ビクトリノックス
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ビクトリノックス (Victorinox) は、スイスに本拠地を置くナイフ製造業者である。スイスアーミーナイフの納入業者として知られている。なお、社名はカールの母親の名(ビクトリア)と、フランス語でステンレス鋼を表す略語「イノックス」の組み合わせ。2005年に同じくスイス軍にアーミーナイフを納入していたウェンガー(Wenger)社を併合した(後述)。
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[編集] 歴史
[編集] ビクトリノックス
ビクトリノックスは1884年、スイスのイーバッハで帽子職人の4人目の息子であったカール・エルズナーが開いた工房がはじまりである。カールは1860年生まれで、手に職をつけるためドイツやフランスで鍛冶職人としての修行を積んだ人物であった。
カールの工房が飛躍するきっかけとなったのは、1891年にスイス軍に納入したツールナイフである。この製品は高く評価され、スイス軍は制式装備品のナイフの納入業者をドイツのゾーリンゲンの業者からカールの工房に変更することとなった。
現在も同社のツールナイフの基本形となっている「オフィサー」が開発されたのはそれからしばらく後のことで、「オフィサー」は1897年に特許を取得している。その後、類似品が数多く出回るようになった為、1909年にハンドル部分にスイスの国章である白十字を入れるようになった。
2005年4月25日にウェンガー社を買収。製造元は一社となったが「ウェンガー」ブランドは継続すると発表されている。
[編集] ウェンガー
ウェンガー社(w:Wenger) は、スイスアーミーナイフのもう一つの供給会社である。1893年、スイス・ジュラ地方に移住した手工業者四人が開いた工房「ザ・カトラリー・ワークス」がその前身とされる。その後、財政難に陥った同社を、牧師であった“テオ”セオドル・ウェンガーが再建し、彼の姓を社名として、ウェンガー社が設立された。1901年には、ビクトリノックス社と同じく、スイス陸軍にソルジャーナイフが採用され、以降はビクトリノックスとウェンガーは、半数ずつソルジャーナイフを納入するようになる。2005年4月25日にビクトリノックス社に吸収合併されたが、「ウェンガー」ブランドは継続すると発表されている。
[編集] 製品
[編集] スイスアーミーナイフ
スイス軍隊が正式採用している、日用的な用途に使用するための多機能折り畳みナイフが「ソルジャー」である。また「ソルジャー」を発展させたモデルとして「オフィサー」シリーズがある。
製品によっては方位磁針やポケットライト、時計、USBメモリ、気圧計、MP3プレイヤーなどを搭載したものもある。
[編集] スイスツール
スイスツールはレザーマン・ツール(ニードルノーズ・プライヤーを主体にした折り畳み式マルチツール)のビクトリノックス社版。
[編集] キッチンウェア
創業の頃から、家庭用及びプロ用としてキッチン用の包丁を販売している。またその派生として、ワインオープナーなどのキッチン小物も販売している。
[編集] ブランドの拡張
ナイフの他、航空機への持込みを考慮しブレードを廃した「フライト」、腕時計やバッグなども生産しており、刃物メーカーからアウトドアグッズメーカーへと変化しつつある。
[編集] ビクトリノックス製ナイフとウェンガー製ナイフの違い
基本的な機能やデザインは似通っているが、やはりいくつかの違いがある。
- ハンドルの長さ
- ミドルサイズの製品のハンドルの長さが、ビクトリノックスが91mmであるのに対し、ウェンガーは85mmと、やや短い。しかし、ミニマムモデルでは、ビクトリノックスが58mm、ウェンガーが61mmとなっている。
- スイスクロスのデザイン
- ビクトリノックスが盾のような図形の中に十字マークを入れているのに対し、ウェンガーのマークは、やや丸みをおびた正方形である。
- 缶切の方式
- ビクトリノックスのナイフに装備された缶切は、欧米で主流の押しながら切るタイプだが、ウェンガーの缶切は、日本で主流の引きながら切る方式である。ただし、スイス陸軍に納入しているソルジャーナイフは、どちらも押し切り式となっている。
- ハサミのスプリング
- 折り畳みナイフに収められたハサミは、指を放すと自動的に開くようにスプリングが装備されているが、このスプリングの形が両社で違う。
- ビクトリノックスのハサミのスプリングは、薄い板の形のものを採用しており、一方ウェンガーのスプリングは、耐久性の高いソリッド・レバーを採用している。
- ソルジャーナイフのキーリング
- 前述のように、両ブランドとも半数ずつスイス軍にナイフを納入している。このナイフにプリントされたスイスクロスのデザインはどちらとも違い、縦長の楕円の上半分を切って平たくしたような形となっている。このソルジャーナイフについているキーリングが両者で違う。
- ビクトリノックスのソルジャーナイフは二種類あり、スイス陸軍に納入しているそのままのモデルと、一般向けのモデルがある。陸軍モデルにはキーリングがついておらず、ハンドルのマークも前述のスイス陸軍のものだが、一般モデルにはスプリングタイプの小さなキーリングがついており、ハンドルのマークはビクトリノックスのものである。
- ウェンガーの市販ソルジャーナイフは、スイス陸軍仕様のモデル一種類だけである。こちらには、ビクトリノックスのものとは違い、環状の大きなキーリングがハンドルを貫く形で付いている。
- 左利き用モデルの存在
- 基本的に折り畳みナイフは右利きを前提に作られているが、ウェンガーの製品には、左利き用に使いやすくしたモデル「レフトハンダーズ」シリーズも存在する(数は少ないが)。“左手を挙げ右手を下げた人”の線画マークが入っている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Victorinox(英語版・ドイツ語版・フランス語版・スペイン語版)
- ビクトリノックス・ジャパン株式会社(日本語版)
- Victorinox Swiss Army(英語版)
- ビクトリノックス・アパレル(日本語版)
- ウェンガー(時計・日本語版)