ロールス・ロイス RB211
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ロールス・ロイス RB211はロールス・ロイスplcが生産する高バイパスのターボファンエンジンである。原型はロッキードL-1011 トライスター向けに開発された。 派生型がボーイング 747やボーイング 757、ボーイング 767やロシアのツポレフ Tu-204に搭載された。他に発電用にも使用されている。
RB211は1990年代にトレントファミリーに置き換わった。
目次 |
[編集] 歴史
[編集] 背景
1966年、アメリカン航空は新型の少ない経費で運行できる短、中距離旅客機を導入する予定があることを発表した。アメリカン航空は双発機を探していた。航空機製造会社は新型旅客機の開発に迫られた。イースタン航空は洋上の長距離路線向けにより大型の三発機に興味を示し、他の航空会社も三発機に賛同した。ロッキードとダグラスはこの要望に応えるべく、それぞれ、L-1011とDC-10を開発案として示した。両方とも約300人乗りのワイドボディーで2通路の類似した機体であった。
両機共、新型のエンジンの搭載が必須だった。予定されたエンジンは当時、開発が進みつつあった燃費が良く、騒音の少ないターボファンエンジンだった。
ロールスロイスは3軸式の高バイパスターボファンエンジンの開発の目途がたった。
[編集] 設計の完了
1967年、6月23日、ロッキードに対してRB211-06を提案した。競合のエンジンより燃費が良く、出力・重量比が優れていたので新型機には打って付けに見えた。 [1]
[編集] RB211-22 シリーズ
[編集] 開発と試験
開発は難航した。当初見込みより、重くなり、燃料消費量も増えた。当初、開発された複合材製のファンブレードではバードストライクの試験に合格できなかった。新たにチタン製のブレードを開発していたが、開発費を押し上げ、計画が遅延する要因になっていた。 1970年、9月、ロールスロイスは政府に開発費が当初見込みから大幅に増えた事を報告している。 [2]
[編集] 破産
1971年1月、ロールスロイスは破産、2月4日管理下におかれた。これによってRB211の開発は遅れてしまい、ロッキードのL-1011もその分だけ開発が遅れてしまうことになった。これによって、ロッキードはライバルのDC-10に先を越されてしまい、L-1011の販売は不振に終わってしまう。
[編集] RB211-524 シリーズ
L-1011向けに開発したものの、L-1011が売れなかった為に他機種へ採用されるようにRB211を再設計した。
1960年代、ロールス・ロイスはボーイング747向けにRB211を売り込んだが、成功しなかった。しかし、-524は性能が上がり、燃費も良く、競合するプラット&ホイットニー社のJT9Dに充分太刀打ちでき、747の航続距離を伸ばせる事から、選択肢に加えられた。イギリスのブリティッシュ・エアウェイズなどは自国製のエンジンということで747にもこのエンジンを装着していた。
[編集] RB211-535 シリーズ
1970年代半ば、ボーイングは727を更新する双発機の開発を模索していた。 ボーイング757向けに開発された。現在ではロシア製のツポレフTu-204などにも使用されている。
[編集] 仕様
3つのシリーズに分類される:
[編集] RB211-22 シリーズ
- Triple-spool high-bypass-ratio 5.0
- Single-stage wide-chord fan
- Seven-stage IP compressor
- Six-stage HP compressor
- Single annular combustor with 18 fuel burners
- Single-stage HP turbine
- Single-stage IP turbine
- Three-stage LP turbine
[編集] RB211-524 シリーズ
- Triple-spool high-bypass-ratio 4.3 - 4.1
- Single-stage wide-chord fan
- Seven-stage IP compressor
- Six-stage HP compressor
- Single annular combustor with 18 fuel burners (24 on the G/H-T)
- Single-stage HP turbine
- Single-stage IP turbine
- Three-stage LP turbine
[編集] RB211-535 シリーズ
- Triple-spool high-bypass-ratio 4.3 - 4.4
- Single-stage wide-chord fan
- Six-stage IP compressor
- Six-stage HP compressor
- Single annular combustor with 18 fuel burners (24 on later versions of E4)
- Single-stage HP turbine
- Single-stage IP turbine
- Three-stage LP turbine
[編集] 一覧
RB211 エンジンファミリー: 明細 | ||||||
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エンジン | 静止推力 (lbf) | 基本重量 (lb) | 全長 (in) | ファン直径 (in) | 運用開始年 | 搭載機 |
RB211-22B | 42000 | 9195 | 119.4 | 84.8 | 1972 | ロッキード L-1011-1, ロッキード L-1011-100 |
RB211-524B2 | 50000 | 9814 | 119.4 | 84.8 | 1977 | ボーイング 747-200, ボーイング 747SP |
RB211-524B4 | 50000 | 9814 | 122.3 | 85.8 | 1981 | ロッキード L-1011-250, ロッキード L-1011-500 |
RB211-524C2 | 51500 | 9859 | 119.4 | 84.8 | 1980 | ボーイング 747-200, ボーイング 747SP |
RB211-524D4 | 53000 | 9874 | 122.3 | 85.8 | 1981 | ボーイング 747-200, ボーイング 747SP |
RB211-524D4-B | 53000 | 9874 | 122.3 | 85.8 | 1981 | ボーイング 747-200, ボーイング 747SP |
RB211-524G | 58000 | 9670 | 125 | 86.3 | 1989 | ボーイング 747-400 |
RB211-524H | 60600 | 9670 | 125 | 86.3 | 1990 | ボーイング 747-400, ボーイング 767-300 |
RB211-524G-T | 58000 | 9470 | 125 | 86.3 | 1998 | ボーイング 747-400, ボーイング 747-400F |
RB211-524H-T | 60600 | 9470 | 125 | 86.3 | 1998 | ボーイング747-400, ボーイング 747-400F |
RB211-535C | 37400 | 7294 | 118.5 | 73.2 | 1983 | ボーイング757-200 |
RB211-535E4 | 40100 | 7264 | 117.9 | 74.1 | 1984 | ボーイング 757-200, ボーイング 757-300, ツポレフ Tu-204 |
RB211-535E4B | 43100 | 7264 | 117.9 | 74.1 | 1989 | ボーイング757-200, ボーイング757-300, ツポレフ Tu-204 |
[編集] 出典
- ^ Pugh, Peter (2001). The Magic of a Name. Icon Books. ISBN 1840462841.
- ^ “Red Ink at Rolls-Royce”, Time, November 23, 1970. 2007-01-06閲覧.
[編集] 参考文献
- 大河内暁男『ロウルズ‐ロイス研究 企業破綻の英国的位相』(東京大学出版会、2001年) ISBN 4130460706
- ジョン ニューハウス著 航空機産業研究グループ訳 『スポーティーゲーム―国際ビジネス戦争の内幕』學生社 (1988/12) ISBN 978-4311600142
[編集] リンク
- Official Rolls-Royce RB211-524 site
- Official Rolls-Royce RB211-535 site
- Official Rolls-Royce Industrial RB211 site
[編集] 参考
[編集] 競合するエンジン
[編集] RB211-524 シリーズ
[編集] RB211-535 シリーズ
- Pratt & Whitney PW2000