ダッシュ (記号)
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ダッシュまたはダーシ(dash)は、ある種の横棒状の約物の総称。
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[編集] 種類
[編集] enダッシュとemダッシュ
短いenダッシュ「–」(Unicode U+2013、JIS X 0213 1-1-30) と長いemダッシュ「—」(Unicode U+2014、JIS X 0213 1-1-29) の2つがある。それぞれ、長さが欧文フォントのn、mの幅に等しいことが、名前の由来である。
ハイフン「‐」、マイナス「−」、長音符(音引き)「ー」と字形は似ているが、enダッシュとemダッシュの区別を含め、字形・使用法とも区別される。字形としては、ハイフンはenダッシュより短く、位置が低い。
ASCIIにはどちらも存在しないので、enダッシュはハイフンマイナス「-」で、emダッシュはハイフンマイナス2つ「--」で代用される。
enダッシュが半角、emダッシュが全角とされることがあり、JIS X 4051ではその幅にするように規定されている。また、文字コード規格の日本語表記ではenダッシュを「ダッシュ(二分)」、emダッシュを「ダッシュ(全角)」と表現している。
なお、Unicodeの全半角に当たる東アジアの文字幅 (East Asian Width) では、enダッシュはNa(半角)、emダッシュはA(場合による)である。
[編集] 日本語用のダッシュ
倍角の倍角ダッシュが多く使われる。この表現を文字を使用して行う場合には、emダッシュを2文字並べて「——」とすることが多い。複数並べたemダッシュは、レンダリングエンジンによってはつながって1本の横線になる。
類似の記号にホリゾンタルバー(―)があり、環境によってはShift_JISの「ダッシュ(全角)」の文字を「ホリゾンタルバー」にマッピングしている。詳細は全角ダッシュのマッピング問題を参照。
ほかに、波ダッシュ「〜」(Unicode U+301C、JIS X 0213 1-1-33) がある。しばしば全角チルダ「~」(Unicode U+FF5E) で代用される。詳細は波ダッシュを参照。
日本ではプライム記号(′)のことを俗にダッシュと呼ぶことがある(ダーシとは呼ばない)。
[編集] 用法
[編集] enダッシュ
- 区間や範囲を表す。
たとえば10-20と書かれていた場合、これがenダッシュ (10–20) なら「10から20」、ハイフン (10‐20) なら「10の20」、マイナス (10−20) なら「10引く20」である。
[編集] emダッシュ
[編集] 日本語用のダッシュ
- 倍角ダッシュの用法は、基本的にemダッシュと同じである。
- 波ダッシュの用法は、enダッシュとemダッシュにまたがる。詳細は→波ダッシュ。
[編集] 符号位置
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
‒ | U+2012 | ‒ | フィギュアダッシュ | |
– | U+2013 | 1-3-92 | – | enダッシュ 二分ダーシ、ダッシュ(二分) |
— | U+2014 | 1-1-29 | — | emダッシュ ダッシュ(全角) |
― | U+2015 | ― | ホリゾンタルバー クォーテーションダッシュ |
|
⁓ | U+2053 | ⁓ | スワングダッシュ | |
〜 | U+301C | 1-1-33 | 〜 | 波ダッシュ |
〰 | U+3030 | 〰 | ウェーヴィーダッシュ |
[編集] 全角ダッシュのマッピング問題
JIS X 0208およびJIS X 0213には全角ダッシュ (1-1-29) が含まれていて、規格ではemダッシュ (U+2014) にマッピングされている。
Unicodeコンソーシアムが定めたShift_JISのマッピング(JIS X 0208のShift_JISとは完全には一致しない)では、1-1-29に対応する0x815Cは、emダッシュではなくホリゾンタルバー (U+2015) にマッピングされている。マイクロソフトが定めたWindows用のcp932のマッピングも同じである。ただし、アップルが定めたMacOS用のマッピングでは、JIS規格に従いemダッシュにマッピングされている。(Windows Vistaでは、JIS X 0208やJIS X 0213の1-1-29のマッピングをJIS規格と同じemダッシュ (U+2014) にマッピングしている)
これらの非互換性により、0x815Cを使ったテキストデータは文字化けすることがある。とはいえ、
- UnicodeのShift-JISとcp932で一致し、JISとMacOSで一致している
- ASCII領域外なのでプログラミング言語などでは使われない
- 画面上では横棒の長さが少し変わる場合がある
- 多くの場合はハイフンマイナス(-)で代用される