ヘモグロビンA1c
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ヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c; HbA1c)は、グリコヘモグロビンのうち、ヘモグロビンのβ鎖のN末端にグルコースが結合した糖化蛋白質である。
[編集] 概要
成人の血中ヘモグロビンの組成は、約90%がヘモグロビンA0(α鎖2本とβ鎖2本からなる成人型ヘモグロビン)、約7%がヘモグロビンA1(ヘモグロビンA0のβ鎖にグルコースやリン酸化糖などが結合したもの)、約2%がヘモグロビンA2(α鎖2本とδ鎖2本)、約0.5%がヘモグロビンF(α鎖2本とδ鎖2本からなる胎児型ヘモグロビン)である。 このうちヘモグロビンA1は、β鎖に結合した糖の種類によってさらにA1a1、A1a、A1b、A1cなどに分画されるが、最も多いものがA1c分画であり、総ヘモグロビンの約4%を占める。
ヘモグロビンへのグルコースの結合は、ヘモグロビンのアミノ基の窒素が持つ非共有電子対がグルコースのアルデヒド基の炭素を求核攻撃することにより進行する。このうち、成人のヘモグロビン(ヘモグロビンA)におけるβ鎖N末端のバリンとグルコースが結合したものがヘモグロビンA1cであり、安定で糖化ヘモグロビンの中でも大きな割合を占めるため、糖化ヘモグロビンの指標として用いられる。 また、この反応は非酵素的におこるため、ヘモグロビンA1cのヘモグロビンに対する割合は血中グルコース濃度(血糖値)に依存し、糖尿病治療における血糖コントロールの指標として用いられる。
ヘモグロビンの生体内における平均寿命は約120日であり、ヘモグロビンA1cのヘモグロビンに対する割合は、過去1ヶ月〜2ヶ月の血糖値の指標となる。