タルト (郷土菓子)
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タルトとは薄く焼いた、もしくは焼いてスライスしたカステラ生地に餡を巻いて作るロールケーキ状の菓子。
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[編集] 概要
製法はポルトガル語でロールケーキを意味する「トルタ」 (torta) が由来とされ、愛媛県松山市の郷土菓子となっている。名前については発音の一致からオランダ語でケーキを意味する「taart」を由来とする説や[1]、製法とともにポルトガル語の「torta」説が提唱されている[2]。ただし、2つの語源は古代ローマ時代のラテン語で同じである(詳しくはトルテを参照のこと)。
タルトは茶菓子として供されるほか、土産品、贈答品としても用いられる。タルトといえば、「皿状にしたタルト生地にフルーツなどを盛り付ける焼き菓子」の方のタルト (tarte) が一般的だが、愛媛県では主にこの郷土菓子を指す。なお熊本県の天草地方には、このタルトの上に赤に着色したすあまを巻いたあかまきと呼ばれる菓子があるが、こちらはカステラ生地ではなくスポンジ生地であり、また「の」の字でない。
[編集] タルトの歴史
長崎探題職を兼務していた定行は正保4年(1647年)、ポルトガル船2隻が長崎に入港したとの知らせで長崎に向かい、海上警備にあたった。結局のところ、ポルトガル船は国の統治者が代わったことを伝えるだけだったため港湾内で争いは無く、この際に定行は南蛮菓子に接しその味にいたく感動し、製法を松山に持ち帰ったといわれている。その南蛮菓子はカステラの中にジャムが入ったものであった(現在のロールのようなもの)。
現在の餡入りのタルトは定行が独自に考案したものと考えられている。その後久松松平家の家伝とされ、明治以降、松山の菓子司に技術が伝わり、愛媛の銘菓となった。
[編集] タルトの作り方
生地についてはカステラを参照のこと。このカステラを薄く作るか、大きく作ったものをスライスする。それに餡を塗り「の」の字に巻いて完成である。
[編集] タルトの主なメーカー
長い棹状の商品が主流であったが、食べやすいように一口サイズに切り分けたものや1個ずつ包装した商品なども登場している。また、他の銘菓との詰め合わせも販売されている。柚子餡だけでなく、栗入りや伊予柑風味の商品もある。
また松山では長く一六本舗、六時屋の2社が製造してきた経緯があり、この2社のものが土産物・贈答品としてもよく用いられている。特に一六本舗のものは有名であり、愛媛県外では一六タルトの名称でよばれることもある。
現在製造している主なメーカーは以下の通り。
- 一六本舗 - 柚子餡は風味も良くブランドイメージが定着し広く県外にも知られている。「四国銘菓一六タルト」を標榜している。
- 六時屋 - 愛媛県下に於いては一六同様にブランドイメージが定着している。
- ハタダ - タルトにはじめて栗を入れたハタダの栗タルトは世界食品コンクール・モンドセレクションで金賞を受賞している。
- 亀井製菓 - 伊予柑をゼリー状にしたものを巻いたいよかんタルトが有名である。
- あわしま堂 - 比較的廉価なタルトを作っている。愛媛県外のスーパーなどでもここのタルトが購入ができる。
- うつぼ屋 - 「坊ちゃん団子」でも有名。切り方はやや厚い。