ハテナ (生物)
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ハテナ(Hatena arenicola 砂浜に住む謎の生物の意のつもり)は、奇妙な細胞分裂で注目を浴びた微生物である。属名は日本語由来。
この微生物は、カタブレファリスの仲間の鞭毛虫である。葉緑体をもつが、この葉緑体には核があり、プラシノ藻類のNephroselmisの1種に由来する共生微生物由来で、いわゆる細胞内共生である事が確認されている。
元の藻類とハテナに含まれるものを比べると、ミトコンドリアやゴルジ体は貧弱になり、基底小体などは消失するなど、多くの構造が退化的であるのに対して、葉緑体は大きくなり、ピレノイドは数を増している。つまり、独立の藻類の形から、細胞内の葉緑体の地位への変化が起きているのが分かる。
また、この生物には奇妙な特徴があって、細胞分裂をすると、葉緑体をもつ細胞と持たない細胞に分かれてしまう。細胞にある唯一の葉緑体は、必ず腹面から見て右側の細胞に入ると言う。無色になった方の細胞では、捕食のための構造が形成され、実験的に単独の藻類を与えると、これを取り込むことが確認されている。つまり、無色になった虫は、新たに藻類を取り込み、これが次第に葉緑体の形になって行くものと考えられている。ただし、現在のところでは共生体の元の藻類とは別の種でしか実験が行われておらず、詳細については未解明であるとのこと。ただ、実際に野外で採集されるハテナのほとんどは葉緑体を持ち、少数の無色個体がそれに交じるというから、なんらかの形で葉緑体を入手しているのは確からしい。
[編集] 重要性
すべての葉緑体は元来がその細胞の共生微生物であったと考えられている。他の藻類ではこのハテナに見られるような現象が起きないのは、細胞が分裂する際、あるいはその前に葉緑体も分裂するようになっているからである。この両者が、本来は別の生物であったことを考えれば、むしろうまく葉緑体が配分される方が不思議であって、そこに共生が成立することに関する重要な段階があったことが想像される。このハテナではそれが起きていないということであれば、葉緑体の共生への過程における具体的な問題がこの藻類の研究から得られることが期待できる。
また、もしこれが本当であれば、単独生活の藻類が、ごく短い時間に、それも世代を経る事なくある程度の形態の変化を起こしていることになる。とすれば、その変化を起こす原因はハテナの方にあるはずである。つまり、藻類を取り込んで葉緑体化する仕組みをここから見つけられる可能性も考えられる。いずれにしても、藻類の二次共生による原生動物の藻類化に関して、重要な問題を提供するものである。
[編集] 参考文献
- 井上勲,『藻類30億年の自然史』,2006,東海大学出版社