サーモプラズマ属
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
| ?サーモプラズマ属 | ||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 分類 | ||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||
| 学名 | ||||||||||||||||||
| Thermoplasma Darland et al. 1970 |
||||||||||||||||||
| 種 | ||||||||||||||||||
|
Thermoplasma（サーモプラズマ属）は、陸上の温泉などに生息する好熱、好酸、通性嫌気性の古細菌の一属。古細菌のモデル生物の一つで、真核生物の起源などとも絡めて研究が進められている。
目次 |
[編集] 生育条件
55-60℃の高温、pH2という強い酸性下によく生育し、自然環境では温泉や噴気孔、炭鉱のくず山などによく分布している。硫黄を好み、特に嫌気条件下では硫黄が無いと生育できない。好気条件下では酸素も利用する。通性嫌気性偏性従属栄養生物。
[編集] 形態・特徴
形態は細胞膜を欠くため非常に多様。条件によって球菌、桿菌、糸状、板状、不定形など様々な形態をとる。複数の細胞が融合した融合細胞の形成により、サイズが20μmに達することもある。べん毛は有している。
サーモプラズマ（および他のサーモプラズマ目）の最大の特徴は細胞壁を欠くという点である。細胞膜（主にテトラエーテル脂質一重膜）にはマンナンを有する糖タンパクやリポマンナンなどが多量に存在しているものの細胞壁が存在しない。このため容易に他細胞と融合する。増殖時に細胞が分裂しないこともある。なお、融合体は内部に複雑な膜系を有すこと(Yamagishi et al., 1998)や、細胞骨格の存在が確認されている。
この他ヒストンを欠き、真正細菌型のDNA結合タンパクであるHUタンパクを持つ点でも他の古細菌と区別される。
[編集] 歴史
サーモプラズマは1960年代後半にインディアナ州の炭鉱のボタ山から単離された。その後1980年代以降になって各地の温泉から単離され始め、日本でも温泉から単離されている。一時は細胞壁を欠くことからマイコプラズマの仲間ともされたが、その後好熱菌の多くが古細菌の枠組みに組み込まれていく中、1980年にウーズらによって古細菌の仲間ということが明らかにされ、マイコプラズマとはまったく別種の生き物であることがわかった。なお、サーモプラズマとはギリシア語で「熱」+「形作られたもの」を意味する。
1970年代からすでに真核生物に似た特徴を持つことがわかっており、マーギュリスの細胞内共生説ではサーモプラズマ（もしくはそれに似た古細菌）が形成する融合細胞が真核生物のホスト細胞になったと主張された。
[編集] 分類
- Thermoplasma acidophilum
基準種。最も最初期に発見された好熱菌として知られる。1960年代末にインディアナ州の炭鉱ボタ山より発見された。45-63℃で成育し、59℃、pH2付近で最もよく増殖する。pH0.5という極度の酸性でも生育できる。様々な有機体を代謝できるが、ゲノムサイズは156万4905塩基対(T. acidophilum DSM 1728)とかなり小さい。
- Thermoplasma volcanium
温泉、ボタ山、その他硫黄環境に分布。生育環境は33-67℃。59℃、pH2付近で最もよく生育する。ゲノムサイズは158万4804塩基対(T. volcanium GSS1)。
- T. sp. P61
- T. sp. S01
- T. sp. S02
- T. sp. XT101
- T. sp. XT102
- T. sp. XT103
- T. sp. XT107
[編集] 参考文献
- Ruepp, A., Graml, W., Santos-Martinez, M.-L., Koretke, K.K., Volker, C., Werner Mews, H., Frishman, D., Stocker, S., Lupas, A.N. and Baumeister, W. (2000). “The genome sequence of the thermoacidophilic scavenger Thermoplasma acidophilum”. Nature 407: 508-513. [1]
- Darland G, Brock TD, Samsonoff W, Conti SF (1970). “A thermophilic, acidophilic mycoplasma isolated from a coal refuse pile”. Science 170: 1416–1418.
