多田行綱
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多田行綱（ただ ゆきつな、生没年不詳）は平安時代末期の武将。源行綱（みなもと の ゆきつな）。摂津源氏（多田源氏）の源頼盛の長男。弟に多田知実、能瀬高頼らがあり、子に行定、行実、定綱、基綱、行盛、行忠らがある。官位は、六位蔵人を経て正五位下（一説に従五位下）、蔵人、伯耆守。別名、多田太郎、多田蔵人、六条蔵人。
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[編集] 経歴
摂津国多田の地に源氏武士団を形成した源満仲（多田満仲）より数えて八代目に当たる多田源氏の嫡流。
当初、藤原忠通の下で侍所の勾当として摂関家に仕えるが、後に後白河院の北面に加えられる。そして、安元3年（1177年）の鹿ヶ谷の陰謀では藤原成親から反平家の大将を望まれるが、とても成功の見込みはないと恐れて平清盛に密告し、関係者多数が処罰され、行綱自身も陰謀に加担したとして安芸に流されたとされる。ただし、この密告の史実は疑わしいとする見方もある。
治承・寿永の乱では鹿ヶ谷の陰謀以降、平家に属していたが、木曽義仲の快進撃と呼応する形で寿永2年（1183年）7月22日に摂津・河内の両国で挙兵し反旗を翻した。そして、摂津河尻で平家の船を全て押さえるなどして、西国から都に上る物流を遮断し平家の都落ちを促したが、これには在地の衆民が悉く協力したという。
同月25日に平家が西国に向けて都落ちすると、翌26日に朝廷が平親宗を遣わし行綱に安徳天皇と三種の神器の安全のために平家を追討しないよう命じる御教書を下した。
義仲の入京後間もなく、院との関係が悪化すると後白河院に味方し同年11月の法住寺合戦で主力として戦い、敗れて多田荘へ逃れた。義仲敗亡後は頼朝方につき、寿永3年（1184年）2月の一ノ谷の戦いでは源義経軍の一翼、多田源氏の棟梁として活躍する。なお、近年では古文書の検証から行綱が一の谷の戦い以前に初代摂津国惣追捕使に補任されており、摂津国内の武士に動員をかける有力な立場にあったとする研究が提示されている[1]。
平家滅亡後、義経が頼朝と対立すると、行綱もその風見鶏的な行動や義経の一派であった事などを理由に頼朝から疎まれ、元暦2年（1185年）6月、多田荘の所領を没収された。頼朝と対立した義経が都落ちすると、行綱は豊島冠者らと摂津河尻で迎え撃った。
以後の消息は不明。
[編集] 後の多田荘
行綱の手を離れた多田荘は、その後大内惟義に預けられ、多田源氏の家人であった武士たちは行綱に従う者を除いて多田院御家人として再編成された。
[編集] 伝承
頼朝に多田荘を没収された後の行綱の消息については不明であるが、九州天草地方に郎党と共に落ち延びたという伝承が存在し、同地には行綱にまつわる伝説が伝わっている。
また、多田源氏ゆかりの寺であり、安産祈願の寺としても有名な兵庫県宝塚市の中山寺の「腹帯」は、行綱の妻の不信心を本尊が鐘の緒をもって戒めたという伝説に基づく。
[編集] 脚注
- ^ 川合康 「生田の森・一の谷合戦と地域社会」『地域社会からみた「源平合戦」』収録
[編集] 参考文献
- 元木泰雄 『源満仲・頼光 殺生放逸・朝家の守護』（2004年、ミネルヴァ書房） ISBN 4623039676
- 川合康 「生田の森・一の谷合戦と地域社会」『地域社会からみた「源平合戦」』収録（2007年、岩田書院）ISBN 9784872944747
