マンカラ
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マンカラ (mancala) は、アフリカや中近東、東南アジアにかけて古くから遊ばれている、伝統的な一群のゲーム(ボードゲーム)の総称である。ルールの異なる100種以上ものゲームが含まれるが、後述するように、他のボードゲームとは明確に区別される特徴を持つ。マンカラという言葉はアラビア語のnaqala(動く)から来ている。現在、西洋で広く知られているマンカラには、カラハ(Kalah)、オワリ(Oware /Owari /Awele)、コンカク(Congklak)、オムウェソ(Omweso)、バオ(Bao)などという名のものがある。(ウィキペディア英語版"mancala"参照)。日本ではまだあまり知られていない。
紀元前15世紀頃の古代エジプトの首都メンフィスでその原型となる遊戯の跡があるとも言われる。
マンカラという言葉は本来は一群のゲームの総称だが、アメリカやヨーロッパのゲームメーカーの中にはカラハ(Kalah)のことをマンカラとして説明しているところもある。また、日本のいくつかのウェブサイトでは、マンカラ系のあるひとつのゲームだけをマンカラとして紹介しているところもある。
プレイ人数は2人。2列または4列に並んだ穴の中に、小石、ビーズ、木の実、豆つぶ、などを配列して遊ぶが、これら穴の中に入れる駒のことを以下の記載では「石」と表記する。2列または4列の他に左右に大きな穴があることが多い(無い場合もある)。
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[編集] ゲームの概要
以下の記載は主に外部リンク「西アフリカのマンカラ」を参考にしている。全てのマンカラ系ゲームには次のような共通の特徴がある。
- プレイ人数は2人。二人ゼロ和完全情報ゲームである。
- 多くのゲームでは、横長に6~12個程度×2列に並んだ穴を使い、一方の列の穴は一人のプレイヤーのものであり、他方の列の穴はもう一方のプレイヤーのものである。4列の穴を使うゲームもあり、この場合は各2列ずつが、それぞれのプレイヤーに属する。
- 開始時に各穴に決まった数の石を入れ、各手番ごとにsowing(種蒔き)と呼ばれる方法で石を動かす。これは、自分のどれか一つの穴にある石を全て手に取り、その石をひとつの穴に1個ずつ、隣の穴から順番に入れてゆく動作である。
- 2列に並んだ穴の左右に1つずつの大きな穴があることも多い。この穴は単に取った石を入れておくだけの役割のこともあるが、sowingで石を入れるルールもある。
- 穴に入れる石自体には敵味方の区別がなく、全ての石は同じ価値を持つ。各プレイヤーは自分の列の穴にある石のみをsowingにより動かせる。
- 手に取った石の最後の石が撒かれる穴の状態で、敵の石が取れたり取れなかったりする。このとき、穴の状態によっては、さらに連続して別の穴の石を撒けるゲームも多い。
- どちらかの手番でsowingができなくなればゲーム終了で、取った石の多い方が勝つ。ただし、先に自陣の石をなくした方が勝ち、といった別のルールも存在する。
sowingは一つ一つの穴に石を入れていく動作をいい、手に取った石全てを撒き終わるまでの動作をラップ(lap)という。1回のラップで敵の手番になるルールをシングルラップと呼び、連続してラップできることもあるルールをマルチラップと呼ぶ。石を撒くときは、2列の両端がつながった環状の穴の配列と見て、反時計回りに撒くルールが多いが、時計回りのルールもあり、マルチラップにおいてラップごとに方向が逆になるルールもある。
開始時に各穴に何個の石を入れるかという初期配置は様々な形があり得るが、主なものは、1)自陣の穴全てに等しい数の石を入れる、2)自陣の穴にひとつおきに等しい数の石を入れる、の2種類である。各穴に入れる石の数は2~6個程度が多い。
[編集] 初期配置の一例
6X2列の各穴に3個ずつの石を入れた場合を示す。
[編集] 石撒きの一例
[編集] ゲームの一例"Kalah"
ウィキペディア英語版でカラハとして紹介されているゲームである。また、イギリスでゲームメーカーから発売されているゲーム(外部リンク参照)の中では"Basic"(基本ルール)として紹介されている。子供向けと見なされており、先手必勝法が知られているらしい。
- ボードは6X2列の穴と列の両横にストア(store,貯蔵所)と呼ぶ大きな穴を持つ。ボードを挟んでプレイヤーが向かい、自分の側の一列が自分の陣となる。自分の右側のストアが自分のストアである。石撒きでは自分のストアにも撒くが、敵のストアには撒かない。石撒きは反時計回りに行う。初期配置はストア以外の全ての穴に3個ずつの石を入れた配置である。
- ラップが自分のストアで終われば、つまり石撒きで最後の石が自分のストアに入れば、再び自陣の好きな穴から石を取り撒き始めることができる。すなわち、これはマルチラップのルールである。ストア以外の穴で終われば、相手の手番になる。ラップが自陣の空の穴で終われば、その最後の石と、同じ位置の敵陣の石、つまり対面の穴にある石全てを取り、自分のストアに入れる。
- どちらかの陣の全ての穴が空になった時点でゲームが終了し、その時に穴に残っていた石全ては、空になった側のプレイヤーのものになり、そのプレイヤーのストアに入る。従って、まだ石が多く残っている間にうかつに敵陣の穴をどんどん空にすると負ける危険がある。
[編集] ゲームの一例"Oware"
ウィキペディア英語版でw:en:Owareとして紹介されており、外部リンクのイギリスのゲームメーカーから"Owari"として紹介されているゲームと同じである。マンカラ系ゲームの中では最も戦略性が高いものの一つであり、チェスや囲碁と同様にエキスパートが存在する。ガーナの国技でもある。
- 石撒きでストアには入れず、ストアは取った石の貯蔵所としての意味しか持たない。初期配置は全ての穴に4個ずつの配置である。
- 石撒きは反時計回りに行い、撒き終われば相手の手番になる。つまりシングルラップである。撒く石の数が12個以上なら、ラップ中に一周して撒く石を取った元の穴に戻るが、その場合はその元の穴には石を入れずに飛ばして次の穴から撒き続ける。
- ラップが敵陣の穴で終わり、その穴の石の数が2または3個になれば(つまり元は1または2個入っていた)、その穴の石を全て取り自分のストアに入れる。さらに、その直前の穴の石の数が2または3個になっていたら、その穴の石も全て同様に取る。さらに、その直前の穴についても同様にという風に、2または3個以外の石の穴にぶつかるか、自陣の穴にぶつかるまで、取りを続ける。ただし、これで敵陣の全ての穴の石が取れてしまったら、このラップでの取りはなかったことになる。
- 相手の手番で石撒きができなくなるような手を指してはいけない。すなわち、もし相手の穴が全て空であれば、相手の穴のどれかには石が残るように石撒きをしなければならない。前述の、敵陣の全ての石が取れてしまったら取りはなかったことになる、というルールも、このルールからの要請である。そのような手が不可能な場合は、その時点でゲームが終わり、その時点で自陣の石を全て取りゲームが終わり、取った石の多い方の勝ちになる。
- ゲームの目的は敵より多く石を取ることである。石は全部で48個あるので、どちらかが25個の石を取った時点で、そのプレイヤーの勝ちとなりゲームが終わる。双方が24個ずつ取れば、その時点で引き分けとなってゲームが終わる。
[編集] その他のゲーム
マンカラ系のゲームには多数の種類があるが、ルールには次のような変化がある。
- 自分の陣地から石が無くなれば勝ち。
- 左右の穴に入った石が得点となる。
- 左右の穴で撒き終わったら、手番が連続する。
- 自分の陣地で撒き終わったら、手番が連続する。
- 撒いた最後の石が自分の陣地に入り、そこに入った石が1個だけなら、その石と、向かい側の相手陣地の石を取れる。
[編集] ゲームの特徴
ルールは非常にシンプルで、子供でもプレイ可能。アブストラクトゲーム・二人零和有限確定完全情報ゲームであり、運の要素が全く無いため、先読みを要求される。
[編集] 買わなくても遊べる
現代でもマンカラはボードゲームとして複数のメーカーから発売されているが、石と穴があれば遊べるので、特別な用具は必ずしも要しない。そもそも、元は地面に丸を描いたりして遊ばれていたと考えられている。 日本の家庭ならば、画用紙にマルを描いて、おはじきや豆つぶなどを石(駒)にして遊ぶこともできる。
[編集] マンカラ系の現代ボードゲーム
マンカラのバリエーション、あるいは発展型として、いくつものゲームが作られている。
- オールボールコールゲーム
- オーワーリー
- スワヒリ
- ピラミディス (PYRAMIDIS)
[編集] 外部リンク
[編集] 関連項目
- w:en:List of mancala games(世界のマンカラ系ゲーム)