ボージャ1世
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
ボージャ1世（Bhoja I ,836年頃 - 885年）は、プラティハーラ朝の全盛期を築いた王で、パラマーラ朝の王ボージャ(1018年～55年)と区別するためにミヒラ・ボージャ(Mihira Bhoja) (1世)とも呼ばれる。正確な即位年代は不明であるが、836年ごろカナウジを確保したことが記録から知られる。
ボージャは、祖父ナーガパタ2世の晩年及び父王ラーマパドラの時代にパーラ朝などに浸食された領域の回復につとめ、ラジャスタン、マディヤ・プラデーシュ、ウッタル・プラデーシュ西部の足固めを終えるとガンジス中下流域への遠征を敢行したが、パーラ朝の英主デーヴァパーラ（810年頃～855年頃）に撃退された。その後、グジャラートとデカン地方の征服を行おうと考えたが、ナルマダー河畔で多大な犠牲をはらってかろうじてラーシュトラークータ軍を破り、マールワ地方の大半とグジャラートを確保するにとどまった。
ボージャは中央アジアやアラビア方面から馬を輸入し優秀な騎兵を養成した。その軍勢の強大さについてはアラブの歴史家スライマーンや直接ボージャの時代ではないが、915～916年頃プラティハーラ領内を旅したアル・マスウーディーの記録[1]からもうかがわれる。一方、デーヴァパーラ没後のパーラ朝は急速に弱体化し、ボージャは、パーラ朝に対して雪辱を果たし、ビハール州西部まで獲得するにいたった。また、北西は、パンジャーブ地方まで勢力を拡大することに成功し、ウッタル・プラデーシュの東端ゴーラクプルのカラチュリ家、ブンデルガンドのチャンデーラ家、ラジャスタンのチャーフマーナ家、マールワのパラマーラ家を封臣（サーマンタ）として従えた。
内政面では、グジャラート確保による海上交易、金、銀山などの開発と貨幣の鋳造を行い、領内には盗みを働く者がいないくらいの繁栄を誇ったという。また、ボージャ1世は、ハルシャ・ヴァルダナが『ハルシャチャリタ』で題材になったように伝承、戯曲の題材になった王として知られ、青年時代の冒険譚、失われた帝国を再建してカナウジを獲得する物語として描かれている。
[編集] 脚注
[編集] 参考文献
- サティーシュ・チャンドラ/小名康之・長島弘(訳)『中世インドの歴史』,山川出版社,1999年 ISBN 463467260X
- 山崎元一,小西 正捷編『世界歴史大系 南アジア史1(先史・古代)』山川出版社,2007年 ISBN 4634462087
