南部ゴシック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
---|
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
南部ゴシック(なんぶゴシック、Southern Gothic)は、ゴシック小説様式のサブジャンルで、アメリカ文学特有のものである。
[編集] 解説
ゴシックスタイルと同様に、南部ゴシックは神秘的で、アイロニックで、異常な出来事が特徴のひとつであり、それらがプロットを動かす要因となる。ゴシックスタイルとは違い、南部ゴシックではサスペンスのためにこれらの特徴を使うわけではなく、社会問題を掘り下げたり、アメリカ南部の文化的な雰囲気を明らかにするために使われる。
南部ゴシックの作者はおおよそ、南北戦争前の紋切型の表現の使用を避けている。例えば、幸せそうな奴隷や慎み深い南部美人、また礼儀正しい紳士や高潔なキリスト教牧師などである。その代わりに、作者は古典的ゴシックの典型を取り上げている。例えば、囚われの姫(Damsel in distress)や英雄騎士などをより現代的に現実的なやりかたで描写し、また、それらを例えば、意地悪で孤独な未婚女性や、隠れた動機をもった弁護士に作り変えている。
南部ゴシックの最も注目に値する特徴の一つは「グロテスク」(the grotesque)である。グロテスクはしばしば不快感を引き起こす性質、典型的な人種的偏見、利己的な独善などの特徴があり、それらがもつ状況、場所、古くさい人物が含まれる。しかし、それにもかかわらず読者はそれらを十分におもしろい特徴とわかる。それらは読者をしばしば不安にさせるが、南部ゴシックの作者は一般に非常に欠陥のあるグロテスクな特徴を使う。それは、南部文化をありのままでもなく、あまりに教訓的に見えるようにでもなく、優れた物語の部分と不愉快な部分を際立たせるためである。
このジャンルの作品は、以下の著名な南部作家の作品のなかに見られる。ウィリアム・フォークナー、アースキン・コールドウェル、 フラナリー・オコナー、カーソン・マッカラーズ、 Eudora Welty、テネシー・ウィリアムズ、トルーマン・カポーティ、Harry Crews、Lee Smith、John Kennedy Toole、コーマック・マッカーシー、Barry Hannah、キャサリン・アン・ポーター、Lewis Nordan、William Gayなどである。
[編集] 日本語訳で読める主な作品
- ウィリアム・フォークナー『死の床に横たわりて』『サンクチュアリ』『八月の光』『アブサロム、アブサロム!』など
- フラナリー・オコナー『賢い血』『フラナリー・オコナー全短編』(上下)など
- トルーマン・カポーティ『遠い声 遠い部屋』など
- ハーパー・リー『アラバマ物語』
- ミッチ・カリン(Mitch Cullin)『タイドランド』
- コーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy)『血と暴力の国』