ブリュンヒルデ
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ブリュンヒルデ(古ノルド語:Brynhildr、英語:Brunhild、ブリュンヒルドとも)とは、北欧神話に登場する人物である。ワルキューレの一人で、『ニーベルングの指環』では、主神オーディンと知の女神エルダの娘とされる。愛馬はグラーネまたはヴィングスコルニル。
また、『ヴォルスンガ・サガ』、『ニーベルングの指環』では、ジークフリートと夫婦、または恋愛関係にあったとされ、その設定が現在最もよく知られており、『ニーベルングの指環』のキーワードのひとつとなっている。
だが、彼女は物語によって違う人格として描かれているので、この設定が彼女を知る材料のすべてではない。
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[編集] ワルキューレとしてのブリュンヒルデ
『ヴォルスンガ・サガ』または『ニーベルングの指環』のなかでの彼女は、戦死した兵士をオーディンの住むヴァルハラへと導く戦女神ワルキューレの一人として描かれており、彼女が登場する作品の中でも最も神秘的な存在になっている。
[編集] ワルキューレ時代
ワルキューレとは前述の通り、戦死した兵士をヴァルハラへ導く存在であり、ブリュンヒルデはその一人(長女)であった。彼女たちは鎧に身を包み、自分の馬にまたがって騎行し、兵士をヴァルハラへ導いたり、戦争情勢を左右できる存在であった。そんな彼女らにとってオーディンの命は絶対的なものであり、逆らうなどとは考えもよらないことだった。
だが、ブリュンヒルデはフンディング家とヴォルズング家の戦い(『ヴォルスンガ・サガ』ではヒャームグンナル王とアウザブロージル王の戦い)において、オーディンの命に逆らってヴェルズング家(アウザブロージル王)を勝たせてしまった。(『ニーベルングの指環』ではもうひとつ、ジークムントの子(のちのジークフリート)を身ごもったその妹ジークリンデを保護し、逃がしてしまったからというのも原因。)
そのことがオーディンの怒りに触れ、処罰されることになる。すなわち、彼女の神性を奪い、「恐れることを知らない」男と結婚させられてしまうことである(『ニーベルングの指環』ではどうせ結婚させられるのならと彼女が望んだことになっている)。
それまで、彼女は燃え盛る焔のなかで眠り続けることになった。
[編集] ジークフリートとの結婚
幾年かが過ぎ、ジークフリートは成長し、名剣『ノートゥング』(サガではグラム)が鋳造できるまでになっていた。
あるとき彼は、山(ヒンダルフィヤル山)にやってくると、鎧に身を包んだ人間を発見する。
それはオーディンの命で眠らされたブリュンヒルデだった。彼女は目覚めると、自分の身の上を話す。
ふたりは恋に落ち、やがて結婚した。(サガではアスラウグという娘まで授かっている。)彼女はさまざまな知恵などを彼に教えた。
- しかし、幸せは長く続かなかった。二人は自身に定められた運命に背いていたからだ(ブリュンヒルデはそのことを盾に取り、当初は結婚を拒否していた)。
ジークフリートは指輪(サガでは腕輪)をブリュンヒルデに託して、去っていった。