デイトレード
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デイトレードとは、日本語では日計り商い(ひばかりあきない)のことであり、1日の市場が閉じる時には「買いポジション」も「売りポジション」も持たない取引を言う。主に、株取引やFXにおいて使用される事が多い。
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[編集] 概要
1日に複数回の取引を行い、細かく利益を積み重ねる売買手法である。場合によっては、1日で数百万円~数億円の利益を得られる(あるいは失う)など、他のトレード手法と比べ、即時性・ゲーム性・依存性が強いとされ、利益をあげ続けるためには高い熟練度を要する。
デイトレードを継続的に行う者を「デイトレーダー」と言い、本業としている者を「専業デイトレーダー」、兼業している者を「兼業デイトレーダー」という。日中に頻繁に売買する点をさして、日計り専門でないスイングトレーダーも含めてデイトレーダーと呼ぶことが多い。
デイトレードの中でも、数秒~数分の間に数ティック上下しただけで売買および反対決済を成立させる手法を指して「スキャルピング」と呼ぶ。また、1日に何度も売買するデイトレードに対して、2~10日程度の短期的な持ち越しを行う手法を「スイングトレード」と呼んでデイトレードとは区別する。それ以上の期間保有する場合は短期投資または中長期投資になる。
現物株の売買においては、差金決済が禁止されている[1]ため、実際の手口としては同一銘柄を資金余力を超えて回転売買することは出来ない(現金取引の場合)。この場合、デイトレーダーの手口としては特定銘柄の売買を終了させ、ついで別の銘柄を手がけるといったループトレードの手法をとることが多い。
[編集] 歴史
デイトレードは米国で広がり、デイトレードによる破産者の増加、それによる銃の発砲事件などの社会問題にもなった。
日計り商いは、デイトレードという言葉が生まれる以前から、日本でも可能な手法ではあった。しかし、売買手数料の高かった時には、証券会社のディーラーでもないかぎり、数Tick(値幅)だけを目標として利ざやを稼ぐ手法そのものが難しかった。しかし2001年(平成13年)の金融ビッグバンによりループトレードの解禁と手数料の自由化などをうけ、いわゆるデイトレーダーが活躍できる素地がうまれた。
手数料が自由化された後、証券会社は競うようにして売買手数料の値下げをおこない、また個人口座獲得のための営業戦略などもあって、これまで個人投資家では不可能だったデイトレードに注目が集まることになった。また、証券会社は個性的な独自サービスを競い、プロに近いチャートソフトを契約者に提供した。
2003年頃から一般人にも浸透しはじめ、参考書籍が棚を埋めるようになり始める。カリスマトレーダーの登場も、この頃である。証券会社同士の競争激化による、手数料の値下げ、サービスの個性化なども加速した。
しかし2007年頃になると、ライブドア・ショック以降の新興市場の低迷などから、日計り商いは減少傾向にあり、持ち越される取引が増えるようになった。SBIイー・トレード証券、松井証券、楽天証券、マネックス証券、カブドットコム証券の5社が調査した結果、2005年12月をピークに月間の平均売買回転率は半分近い値にまで低下している[2]。
[編集] メリット
- 資金効率がよい
- トップクラスのデイトレーダーの手にかかれば、1億円程度の資金なら年間で10倍にできるといわれている。トレードの期待値が高ければ、回数が多い方が複利の効果がある(逆に、期待値がマイナスだと、資金が減るのも早い)。
- 持ち越しのリスクがない
- 翌日に持ち越ししなければ、海外の相場変動や悪いニュース等に影響されず、リスクを低く抑える事ができる。(逆に、持ち越しのメリットもなくなる)
- 分散投資ができる
- 資金を数十回に分けて投資するスタイルをとれば、必然的に分散投資になり、リスクを限定する事ができる。(一方でストップロスに失敗すれば、9回分の利益を1度に失う可能性がある)
- 予想しやすい
- 数日・数ヶ月後の値動きが読めない「もみあい相場」の局面では、目先(数分後)の値動きのほうが予想しやすいことがある。(その予想に従わず、長く持ちすぎると大きく予想が外れることに繋がる。また他のプレイヤーのブラフや見せ玉にみられる不正行為により損失を被る可能性がある。)
- 初心者にも入り込みやすい
- 経済・金融などの知識をあまり必要とされないので、初心者でも入り込みやすい。また値動きの分析つまりテクニカル分析だけではなく、ファンダメンタル分析と併用してトレードすることもできる。資金量に応じてスリルや興奮のみを追求した純粋なロッタリーや一種のオンラインカジノとして割り切った楽しみ方も出来る。
[編集] 実情
- デメリット
- 上記のように、これまでにない利益獲得機会が見込まれ、デイトレード手法によるメリットも大きい。
- しかし、初心者にはギャンブル性、依存性が大きく、さらにある調査によればその7割が資産の全てを失うとされ、これが欠点とされる[3][4]。そのような意味で、デイトレードは投資ではなく投機なのであり、利益を上げ続けるには値動きへの深い洞察力と高レベルな感情処理能力を要する(最も有能なディーラーは「機能的サイコパス(感情機能障害者)」アメリカの心理科学者チーム。)[5])。
- また、モニター画面の数字を見続けるため、目を酷使し、精神的にも疲労が溜まる。
- 但し、デイトレーダーの中には瞬間の値動きに運をまかせるのではなく、各国の雇用統計・失業率等の重要な経済指標、各国中央銀行の動向、為替市場、長短金利市場、アメリカ・欧州・インド・中国等の株式市場、海外商品市場の動向を頭脳を駆使しつつ分析しながらトレードに取り組んでいるものも少なからずいる。
- 成功する確率
- アメリカの調査によればデイトレードで成功する者は約1割程度であり、残りは投資資金を失うか負債を抱えるという。基本的に投資家どうしの値幅の取り合いはゼロ和のゲームであるが、トータルで見れば証券会社の手数料(と譲渡益税)分のマイナスになる、マイナスサムゲームである。取引回数が増え、あるいは時間枠が短期になればなるほど、手数料に喰い潰される割合が相対的に長期投資と比較して高くなる。
- 「週刊ダイヤモンド」の第94巻41号(2006年10月28日販売号)では、ネット証券大手5社の預かり資産額が東証株価指数にほぼ連動してることから、「取引の回数を増やせば大数の法則が働き、市場平均並みの利益を平均的に出せるに過ぎない」という評価を下した記事が掲載されている。
- それに対して、そのような論証的な見方は現実の成功例を見ず、ただの無知に基づく思い込みであるとする批判が根強い。優れた投資家達が示す驚異的なパフォーマンスを、あのような少ないドローダウンで、偶然達成する人間が存在する確率は天文学的なものであるとする意見である。デイトレードがうまくいくかどうかはあくまでも個人差によるのだとし、誰しもがハリウッドスターになれるわけではないのと同じく、誰しもがデイトレーダーとして勝利できるわけではない(だから逆にデイトレードの勝者に成りうる才能ある者は確実に存在する)との考え方である。
- ヘッジファンドのリターンに関する実証研究においても、リターンの非正規性とテイルリスク(検定時に除外されてしまう程度にしか発生しない、極めて大きなイベントリスク)の存在が確認されている[6]。
- 社会的な評価
- 2003年以降、デイトレードや短期トレードにより短期間で億単位の資産を稼ぎ出したカリスマトレーダーが複数出現し、投資雑誌やテレビにとりあげられる機会も多くなったことで、デイトレーダーは社会的に一定の認知を得つつあると言える。
- だが、市場の上下に投機して利を得る相場師を、虚業をなす者として軽んじる風潮は明治時代から存在しており、現代においても一部の投資関係者、また有力経済紙のコラムや論評の一部には、企業価値に基づく年単位の長期投資こそが投資の王道であり、デイトレードを邪道と見なす見解がしばしば露出する。
- かかる立場に立つ者は、不祥事を起こしたり、関係者が社会的事件を引き起こしたりして株価が急落した銘柄でさえも、儲けのためなら保有することを厭わない、むしろ値動きが大きいため好んで売買する投資姿勢もモラルに欠ける等と批判する。また「本人や家族の将来を運任せにする無責任な人生設計は賭博と同様」等、デイトレードは倫理的に許しがたい行為という論調の批判を加えている。
- 別の問題として、得体の知れない自称カリスマ投資家や自称投資顧問事業者などが、根拠のはっきりしない「投資術」や投資情報を提供するなどと標榜し、実態のはっきりしない情報を提供することで書籍販売や情報提供料の獲得を得るための舞台としてデイトレードの流行を鼓吹している点がある。これら競馬や競艇における「予想屋」と何ら違いの無い実態の知れない情報業者に対価を支払おうとする個人投資家も後を絶たない。
- 2008年2月14日、経済産業省の北畑隆生事務次官は記者会見でデイトレーダーについて「最も堕落した株主。本当は競輪場か競馬場に行っていた人がパソコンを持って証券市場に来た。バカで浮気で無責任なので、 議決権を与える必要はない」と発言した。だがこの発言が批判の対象となると、同次官は自らの発言に論理的根拠を示して反駁することなく陳謝の意を表明した。
[編集] 専業トレーダー
2002年以降、デイトレードを生活手段とするために、他に職業を持たない専業トレーダーが多く現れた。彼らは自己資金で相場を張る点で証券会社や投資顧問会社の従業員トレーダー(雇われトレーダー)ではなく、また証券取引所の会員権を持たないという点でいわゆる「ローカルズ」とも異なるプロトレーダーである。
専業トレーダーの中には、大学を卒業後に、就職せずに専業トレーダーになる若者もいる。実家の裕福な資金を借りて投機に当てたり、専業主婦が副業として本格的にデイトレードに取り組むなど、間接的な資金提供者を持つ者もいるが、アルバイトなどで得たわずかな自己資金を担保に仕事として取り組む者、投資収益はわずかであるもののアルバイトの代わり程度として捉える者、ニートだが引きこもりながら収入を得る手段として光明を見出したい者(株ニート)、会社員から転向するものなど、実態は様々である。
日本の地方部の場合では、公共事業の削減や人口流出などを原因にして、通常の事業活動に投資するよりも事業を縮小・売却して、得た資金で株式投資などに充当するほうが期待収益率が高いことがあり、代々の家業を廃業して投機に参入する例がある。また株式市場が高度に匿名性が保証されていることを利用して、暴力団などの反社会的な参加者が仕手となり利益を獲得する舞台として利用することがある。
個人トレーダーの最上位クラスの人間からは、年間の獲得利益が証券会社の従業員ディーラーの所得より高いものが生まれている。その一方、専業トレーダーを自称しながらも投資資金を急速に失い市場から退出させられてしまう個人投資家も多数発生している。
専業トレーダーが仲間で投資会社を設立したり、あるいは有力な投資家・証券会社に専属ディーラーとして雇用されたりする場合がある。また逆に雇われディーラーが個人トレーダーとして独立する例もある。
[編集] トレード環境
- マルチモニター
- デイトレードでは、わずか数秒~数分の間に、様々な情報を見て、発注操作をしなければならないため、複数のモニターを使う事が多い。これをマルチモニターと言い、2台ならデュアルモニター、3台ならトリプルモニターと言う。専業トレーダーの中には、15~20台のモニターを使用している人もいる。監視銘柄が大量にある場合、アクセス速度の低下を回避するためモニターの台数は増える傾向にある。
- もっともモニターの数と勝敗は比例するものではなく、差金決済の可能な指数先物を専門に扱うなり、特定銘柄に常駐してトレードする場合にはこのような投資はそもそも不要である。
- 複数パソコン
- 上記のマルチモニター化するにあたり考慮すべきなのは、2~3台のパソコンで使うことである。現在のチャートソフトでは、一台のパソコンではソフトを複数起動する事ができない場合が多い。そのため、複数のパソコンを使用するトレーダーが多い。
- チャートソフト
- 証券会社が提供する独自ソフト。デイトレードでは分足チャート、板情報をリアルタイムに表示するソフトが必要になる。そのため各社が個性的なソフトを提供している。例として楽天証券の「マーケットスピード」、松井証券の「ネットストックトレーダー」などがある。
- RSS
- リアルタイムスプレッドシートの略。楽天証券が提供している、株式情報のプログラムデータ。エクセル上で動作し、自分の好きなようにカスタマイズする事で、自分にあった情報を表示させる事ができるようになる。
- 携帯電話
- 証券会社によっては、携帯電話のネット機能を利用して、サービスを提供している会社も多い。簡単なチャートを見たり、売買発注したりする事ができる。
[編集] 脚注
- ^ 「証券取引法第161条の2に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令」-第9条【信用取引を行うことを明示しない取引】証券会社は、顧客が信用取引を行うことを有価証券の注文と同時に明示しない取引については、当該顧客が当該取引により買付又は売付に係る有価証券については、これと対当する有価証券の売付又は買付により、これを決済する取引を行ってはならない。
- ^ 日本経済新聞 2007年1月28日 朝刊
- ^ デイトレに潜む依存症の危険性
- ^ 北米証券監督委員会(NASAA)の調査
- ^ ニューヨーク・タイムズ 2005年9月19日
- ^ [1]