バイブレータ (性具)
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バイブレータとは、振動により快感を得られる性具のこと。女性の膣に挿入できるようになっており、性器や性感帯をその振動や動きで刺激し性的快楽を得ることができる。主にディルド型とカプセル型に分かれる。
古くは使用することで羞恥心や倒錯感を煽る目的もあり、パートナーに使用する目的で男性が購入することが多いと考えられてきた。そのため、より倒錯したプレイに向くよう、陰茎を誇張したデザインや人や動物の顔を模しているものなど、ともすればグロテスクでハイパワー・高機能を謳い、色は濃いピンクや黒の製品が多かった。
しかし最近では、女性のオナニーが一般化し女性の購入者が増えてきたことや、普通のセックスではあまり性的興奮を得られないパートナー間でも利用されるとみられ、デザインや色がより落ち着いたものになるなど、あまり卑猥でないものが増えてきている。また近年では女性向けの入りやすいアダルトグッズショップやインターネット上の通販サイトが増えてきており、以前より幅広い年齢層に受け入れられている。さらには、本来では膣に挿入することを想定していたものではあるが、肛門にも挿入できるタイプにものも登場し、男性同士でも使用されるようになっている。その幅広いニーズに対応するため、初心者向けの小さくシンプルな物から熟練者向けの巨大で凹凸が激しく刺激が強い物まで、様々な製品が販売されている。
バイブレーターは俗に「電動こけし」と呼ばれるが、最初の製品は「ニューハニーペット」と言い、マッサージ器として昭和30年代半ばに発売されている。電動こけしの代名詞となったのは1972年(昭和47年)発売の「熊ん子」である。人形を模したゴム製の外郭内に小型バイブレータと電池を仕込んで振動させ、女性器に密着もしくは挿入させて使用する商品はヨーロッパにも輸出されるヒット商品となった。その後、様々なメーカーが類似品を発売し多くの商品が開発された。電動こけしは単にバイブレーターと呼ばれるようになり、平成に入るとIC制御の商品も登場している。過去には黒やピンク色でシンプルな製品が多かったが、現在は様々な色や、動き、振動、またその調節機能が付いた物など、多種多様のバイブレーターが製造されている。
通販の場合、表向きはマッサージ器などと称して売られている(薬事法による規制のため)場合があり、これらでは一般商品に混じってカタログに掲載されている物も見られる。ただ注意書きとして不自然に防水機能を備えているとか直径が書かれているので、事情通にはそれと判る。人に知られにくいように、ケースに可愛いぬいぐるみなどが用いられることがある。
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ディルド型
勃起時の陰茎大の本体付け根に操作部があるタイプで主に膣や肛門に挿入するために使用する。薬事法の規制逃れのために顔を彫りこけしに似せたことから過去には「電動こけし」と呼ばれた。モーターと錘(またはカム)により震えるようにできており、中には全体が屈伸したり表面の凹凸が変化したりするなどの複雑な機構を備えた物もある。またそれら機能を適切に配置したり陰核を刺激するための装置が取り付けられているものがあるなど、より過激な興奮を得られるように改良が続けられている。このような製品を利用した場合、より強い刺激を求めて次第に太いものを求めるとする俗説やポルノのストーリーもあるが、特に医学的根拠がなく、実際には遥かに巨大な新生児を出産した経産婦でも、通常の性交で十分に性感が得られるのは周知のとおりである。
女性の膣の深さは、日本女性で平均14 - 15cmとされている。女性の性器は非処女であっても、大きなものの挿入に対して実質的な痛みや恐怖を伴うために、必ずしも大きなものを求める女性ばかりとは限らない。出産経験者が膣がゆるくなるといった話から、女性の膣は伸びやすいと思われがちだが、括約筋は拡張し続けなければ収縮して元にもどる。また、クリトリスやGスポットを刺激して得られる性感と子宮口を圧迫して得られる性感は著名だが、膣口を拡張して得られる性感は個人差が大きい。性感の調査の上では単純に巨大なものを挿入した際に、圧迫感が強すぎて挿入感が鈍るという報告も見られる。そのため必ずしも性具を用いた場合に大きなサイズを好むわけではない。実際12cm程度の小さなディルドーもロングセラー商品として販売され続けている。
主な種類
- うねり・首振りタイプ
- 内部にモーターとロッド、カムを仕込むことで棒部分をうねらせるもの。
- 三点タイプ
- 内部モーターの振動を利用し、棒状部の付け根に2つの突起を設けたもの。肛門と陰核を刺激するために作られている。極初期に出た「熊ん子(くまんこ)」から続く代表的なタイプ。
- パールタイプ
- 内部に小球を詰め込み、それを攪拌することでバイブレータ表面を変化させるもの。
- ローター内蔵タイプ
- 棒状の本体に後述のローターを仕込むもの。振動は少ないが価格は安い。
- 双頭タイプ
- 振動部が中央にあり両端が挿入可能になっているもの。これは、女性同士が松葉崩しの体位のように互いの外陰部を近づけ、互いの膣口にバイブレータのそれぞれの頭をあてがい、挿入し合うものである。
- ペニスバンドタイプ
- ペニスバンドのディルド部がバイブレータ機能を持った物。
- 防水タイプ
- ほとんどがシンプルなスティックタイプ。Oリングなどで防水しているため、入浴しながらでも使用できる。
- 家庭用電源タイプ
- 乾電池ではなく100Vコンセント(ACアダプター)で使用するタイプ。
- リモコンタイプ
- 無線操作でスイッチのオン・オフ、強弱の変更を可能にしたもの。
- 自作キット
- 野菜など好きな形状のものを型取りし、シリコーンを流し込むことで自作が可能なキット。振動は後述のローターを組み込む。
カプセル型
一般にピンクローター、または単にローターと呼ばれる物で、カプセル状に小型化した振動部を膣内へ挿入して使用する。陰核や乳首などを刺激し快楽を得る用途にも向く。乾電池の入ったスイッチのケースがカプセル状の振動部とコードで接続されており、ディルド型のように外見が男性器をかたどっていないため、所有への心理的抵抗感が少ない。
なかには、カプセル部分が防水構造になっていなかったり、カプセルの組み立て部の仕上げが悪く角張っている、コードの引っ張り強度が悪く断線しやすいなど、粗悪な商品もあるので注意を要する。挿入する時は安全のためコンドームに入れて使用するのも一つの方法である。
本来この製品は女性用であるが、これを肛門に挿入し快感を得る男性もいる。
他のバリエーション
- リモコンタイプ
- 無線操作でスイッチのオン・オフ、強弱の変更を可能にしたもの。リモコンが一見文房具のペンのように他人の目を誤魔化せるものも登場している。これらは羞恥プレイなど一種の「プレイ」の一環として利用される事もある。小型の物では乳首への刺激に特化した製品も見られる。
- バタフライタイプ
- ストラップを配して、下着のように身に着けられるようにしたタイプ。名前の通り蝶を模したものが知名度が高い。
- マラカスタイプ
- マラカスのように取っ手のついたタイプ。挿入しやすい。両端が大小のローターになったタイプもある。
ハンディー型電気マッサージ器
肩や腰などをマッサージするハンディー型電気マッサージ器の先端部に、専用のディルドなどを取り付けて女性器に挿入するなど、その振動を楽しめるようになっている。マッサージ器に取り付けるので強力な快感が得られるほか、アタッチメントが単純な構造なので洗浄しやすい。主に日本以外で製造されている。電気マッサージ器はアッタッチメントを付けずにそのままでも使用できる。この場合膣に挿入することは出来ないが、電気マッサージ器の強力な振動を極力弱め、女性器に当てることで快感を得ることが出来る。また、男性がオナニー用に使用する場合もある。性具ではないため周囲の人に気を使うことなく所有できる。
その他
電動式器具として「跨ったり、足に挟んで使用する」というタイプの物も見られる。これらはACアダプタを電源とし、上下運動する本体から飛び出したアタッチメント式ディルドやオナホールを交換することで、男性にも女性にも対応する製品だが、主に日本以外で製造・販売されており、一部が日本国内でも輸入販売されている。