にも出来ない仕事をする」がモットーとのこと。
2004年旭日双光章受賞。
[編集] 代表作
- リチウムイオン電池ケース
- もともとはウォークマン用に開発したものだが携帯電話にスピンオフされた。液漏れによる事故を防ぐため、同部品は均一の金属板で作られる必要があるが、これを薄く亀裂の入りやすいステンレスの深絞り加工で実現した。かつて、ジッポーのライターのケースを作っていた技術が生きたという。
- 痛くない注射針
- 針の先端が蚊の口吻とほぼ同じ外径200μm、内径80μm。シュリンジ側はΦ0.35mmと太くテーパになっている。理論物理学者にも不可能と言われたそれを、ステンレス素材のプレス加工で実現させた。医療機器メーカ、テルモからの依頼により開発。なおテルモは同社に依頼するまでに100社以上に「企画」を持ち込んだがすべて断られたという。同製品は「05年度グッドデザイン大賞」(日本産業デザイン振興会主催)にも選ばれている。
[編集] 著書
- 俺が、つくる!-世界一の職人岡野雅行(中経出版、2003年1月、ISBN 4806117609)
- カセット・ビデオも発売されている。
- あしたの発想学-いかにして痛くない注射針はできたのか!?(リヨン社、2003年7月、ISBN 457603152X)
- 技術で生きる!-1人1億円売り上げる経営(松浦元男 岡野雅行・著、ビジネス社、2003年12月、ISBN 4828410929)
- 町工場こそ日本の宝-他人のやらないことをやるから儲かる!(橋本久義 岡野雅行・著、PHP研究所、2005年8月)
- 岡野雅行 人のやらないことをやれ!-世界一の技術を誇る下町の金型プレス職人、その経営哲学と生き方指南(岡野雅行・著、ぱる出版、2006年3月)
- 世界一の職人が教える仕事がおもしろくなる発想法-結果が出ない人はいない(青春出版社、2006年8月)
- 俺が、つくる!-世界一の職人が語る仕事の哲学 (文庫、中経出版、2006年9月)
- あしたの発想学-従来の延長ではなく既存を壊すことが新しい発想のスタートだ!(リヨン社、2006年9月)
- 学校の勉強だけではメシは食えない!-世界一の職人が教える「世渡り力」「仕事」「成功」の発想(こう書房、2007年11月、ISBN 9784769609568)
[編集] 参考図書
- 不可能を可能にした男-技術力で世界に挑む職人 岡野雅行(篁笙子・著、メトロポリタン出版、2001年10月、ISBN 4434013726)
[編集] 関連項目
- 工作機械 - プレス機械
- プレス加工
- 岡野雅行 (サッカー選手) - 同姓同名のプロサッカー選手。
[編集] 外部リンク
- 金属加工のマジシャン(岡野工業株式会社公式ウェブサイト)
- 岡野雅行氏対談(HANDSHAKING《第15回》])