ワニス
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ワニスまたはニス (varnish) は木材などの材料の表面を保護するために用いられる、透明で硬い上塗り剤である。仮漆と当て字する。一般的には乾性油と樹脂にシンナー、テレピン油などの溶剤を混合したものである。ワニスで被覆された表面は光沢を持つことが多いが、必ずしもそうであるとは限らない。顔料を含むため一般的に不透明な塗料とは対照的に、完全に、またはほとんど無色透明である。ただし、薄く塗布すると透明になる塗料もある。
塗布したあと溶剤を蒸発させるか、化学反応等によってワニスは硬化する。油を使ったワニスが乾く速さは油・樹脂・溶剤の比に依存する、また、化学反応を伴う場合は一液性熱・光硬化樹脂を用いる事がある。溶剤を蒸発させるタイプと、化学反応を伴うタイプとの見分けは、硬化後の重量変化に顕著である。
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[編集] 成分
[編集] 乾性油
天然品・化成品を問わず乾性油の種類は多い。亜麻仁油、桐油、胡桃油などが使われる。
[編集] 樹脂
天然樹脂としてコハク、コーパル、ロジンなどがワニスに用いられてきた。今日ではアルキド樹脂、ポリウレタンなどが最も一般的である。化学反応系にはエポキシ樹脂が主に用いられる。
[編集] 溶剤
古くはテレビン油が溶剤として使われていたが、ストッダード溶剤 (Stoddard solvent, white spirit) あるいはシンナーなどの代替品が使われるようになっている。
[編集] 硬化剤
一液性熱・光硬化の場合には硬化剤が用いられ、主にイミダゾールを成分とする。
[編集] 種別
[編集] バイオリン
バイオリン用のワニスには胡桃油や亜麻仁油とコハク、コーパルやロジンの組み合わせが最もよく用いられる。使用する油は加温、または空気と日光にさらすことによって下ごしらえをする。配合する樹脂は加温して柔らかくするが、同時に重さが減り、色合いが濃くなる。濁った油と樹脂を混ぜ合わせて加温したあと、テレビン油で薄めて塗布用の溶液を調製する。
[編集] 天然品
天然のワニスは溶剤に溶かした樹液や樹脂からなるものが大部分である。使用する溶剤により、酒精ワニス(アルコールを用いたもの)、テレビン油ワニス、油ワニスの3つに分類される。スパーワニス (spar varnish) はマリンワニス (marine varnish) とも呼ばれ、高い防水性と日光に対する耐性を持つ。帆柱 (spar) に使われたことが名称の由来である。
[編集] 化成品
水を溶剤とするポリウレタンワニスや、エポキシ樹脂を配合したものが知られる。
[編集] ラッカー
詳細はラッカーを参照。
ラッカー (lacquer) の語は、溶剤を下地として作った速乾性を持つワニスもしくは塗料を意味する。耐久性が非常に高く硬化するのが遅い、ウルシの樹液から得られるワニスのことも指す。シェラックにはアルコールを溶媒として使う。耐久性にはそれほど優れないが、シェラックは下塗り剤や材料面へのワニスや塗料の浸透を防ぐシーラーとして使われ、フレンチポリッシュなどではそれ自身が上塗りに利用される。フレンチポリッシュは家具などの木材に独特の光沢を与える高等な技術である。
[編集] 備考
ワニスは本来、塗料を示す用語であるが、塗料ではない樹脂の混合物や製品においてもワニスと呼ぶ場合がある。特に化学材料メーカーでよく用いられ、塗料メーカーを出発点とした材料メーカーの用語が、そうではない由来のメーカーにも浸透したものと思われる。
[編集] 参考文献
- Bob Flexner (1993). Understanding Wood Finishing: How to Select and Apply the Right Finish. Rodale Press: Emmaus, PA. ISBN 0-87596-566-0