ハングオン
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ハングオン(Hang on)とは、オートバイのライディングスタイルのひとつの名称。これは和製英語であり、本来はハングオフ(hang off)と呼ばれる。
[編集] 概要
オートバイでコーナーを旋回する際、車体を回転方向内側へバンクさせるが、その際ライダーも腰をシートから浮かせ、身体を内側に低く落として、遠心力とバランスをとる。その体勢がバイクにぶら下がっているように見えることから「ハングオフ」と命名されたが、日本では紹介される過程で「ハングオン」と誤認され、この名で定着することになった。
見た目にはバンク角を深く取るためのフォームと解釈されがちだが、本来の目的はオートバイの車体を「なるべく寝かせない」ことにあり、タイヤのグリップを保ち、かつリアタイヤを積極的に滑らせ早くコーナー脱出姿勢に向かうことを意図している。ルーツは北欧のアイスレースにあり、滑りやすい路面を転倒せず走る独特の技術が、ロードレースの分野にも応用されたものである。ヨーロッパの、ロードレースではマシンと一体になって深くバンクする「リーンウィズ」と呼ばれるクラシカルスタイルが一般的であったが、アイスレース出身のフィンランド人ライダーヤーノ・サーリネンがロードレースに持ち込み、ダート出身のアメリカ人ライダー、ケニー・ロバーツ (シニア)がこれを取り入れ、ロードレース世界選手権で大活躍したことから、新たなスタイルとして1980年代以降広く普及することになった。
この走行法ではバンク角を探るために、ライディングスーツの膝の外側を路面に擦って走ることが多い。そのため現在のスーツの多くには、この部分にプラスティック、あるいは皮製の「バンクセンサー」または「ニースライダー」と呼ばれるコブがついている。
モータースポーツで使われることから、峠道などで試みる一般ライダーも多いが、ヒザを擦るといった独特のフォームに固執するあまり、スムーズな重心移動にはならない場合が多い。これは「無理膝」などと呼ばれる。