小説投稿サイト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
---|
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
小説投稿サイト(しょうせつとうこうサイト)とは、アマチュアのオンライン作家が、自由に小説を公開できるウェブサイトである。公開された小説(俗に「オンライン小説」)に対する『不特定者(第三者=匿名)』の感想や評価によって、執筆力や技術力を向上させる。
そのほとんどが個人経営であって、オフラインにおける同人誌的なコミュニティ形成を目的としている場合が多いが、なかには、新人発掘など商用を目的にする出版社等法人が開設したサイトもある。閲覧および投稿は無登録かつ無料でできる。
目次 |
[編集] 主な利用方式
- 閲覧方式(閲覧のみ方式)の特色
投稿とその閲覧のみを利用目的とし、読者相互の感想交換は行わない。投稿に対するルールは特に設定されず、よって気軽ではあるが作品個々の品質(完成度)は全体的に落ちてしまう。技術力向上を目的とするというよりは、ホームページやブログにある自作品を、趣味のあう者(仲間)に告知・宣伝するための「自己紹介サイト」といった感が強い。
- 電子掲示板方式(評価のみ方式)の特色
一般的な掲示板について、いわゆるスレッド掲示側を小説投稿欄とし、レスポンス側を感想投稿欄と規約して再利用したものである。技術向上よりも感想の交換によるコミュニケーションを主目的として利用される。感想の交換をするだけに無責任な投稿ができないから、作品個々の品質(完成度)は自ずと上がってくる。ウェブ上でいわゆる小説投稿サイトと呼ぶ場合は、そのほとんどがこの方式を採用している。
- 電子掲示板方式の印象
ジャンル(ミステリー・SFなど種別)による区分、文字数(短編・長編など種別)による区分、読者層(ライトノベル・純文学など種別)による区分など、投稿区分(コンテンツ)を細分化しているサイトほど、作品の品質(完成度)は高い。
- Anthologys方式(評価点数方式)の特色
Anthologys(特殊改良掲示板)を利用したもので、意見交換機能に加え点数評価ができる本格的なものである。フィルター機能にかければランキング(閲覧数・点数・感想数等)がすぐに分かるから、場当たり的な無駄は少なくなる。しかし、感想読者本意のサイトになりがちであって、サイトの雰囲気もどちらかと言えば作者よりも読者の趣味嗜好に左右される。
- Anthologys方式の印象
商用規制の入らない自由な投稿、既成概念にこだわらない創意工夫を大前提とし、意義のある小説投稿サイトとされるが、独創性や前衛性はむしろ歓迎されず、サイトの空気を読んだ基本的作法、既成概念のしっかりとした完成度の高い投稿作品ほどが点数優位に進んでしまうため、権威や指導者がいないだけに才能を開花させる前の「若芽」を摘むとの声も少なくない。
[編集] 利用方式の現在と進化
- 現在
作品の閲覧・登録ができるだけの旧態サイト(初歩的CGI技術により作成されたもの)は少なくなった。近年のCGIの充実、とりわけ専門研究された特殊CGIAnthologysの改造改良によって、ほとんどの小説投稿サイトがそれを採用し、点数評価方式を基本とするサイトが主流となってきた。
- 進化
そんな利用方式移行の過渡期にあって、またその一方で管理方法とその限界を模索中でありながらも、ケータイ小説をメインコンテンツに移行するサイトや、電子書籍の作成を可能にするサイトが誕生していることは、将来性という点で特筆できる事項だろう、より以上の技術革新の進む中で、今後はそれらの別メディア複合型投稿サイトが注目を集めるに違いない。
- 補足
以上のようにCGI技術が充実して利用の簡素化は図られたものの、それに伴う利用者数の増加は、個人によるサイト管理限界の超越を急激に引き起こし、俗にいう黒字倒産のごときサイト閉鎖を余儀なくされる場合が出てきている。また、文学そのものの特性(表現の自由度)からくる投稿規制、評価規制の限界は、意識の低い粗雑な作品や恩赦の無い過激な感想批評を自ずから放置せざるを得ない状況を呼び、一見的読者の罪のない失敗(運悪く読まされた感)が目立ち、よってWEBそのものが珍しかった当初創成期に比べ、サイト界全体的には、訪問参加、投稿に対し敬遠傾向(減少傾向)にあるというのが現在の投稿サイト共通の悩みといえる。
[編集] 文字数と閲覧数と感想数と点数
- 総論
評価点数方式の小説サイトにおいて失敗なく読書を続ける場合、いわゆるフィルター機能を利用して、それぞれの条件のランキング上位から読み進める方法が最も妥当と考えられる。一般的良作は「点数順」に従うといい。また、そのサイトにおける人気作家作品は「感想数」に従うと無難である。一般的賛否両論作品、あるいはそのサイトにおける話題作は「閲覧数」に従うのが賢明。「文字数」は長編順にランキングされるが、作者の労力努力は認めたとしても、やはり短いものから読む方が失敗は少ないだろうと考えるのが、一般読者の心情であると言える。
- 注目作を見つけるコツ
「点数」は総合点数だけで判断しても失敗する可能性は強く、「感想数」で割算した平均点で判断すると注目作を見つけやすい。点数で目立てば「閲覧数」は増えるし、感想数で目立てばこれも「閲覧数」が増えるから、実際は「閲覧数」が最も客観的な人気のバロメータであると考えていいだろう。注目作が必ずしも良作とは限らないが、時代を読むひとつの参考資料として一読することに損はない。
[編集] 小説投稿サイトの歴史
- 創成期(パソコン通信の時代)
1990年代前半の画像や映像を公開できないパソコン通信の時代は、個人個性の主張やWebコミュニケーションはむしろ詩や小説などの文学創作物によってしかできず、当時はそれが行えることが通信の最も画期的な部分であって、よってこの時期ほど文学的には完成度の高い作品の投稿がされたと考えられる。小説投稿サイト普及の歴史はそのままインターネット普及の歴史であって、その普及によりオンライン小説創作が一般化しながらも全体的には低レベル化した歴史と言えなくない。
- 2ちゃんねる並列期(掲示板方式の普及)
1990年代後半の投稿サイト2ちゃんねるの登場はその同類性から必然的に創作物投稿サイトを生んだ。同時に進行するホームページ創作ブームやCGIの技術向上により、掲示板方式と言われる数多くの小説投稿サイトが登場した。2ちゃんねる系のアリの穴、プロ指向者が集う作家でごはんがその時期の代表的な小説投稿サイトであって、現存するものである。
- Anthologys方式の台頭
世紀を変えた2001年ごろ、フリーCGI「Anthologys」の誕生をきっかけに、コミュニケーションを目的とする感想評価方式が減少し、秀作ランキングを目的とした点数評価方式を採用する投稿サイトが増えていった。「トータルクリエーターズ」「ブルーキャンバス」「小説投稿238」などのサイトが当時より長く存続するその代表格といえるだろう[要出典]。
[編集] 小説投稿サイトの今後
- HN(匿名)による管理の限界
既成マスコミの世界では、川上弘美や市川拓司、「電車男」の流行を期にオンライン小説があたかも文学界に新風を吹き込むかのごとく風潮するきらいがあるが、奇しくも個人管理のインディーズ系の小説投稿サイトに育てられたと堂々と言い放つ、文学界を揺るがすような新進作家は、未だに輩出されていない。
無論、その輩出を主目的とする小説投稿サイトが現存するか、未来するべきかという議論により結論は変わってくるが、曲がりなりにもルーツを辿れば10年以上にわたる歴史がありながら、またプロ作家への登竜門としての大いなる意義がありながらも、この経緯実績では、そろそろその存在意義を抜本的に考え直す時期に来ていると言わざるを得ない。
- ケータイ小説の台頭
小説を読んで感動し、「小説家になりたい」と思うことは幼少の頃に万人誰もが描く夢ではあるが、その夢を少しでも現実に近づける存在として、少なくとも20年以上前までの長い時代が、個々に相当な努力を要しなければ、早々簡単には自作品を他人に読ませて評価される機会など持ち得なかった不遇の時代だったのだとすれば、ケータイ小説の気楽さや普及率という可能性も含め、今後どのように、より以上の存在価値を見出し前向きに変化発展していくか、注目し期待するところである。
[編集] 主な小説投稿サイト
- 掲示板方式
- Anthology方式
- その他方式