リンパ節郭清
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リンパ節郭清(りんぱせつかくせい)とは、悪性腫瘍のリンパ行性転移に対する処置としてリンパ節を切除する外科的治療法である。
悪性腫瘍の転移経路として主に挙げられるのは血行性転移とリンパ行性転移である(他にも管腔内転移がある)。このうちリンパ行性転移は原発巣からリンパ液の流れに沿って進行するという性質がある。腫瘍細胞が流れ込んだリンパ節は炎症反応を起こし腫大する。このように肉眼的に分かるリンパ節もあるが、悪性腫瘍の怖いところは目に見えない腫瘍細胞が生き残っているかも知れないということである。こうした微小な転移は手術前に知ることができない。そこで可能性のあるリンパ節を予防的に切除し、腫瘍の取り残しをできる限り減らす努力が行われている。悪性腫瘍の発生した部位によって転移を起こしやすいリンパ節が分かっており、これらは系統立てて所属リンパ節と呼ばれている。切除はこの系統に従って行われ、郭清と呼ばれる。
[編集] 副作用
リンパ系は組織液(血管から浸みだした水分)を心臓に還す役割も担っている。ところがリンパ節郭清を徹底すると水分の帰り道がなくなり水分が貯留し浮腫を引き起こす。乳癌の手術時に腋窩リンパ節を郭清すると上腕が腫れることがあるのはその例である。いっぽう、リンパ節郭清を徹底しても生命予後の改善に寄与しないとする報告もされはじめ、広範な郭清を見直す動きが出ている。そして縮小手術の観点から1990年代から提唱された概念がセンチネルリンパ節である。