妙立寺
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妙立寺(みょうりゅうじ)は、石川県金沢市にある日蓮宗の寺院。山号は正久山。加賀三代藩主前田利常が創建。複雑な建築構造と外敵を欺く仕掛けから、忍者寺(にんじゃでら)とも呼ばれる。
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[編集] 歴史
天正13年(1583年)、初代藩主前田利家が金沢に入城すると、政治の理念を日蓮宗・法華経の中道精神に求め、藩を守護する祈願所を建立する。
寛永20年(1643年)、三代藩主利常が金沢城の近くから移築建立する。利常は徳川幕府の改易を避けるため、徳川家から嫁を迎え、母親を人質に出し、鼻毛を伸ばして馬鹿殿様を演じることで、幕府を欺き安心させる。一方、多くの武士が起居できる寺院群(現在の寺町寺院群)を新築し、その中心に監視所(城でいう本丸)として妙立寺を建立する。要塞としての機能を備えた妙立寺は、隠し階段・隠し部屋・落とし穴・見張り台・金沢城へ続く地下通路など外敵を欺く種々な仕掛けを備える。忍者寺と呼ばれるのは、忍者がいたのではなく、その複雑な建築構造からそう呼ばれる。
戦火を免れた妙立寺は、歴代藩主の祈願所として崇拝される。北陸の豪雪に耐え、その独特の建築様式を現在に伝えている。
[編集] 構造
当時、幕命で3階建て以上の建物は禁止されていたため、外観は2階建てだが、内部は4階建て7層になっている。中二階、中々二階があり、部屋数は23、階段数は29もある。
- 物見台・望楼
- 本堂の屋根の先端部分にあるギヤマン(現在はガラス)張りの見張り台。加賀平野を遠望でき、敵の動きをいち早く察知できる。
- 井戸
- 深さはおよそ25mほど。茶水に利用される。水面上には横穴があり、金沢城へ続く逃げ道になったとも云われている。
- そのため、庫裏の各部屋はこの井戸を中心に構成され、どの部屋からもロープを使い井戸へと逃げることができる。
- しかし、当時の土木技術では犀川を越えて地下通路を掘るのは困難とされ、横穴が金沢城へと続いているかは定かではない。
- 仕掛け賽銭箱
- 本堂正面入り口に埋め込まれている。敵が侵入してきたときは、落とし穴として利用される。
- 太鼓橋
- 井戸を川と見立てて室内に架けられた橋。橋の上から水を汲み上げお茶を嗜む。
- 明かり取り階段
- 正面の突き当たりにある階段。蹴込(けこみ)の部分に障子を張って明かりを取り、外敵の足の影を見て槍などで倒すことができる。
- 落とし穴階段
- 本堂の階段群にある渡り廊下に見せた階段。床板をはずすと落とし穴になり、下男部屋へ通じている。この落とし穴に落ちると、階下で待ち伏せている下男により、攻撃される仕組みになっている。
- 本堂裏隠し階段
- 物置の戸を開けて床板をまくると、階段があり外へ逃げることができる。外から堂内に逃げ込む際には、床板に溝が刻まれているため、引き戸を閉めることで“自動ロック”がかかり開かない仕組みになっている。
- 巨大な梁
- 雪の重みを分散するためで、北陸の豪雪に耐えるための仕組みといえる。
- 切腹の間
- 「片どんでん返し」になっており、内側からは開けられない仕組みになっている。
- 非常時には自害し、火を放つための部屋だといわれている。部屋の広さは死を表す4畳。
[編集] 所在地・アクセス
- 駐車場
- 極楽寺駐車場利用(有料)
- 見学
- 開門時間 - 夏季:9時~16時、冬季:9時~16時30分(要予約)
- 拝観料 - 800円