バンカー (ゴルフ)
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バンカー (banker) とはゴルフのコースを形成する一要素で、ウォーターハザードと並ぶハザードに属する。形や大きさはまちまちであるが、砂で満たされている。たいていの場合、周囲の地面より数十センチメートルくぼんでいる。
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[編集] バンカーによる影響
バンカーはハザードに属するが、ウォーターハザードと異なり、打球をバンカーに打ち込んだとしても救済はない。バンカーからはよく飛ぶ球を打ち出すのはきわめて困難であり、スコアを悪化させる要因となる。特に乾燥する季節・気候帯でのバンカーの砂は乾いてさらさらになっており、ボールが深く埋まってしまい、いっそう抜け出すのが難しくなる。
バンカーは、試合に参加する各プレイヤーの心理に強く影響する。 バンカーにはまることで、そのプレイヤーは過度に緊張することがある。またそのときに他のプレイヤーは「得をした」感情を持つことがあり、気がゆるみがちである。様々な状況変化があっても平常心を保つことがゴルファーの要であり、他人がバンカーに打ち込んだとしても、それに影響されず落ち着いてプレーを進行できる能力が求められる。
ガードバンカー (guard banker) グリーンの周りにあり、グリーンをガードする目的のバンカー。
フェアウェイバンカー (fairway banker) フェアウェイの途中にあり、多くはティーショットを難しくさせるためのバンカー。
[編集] バンカーからの脱出
バンカーから脱出するためのショットをバンカーショットと言う。バンカーショットの際には、特にガードバンカーから脱出する際にはサンドウェッジ (SW)というクラブを用いる。サンドウェッジは飛距離は出ないものの、ボールに対して深く接触し、弾道が高く方向性をはっきり出せる性質を持っている。また、サンドウェッジ以外のクラブを用いてもかまわない。要は効率よく脱出し、バンカーに打ち込んだロスを埋め合わすことができればよい。サンドウェッジの扱いに慣れていないなら、自分にとって扱いやすいクラブを用いてもよい。ただしどのようなクラブを使う場合であっても、フェースやシャフトを使ってすくい上げるようなことは禁止されている。
[編集] コース設計におけるバンカーの配置
コースの設計において、バンカーの配置を考えることは味わい深い作業である。
一例として、飛距離を稼げるゴルファーに対し、ティーグラウンドから目一杯飛ばして1打でグリーンをねらえるようなレイアウトを考える際、グリーン直前にバンカーを配置すれば「無理してでも1打でグリーンに何とかたたき込む」あるいは「バンカーが怖いので少し手前をねらう」というような判断をプレイヤーに求めさせることができる。
別の例として、初心者への(少しお節介な)配慮で、地面についたボールが長く転がってOBになりがちな斜面にバンカーを設け、一種の安全ゾーン的な役割を与えることもある。グリーンの後方に設けられたバンカーはこのような性質を帯びている。アプローチに失敗して、過度に飛ばしてしまったボールをキャッチすることでOBにならないようにしていると考えられる。
[編集] ルールとマナー
バンカーにボールが入った競技者は、ショットするまでクラブで砂に触れてはいけない。もし、触れてしまうと、2打罰のペナルティーとなる。アドレス(ショットを打とうと構えること)の際も例外ではない。注意しなければならないのは、バンカーショットでボールがバンカーから出なかった後、クラブで砂を(悔しくて)叩いてしまうと前述のペナルティーになる。
どうしても自力で脱出できないと判断した場合は、速やかにアンプレヤブルを自ら宣言し、1打罰のペナルティを負って適切な方法でプレイを進行させることができる。
バンカーを含むハザード内ではいかなる改善も行ってはならない。ルースインペディメント(枯葉等の些細な障害物)も取り除いてはならない。反すると、2打罰のペナルティになる。
バンカーから脱出できたら速やかに自分の足跡や打撃の跡を修復しなければならない。脱出できて安心して、そのまま次の場所に進むのはマナー違反である。一般的なコースの場合、バンカー周辺には「レーキ」と呼ばれる修復用の器具がたいてい置いてあるので、これを用いて行う。他のプレイヤーが作った跡が残っていればそれも同時に修復する。レーキはなるべくボールがあたりにくい場所・方向に戻しておく。
[編集] バンカーを巡る事件
バンカーを巡って、プロゴルフトーナメントでは実際にこんな事が起きている。
1990年のダンロップ・フェニックス選手権の3日目。16番ホール(パー4)でラリー・ネルソンが放ったティーショットがバンカーの中に入ったのか、スルー・ザ・グリーンなのかで競技委員と一悶着を起こした事があった。不幸にもバンカーとスルー・ザ・グリーンとの境目にボールが入ったために起きた出来事だった。「ボールはスルー・ザ・グリーンだから無罰でドロップ出来る」と主張するネルソンと、「ボールはバンカーの中。アンプレヤブルを宣言したのだからペナルティを負わなければならない」とする競技委員の主張が対立(実は1回でバンカーからボールを出すことが出来なかった)。取り敢えずプレーを続行し、ホールアウト後に再び両者が協議し、結局は競技委員の裁定にネルソンが従い(日本語で「ごめんなさい」と謝罪した)、このホールはトリプルボギーになった。なおネルソンは翌1991年の同大会では4人によるプレーオフを制して優勝を飾った。