ヒスパニック
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ヒスパニック(英語:Hispanic、スペイン語:Hispano〔イスパーノ〕)は、メキシコやプエルトリコ、キューバなど中南米のスペイン語圏諸国からアメリカ合衆国に渡ってきた移民とその子孫をいう。中には、先祖が旧メキシコ領に住んでいて、米墨戦争によって居住地がアメリカ合衆国領に組み入れられたため、アメリカ合衆国に移民したわけでもないのにアメリカ合衆国に代々住み着いているヒスパニックもいる。
近年増加傾向にあり、2003年現在で4000万人のヒスパニックがいるといわれ、アメリカの人口の13.4%を占め、最大の少数民族となっている。
ヒスパニックは人種概念ではなく、自分あるいは先祖がスペイン語圏のラテンアメリカ地域出身であるかどうかという出自の意識、換言すれば自分をヒスパニックと思うかどうか、というアイデンティティの概念である。実際、ヒスパニックは、人種的には白人、黒人、インディオ、そしてそれらがさまざまな割合で混じり合った人たちからなる。アメリカ国勢調査でも、人種とは別の範疇として、ヒスパニックか否かという項目が立てられている。言語面でも、スペイン語しか解さない人、スペイン語が第1言語だが英語も使える人、英語が第1言語だがスペイン語も使える人から、英語しか解さないヒスパニックまでいる。もっとも、もともとはスペイン語しか解さない人でも、アメリカに移住し生活していく上で英語が必要不可欠なため、必然的に英語を習得する人が多い。ちなみにアメリカのヒスパニック系の51%は白人のヒスパニック系である。
彼らはその数の多さから、政治の分野においても無視できない存在となり、近年の大統領選挙においてもヒスパニック有権者の動向が注目されることが多い。
ヒスパニックの多く住む地域としては、カリフォルニア州、ニューヨーク州、テキサス州、フロリダ州などがある。
ヒスパニックには、社会生活を営むための英語を十分に駆使できない人もいるため、ヒスパニックへ対応するために、スペイン語による授業や公共施設の表示などの社会インフラ整備が進められつつあり、スペイン語がアメリカにおける第二言語になりつつある。学校ではアメリカ人の多くがスペイン語を外国語として学ぶ。以前は英語が十分に駆使できないという理由から差別を受けてきたヒスパニックもいるが、最近では企業のウェブサイトにスペイン語のウェブページを用意したりすることもある。
なお、ヒスパニックと同じように使われる言葉に「ラティーノ」(Latino)があるが、ヒスパニックが文字通り「スペイン語圏出身者」を指すのに対し、ラティーノはスペイン語圏以外のラテンアメリカ全域の出身者を指す。たとえば、ブラジル出身者はラティーノではあってもヒスパニックではない。また、ヒスパニックとラティーノの単語が同時に使われる場合、ヒスパニックはメキシコ出身者のみを指す事が多い。
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- ※この5,6年間の間にヒスパニックについては大きく変貌した可能性ある。