バッハ作品主題目録番号
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バッハ作品主題目録番号(ばっはさくひんしゅだいもくろくばんごう)(独:Bach-Werke-Verzeichnis)は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(大バッハ)の音楽作品に付された通し番号。一般にBWVと略し、普通は英語式にビー・ダブリュー・ブイ、またはドイツ語式にベー・ヴェー・ファオと読む。ヴォルフガング・シュミーダーが1950年に著した Thematisch-systematisches Verzeichnis der musikalischen Werke von Johann Sebastian Bach(ヨハン・ゼバスティアン・バッハの音楽作品の主題系統的目録)に基づくため、シュミーダー番号とも呼ばれる。バッハ作品総目録番号とも。バッハ没後200年の節目に公表することを念頭に置いて編集されたため、この年から編纂作業が始まった新バッハ全集の研究成果はまったく反映されておらず、1900年に完結した旧バッハ全集用の研究を基本資料としつつ、空白の50年間に発見された新曲を組み込んだものとなっている。
他の作曲家の作品番号に相当し、それに代わるものとして現在広く使われている。ただし、作品番号や、モーツァルトのケッヘル番号、シューベルトのドイッチュ番号が作曲順に付番されているのに対し、この番号はジャンルごとにまとめて番号が振られている。
- BWV1-231 カンタータ、モテット
- BWV232-243 ミサ
- BWV244-249 オラトリオ
- BWV250-524 コラール、歌曲
- BWV525-771 オルガン曲
- BWV772-994 オルガン以外の鍵盤楽器(チェンバロ、クラヴィコード)の曲
- BWV995-1000 リュート曲
- BWV1001-1040 室内楽曲
- BWV1041-1065 協奏曲
- BWV1066-1071 管弦楽曲
- BWV1072-1080 ひとつの作品の中に異なる演奏形態の含まれている作品や演奏形態の指定のない作品
演奏日時が明確な世俗カンタータを除くと、どの作品も初演日時がはっきりしていないために、作曲順そのものが決められないという事情がある。演奏日時がかなり判明している教会カンタータや受難曲にしても、楽器の差し替えをはじめとして改定が頻繁に行われているため、「決定稿」そのものが存在しない。またオルガン作品に顕著だが、単独のプレリュードを書き上げてから数年経過してからフーガを加筆することもよくある。このように作曲順がまったく確定できない状態で整理番号を設定する上で、ジャンル・カテゴリ別に分類する方法を編み出したのは優れたアイデアとされる。
それを証明するかのように、ジャンル別作品番号を採用する例が多くなっている。ハイドンのホーボーケン番号はHob.III-63のように表記する(これはIII類-弦楽四重奏曲の63番を示し、通称「ひばり」を指す)。バッハと同様に、ヘンデルはHWV、テレマンはTWV、シュッツはSWV番号を用いており、バッハ作品番号の影響力をうかがわせる。
さらに各ジャンルの中でも、細かいカテゴリに分けられている。例えば鍵盤楽器の場合
- BWV772(インヴェンション第1番)から805(デュエット第4番)までの「練習曲」
- BWV806(イギリス組曲第1番)から833(偽作の前奏曲とパルティータ)までの「組曲」
- BWV834(ハ短調アルマンド)から845(偽作のヘ短調ジグ)までの「組曲を構成する単独の舞曲」
- BWV846(平均律第1巻ハ長調)から909(協奏曲とフーガハ短調)までの「前奏曲とフーガ」
- BWV910(トッカータ嬰ヘ短調)から943(小前奏曲ハ長調)までの「前奏曲」
- BWV944(幻想曲とフーガ)から962(ホ短調のフーガ)までの「フーガ」
- BWV963(ニ長調のソナタ)から970(ニ短調のプレスト)までの「編曲作品」
- BWV971(イタリア協奏曲)から987(ニ短調の協奏曲)までの「協奏曲」
- BWV988(ゴルトベルク変奏曲)から991(アリアと変奏)までの「変奏曲」
- BWV992と993の2曲の「カプリッチョ」
- BWV994(運指練習曲)
となっている。ジャンルおよびカテゴリごとにまとまっている長所がある反面、同一コンセプトでバッハがまとめた曲集を分解せざるを得ないケースも出てくる。「クラヴィーア練習曲集第2部」にまとめられた「イタリア協奏曲」と「フランス風序曲」が、前者は協奏曲カテゴリの筆頭、後者は組曲カテゴリの19曲目に遠く離されてしまうのが典型的な例である。
作品の成立年代や真贋鑑定、さらにはジャンルの見直しなど、新バッハ全集編纂に向けた研究で新事実がいくつも発覚したこともあり、BWVの小改正が1990年に実施されている。