ダロス
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『ダロス』は、バンダイの子会社・ネットワークから発売されたオリジナルビデオアニメ。
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[編集] 概要
世界初のOVAである。1983年12月14日に、第2話から発売された。これは地味な作風の1話ではなく、戦闘シーンがあり派手な2話を先に発売することにより弾みをつけるためである。
元々『魔法のプリンセスミンキーモモ』の後番組のTVシリーズとして企画されたが、同作の放送延長が決まったため一度は立ち消えになったものである。
史上初の試みということもありアニメファンの間では話題となり、第1巻は1万本が売れた[1]。全4巻では2万本が出荷、制作費は総計1億円[2]。
[編集] あらすじ
21世紀末。地球連邦政府は、人口増加、資源枯渇などの諸問題を解決するために月面開拓計画を開始した。多大な犠牲を払いながらも計画は成功、月の裏側に都市「モノポリス」が建設された。月から送られる鉱物資源は地球を甦らせ、人類に永続的繁栄を約束したが、月へ移住した月面開拓民(ルナリアン)たちは、頭に「死ぬまで外すことが出来ない」認識リングを強制的に装着された上に識別番号を振られ、死者は肉体を化学処分、墓標を立てて弔うことすら許されないなど、統轄局「スカラー」の徹底的な管理政策に苦しんでいた。
そんなルナリアンたちの心の支えが、モノポリス近郊に聳える、巨大な機械建造物「ダロス」であった。人の顔のようにも見えるそれは、いつ、誰が建造し、何を目的に活動し続けるのかなど、全てが謎に包まれている。あたかも虚空を凛と見据えるかの如き威容に、未来永劫、地球の姿を見る事が出来ないルナリアンは大いに畏敬の念を覚え、特に、計画初期から苦難を重ね、大事故発生時には避難壕として使用したこともある開拓民第一世代の老人たちにとっては、神のような存在と言っても過言ではなかった。
ドグ・マッコイ率いる過激派ゲリラは、統括局軍司令官アレックス・ライガーの恋人で、地球政府要人の令嬢メリンダ・ハーストがモノポリスを訪問した際に彼女を誘拐、人質とした上で破壊活動を活発化させ、地球連邦政府に対し、ルナリアン独立へ向けた交渉のテーブルに着くことを要求した。しかしアレックスはこれを拒絶。徹底的な武力による事態鎮圧を図る。同時にルナリアンの精神的支柱であるダロスを、体制にとって不都合な存在であると判断し、ただの機械に過ぎないことを見せつけるため、大規模な抗議集会が繰り広げられる中、内部への潜入調査を開始。その際、ダロスをアジトとしていたゲリラたちと遭遇、交戦の末にこれを破壊してしまう。
ダロスが破壊されたことにより、地球への未練から若い世代の過激派に距離を置いてきた、第一世代から第二世代のルナリアンも各所でストライキを開始、事態は先鋭化の一途を辿る。更に、地球出身者であるアレックスの独断専行に不満を募らせる、副領事を中心とした統括局内部のグループが、彼を陥れるために市街地への無差別攻撃を決行。これが大規模な暴動を引き起こし、ルナリアン労働者は全面ストライキに突入。両者の対立が頂点に達しようとした時、破壊されたはずのダロスが自己修復によって復活、活動を再開した。ゲリラは再度ダロスに集結し臨戦体制を整え、統括局も総攻撃を決定。最終決戦の火蓋が切って落とされる。
偶然ドグと知り合った、機械いじりが好きなルナリアン第三世代の少年シュン・ノノムラと、彼の幼なじみであるレイチェルは、自らの意志と無関係に、独立運動へと巻き込まれて行く。
[編集] スタッフ
- 原作・脚本:鳥海永行
- 監督・脚本:押井守
- テロップではこう記載されているが、実際には鳥海と押井の共同監督であった。
- 製作:布川ゆうじ
- キャラクターデザイン・作画監督:岡田敏靖
- メカニックデザイン:佐藤正治
- 美術監督:中村光毅
- 音響監督:斯波重治
- 音楽:新田一郎、難波弘之
- 制作:スタジオぴえろ
[編集] キャスト
- シュン・ノノムラ:佐々木秀樹
- アレックス・ライガー:池田秀一
- レイチェル:鵜飼るみ子
- メリンダ・ハースト:榊原良子
- ドグ・マッコイ:玄田哲章
- マックス:田中秀幸
- タイゾー・ノノムラ:鈴木瑞穂
- エルナ:藤村美樹
- ナレーター、カテリーナ:中田浩二
[編集] サブタイトル
- 第一話「リメンバー・バーソロミュー」脚本・演出:鳥海永行
- 第二話「ダロス破壊指令!」脚本・演出:押井守
- 第三話「望郷の海に起つ ACT1」脚本・演出:押井守
- 第四話「望郷の海に起つ ACT2」脚本:押井守、演出:押井守・鳥海永行
- 総集編「ダロス・スペシャル」
[編集] その他
製作段階で、人間ドラマにしたい鳥海と、状況描写に重きを置きたい押井と、2人の監督の目指す「ダロス」が全く異なっていることが明らかとなり、絵コンテから演出、色指定に至るまで対立し、双方で勝手に書き換えるなど制作は大混乱であった。なぜ監督が2人になったのかは今となってはわからないという。
また、押井は「主人公は機械いじりの好きな少年、ヒロイン役に鵜飼るみ子、ライバル役が池田秀一で、お話は宇宙移民者の独立戦争。まんまガンダムじゃないか」と、企画内容に大きな不満も抱えていたようであるが、「斬新な映像表現が出来た」ということで評価している。
鳥海は打ち上げの挨拶で「あと1時間半ぐらいの枠で完結させたい」と語ったが、実現することはなかった(続編を望む声も少なくはない)。
鳥海によるノヴェライゼイションが'84年10月、講談社X文庫から刊行されている。