使役
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使役(しえき)とは、「~させる」という表現形態を指す文法上の概念である。英語では、態(voice)の一種と位置づけられる。動詞や助動詞、動詞の接尾辞によって構文が導かれる。
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[編集] 日本語における使役
日本語では、助動詞の「せる、させる」を未然形に接続させる。
- 書かせる、食べさせる、来させる
「せる」は五段動詞の未然形とサ行変格活用の未然形「さ」に接続し、「させる」は上一段活用・下一段活用・カ行変格活用の未然形に接続する。 「~せる」を「~す」と表すこともあるもあるが、それは、五段活用のみであって、上一段活用・下一段活用・カ行変格活用・サ行変格活用では表さない。
- ○書かせる→書かす ×食べさせる→食べさす、来させる→来さす、勉強させる→勉強さす
使役にも受け身はある。
- 書かせられる、食べさせられる、来させられる
五段活用で、「~せる」を「~す」と表す場合の受け身は「~せられる」ではなく、「~される」になる。
- 書かせられる→書かされる 行かせられる→行かされる
上一段活用・下一段活用・カ行変格活用・サ行変格活用では「~せられる」を「~される」とは表さないので、「食べさせられる」を「食べされる」、「来させられる」を「来される」、「終了させられる」を「終了さされる」と表すことはない。
五段活用で、「さ」を接続させて、「書かさせる」「飲まさせられる」にしてしまうことをさ入れ言葉と言う。
[編集] 英文法における使役動詞
英語の場合、使役の表現は、元来は自動詞を起源としたと考えられている「~させる」の意味を表す動詞である使役動詞 (causative verb) による文法上特色ある構文で表現される。使役動詞は、目的格補語に不定詞をとる文法的特色が学校文法等で強調されている。(目的語が不定詞の意味上の主語になる。) 使役動詞には、原形不定詞をとる動詞と、to-不定詞をとる動詞があり、前者は、make, have, let, bid などであり、後者は compel や get が挙げられる。また、help にも同じ用法がある。
- He made his younger brother drink. (彼は弟に無理に飲ませた。)
- cf.He compelled his younger brother to drink.
- Have him write it for you. (彼にそれを書いてもらいなさい。)
- cf.Get him to write it for you.
- He made his dog eat pet food. (彼は、自分の飼い犬にペットフードを食べさせた。)
- He will help you clean your car. (彼は君の車を掃除するのを手伝うつもりだ。)
- What make him say that?(なぜ彼はあんなことを言うのだろう。※無生物主語構文)
[編集] 目的格補語に原形不定詞を用いるもの
- let
- have
- make
- help
[編集] 目的格補語に to 不定詞を用いるもの
- allow
- permit
- get
- force
- compel
- oblige
- cause
- drive
- encourage
- invite
- tempt
- help
[編集] 漢文法における使役形
漢文法では主に使、遣、令、教等が使役の助字(助動詞)として用いられる。