国鉄貨車の車両形式
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国鉄貨車の車両形式(こくてつかしゃのしゃりょうけいしき)
貨車の形式称号は、以下のようになっている。
※○×△ XXXXXX |
このうち、○は用途を表す記号、×は積載重量を表す記号、△は主に制動に関する用途を表す記号、Xは同一形式内の車両番号を表している。また、※は符号を表す。スペースに余裕がない場合を除き、記号と番号を2段書きするのが原則であったが、これは民営化後の日本貨物鉄道(JR貨物)も守っている。
目次 |
[編集] 用途記号
この記号により、貨車の種類や形態が定められる。そのため複数の記号を重ねて使用することはない。緩急装置(車掌室)を持つものについては、積載重量記号の後に「フ」が加えられる。
[編集] 営業用
[編集] 有蓋貨車
- ワ:有蓋車(ゆうがいしゃ):Wagon(ワゴン)のワ
- テ:鉄製有蓋車(てつせいゆうがいしゃ):テツのテ。
- ス:鉄側有蓋車(てつがわゆうがいしゃ・てつそくゆうがいしゃ):「鉄」を表す英語Steel(スチール)のス。
- カ:家畜車(かちくしゃ):カチクのカ。
- ウ:豚積車(ぶたづみしゃ・とんせきしゃ):ウシのウ。当初は家畜車をウとし、新区分の豚積車がカとなる予定であったが、家畜車の両数が多く形式の書き換えが大変なため、豚積車をウとした。ブタの鳴き声(ブウブウ)のウや、ヴタのウというのは便宜上のもの。
- ツ:通風車(つうふうしゃ):ツウフウのツ。
- ナ:活魚車(かつぎょしゃ):サカナのナ。
- パ:家禽車(かきんしゃ):「家禽」を示す英語Poultry(パルトリー)のパ。
- ポ:陶器車(とうきしゃ):「陶器」を示す英語Pottery(ポッタリー)のポ。
- レ:冷蔵車(れいぞうしゃ):レイゾウのレ。
[編集] 無蓋貨車
- ト:無蓋車(むがいしゃ):Truck(トラック)のト。
- ク:車運車(しゃうんしゃ):クルマのク。
- シ:大物車(おおものしゃ):旧称の重量物運搬車のジュウリョウのシ。
- チ:長物車(ながものしゃ):「木材」を表す英語Timber(チンバー)のチ。コンテナ車も当初はチを使用していた。
- コ:コンテナ車(こんてなしゃ):コンテナのコ。当初は衡重車(こうじゅうしゃ)がコを使用していたが検重車に名称変更をしてコンテナ車に譲った。
- リ:土運車(つちうんしゃ・どうんしゃ):ジャリのリ。
[編集] タンク貨車
[編集] ホッパ貨車
- フ:緩急車(かんきゅうしゃ):ブレーキのフ。積載重量記号の後に付する。
[編集] 事業用
いずれも単独で使用され、緩急車の「フ」や重量記号は使用されない。
- エ:救援車(きゅうえんしゃ):キュウエンのエ。
- キ:雪掻車(ゆきかきしゃ):ユキのキ。
- ケ:検重車(けんじゅうしゃ):ケンジュウのケ。
- サ:工作車(こうさくしゃ):コウサクのサ。
- ソ:操重車(そうじゅうしゃ):ソウジュウのソ。
- ヒ:控車(ひかえしゃ):ヒカエのヒ。
- ヤ:職用車・試験車(しょくようしゃ・しけんしゃ):役務車のヤクムのヤ。役所のヤというのは便宜上のもの
- ヨ:車掌車(しゃしょうしゃ):旧称の用務車のヨ。シャショウのヨというのは便宜上のもの。
[編集] 積載重量記号
記号 | 積載重量 |
(なし) | 13t以下 |
ム | 14t~16t |
ラ | 17t~19t |
サ | 20t~24t |
キ | 25t以上 |
[編集] 同一形式内の車両番号
国鉄時代の形式番号は、その形式内で最初の番号を採る。その際、一位の番号は原則として0から始まるが、1形など例外もある。増備によって次形式の番号に達してしまった場合や、何らかの理由で同形式内で区別が必要となった場合は、その形式の頭(4桁の形式の場合は万位、5桁の形式の場合は十万位など)に数字を付加することもある。その場合、何らかの形で形式数字の一部を残すのが原則であるが、当初の想定を超えた大増備が行われた結果、空番を場当たり的に与えられ、番号から形式の判別がつきにくい例(ex.タキ1900形[1]、タキ5450形[2]など)もしばしば生じた。
国鉄分割民営化後に登場した新形式については、形式番号と車番をハイフンを介して結合する、新性能電車と同じ方式を採用している。そのため、初号車の車番は1であるが、同形式内での区別のため、千位、万位にオフセットした番台区分を行うことがある。
[編集] 符号
符号とは、他の形式と違う取り扱いをしなければならない形式にのみ、用途を表すカタカナの前に一回り小さい上付きのカタカナで表記する。
記号 | 事柄 | 車種 |
ア | 純アルミ製 | 主にタンク車(アタム等) |
オ | 大型 | 主にタンク車(全長16m超)、ホッパ車(全長12m超) (オタキ、オホキ等) |
キ | 急行便用 | 有蓋車(ワム)のみ(キワム) |
コ | 小型 | 主に無蓋車(軽貨物15t積)、タンク車(全長12m未満) (コトラ、コタキ等) |
ハ | パレット対応 | 主に有蓋車(ハワム等) |
ロ | 最高速度65km/h以下 | 主に大物車、石炭車(ロシキ、ロセキ等) 一部を除く事業用車全般 |
ワ | 有蓋車兼用 | 蓋付き無蓋車(トラ)、通風車の一部(ツ) (ワトラ、ツワ等) ワトラはのちに蓋を撤去しコトラに書換えられた |
- 符号ロが丸囲み(通称マルロ)の場合は道外禁止(運用を北海道内に限定する)車両を表す。
- 1968年(昭和43年)12月24日から識別のため、ロの符号の付いた車両の車体には黄色の帯が入る。同じくマルロの車両およびロの符号の付いた北海道内の車両(2段リンク改造が行われていないロの符号の付いた車両の大半を北海道内に押し込めた)には、黄帯を途切った中に黄文字で「道外禁止」の文字が入る。
- また、上記の符号を複数組合せた車両もある(アコタキ等)。
[編集] 規程の歴史
貨車の形式名称に関わる規定の主な歴史、改正をまとめると次の通りである。
[編集] 1911年称号規程
1911年(明治44年)1月16日付達第20号により制定された車両称号規程では貨車の名称・記号は次の通り[3]。
- 有蓋車
- 有蓋貨車=ワ(ワゴン)
- 非常車=ヒ(ひじょう)
- 魚運車=ウ(うお)
- 石灰車=カイ(せっかい)
- 水槽車=ミ(みず)
- 家畜車=カ(かちく)
- 緩急車歯車付=ピフ(ぴにおんぶれーき)
- 油槽車=ア(あぶら)
- 馬運車=ム(むま(馬))
- 雪掻車=ユキ(ゆき)
- 冷蔵車=レソ(れいぞう)
- 瓦斯槽車=カス(ガス)
- 家具車=カグ(かぐ)
- 無蓋車
- 炭水貨車=タス(たんすい)
- 無蓋貨車=ト(トラック)
- 無蓋貨車材木車兼用=トチ(トラック・チンバー)
- 石運車=セキ(せき(石))
- 鉄桁運搬車=ケタ(けた)
- 底開き式石炭車=タ(せきたん)
- 土運車=ツ(つち)
- 土運車材木車兼用=ツチ(つち・チンバー)
- 材木車=チ(チンバー)
- コークス車=コク(コークス)
- 車運車=シヤ(しゃ(車))
- 石炭車=セ(せきたん)
- ボギー貨車は積載重量により次の仮名文字を記号に冠する。20トン以上=オ。10トン以上=ホ。10トン未満=コ。
- 車体が鉄製のものは「テ(てつ)」を,鉄張のものは「テハ(てつはり)」記号を冠し、前者は「鉄製」を,後者は「鉄張」をその名称に冠す.但しボギー車にあっては本項の記号は前項積載重量記号の次位に付す。
- 車掌の乗務すべき設備がなく,単に手用制動機のみを有するものは「フ(ブレーキ)」をその記号の最上位に冠し「何々手用制動機付」と称し,又その設備あるものは「フ」をその記号の末尾に付し何々緩急車、と称する。
- 形式称号は同形式中の最初の番号に当該記号を冠したものを用いる。
- 車両の番号は機関車、客車、有蓋の貨車、無蓋の貨車および石炭貨車[4]の5種に分け、各別に順を追って付ける。
- 同じ形式の車両はなるべく同一数字を冠する番号を付し、他の形式車両との間には将来増加すべき同形式車両に付すべき相当の番号を保留してよい。
[編集] 脚注
- ^ タキ1900形の場合は、タキ111999までは100両ごと(多数欠番あり)に万の桁を繰り上げてきたが、タキ111999以降の車両の番号(本来ならタキ121900~)をそのまま続番のタキ112000~として増備したため。
- ^ タキ5450形の場合は、下2桁に50~99を使用し50両ごとに万の桁が繰り上がるようにしたため。
- ^ 『百年史』第6巻 p337により、適宜現代化した。
- ^ 原文は石灰貨車だが誤植と判断した。
[編集] 参考文献
- 日本国有鉄道『日本国有鉄道百年史』(『百年史』と略す)。