コミュニティ・カレッジ
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コミュニティ・カレッジ(Community College)は第二次世界大戦後爆発的に普及したアメリカの公立の2年制大学。 修業年数や準学士号授与機関であるという事から、よく短期大学と日本語訳されるが、社会的背景や学校構造を考えると必ずしも的確な訳ではない。俗に「コミカレ」とも呼ばれる。
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[編集] 概要
日本の短期大学が主に私立であるのに対して、アメリカのコミュニティ・カレッジは大部分が公立や州立であり、コミュニティという表現にあるように、その地域の住民、税金を払って住んでいる人たちへの高等教育及び生涯教育の場として設けられたものである。いずれのコミュニティ・カレッジも、志願者全員合格が前提である。職業訓練や四年制大学への編入学の準備などをおこなっている。
コミュニティ・カレッジは、一般的にビジネス、コンピュータ、歯科助手や看護師養成といった職業訓練を主とした編成になっていることが多いが、四年制大学への編入学を目的としたコースもある。修了すると「準学士号」(Associate of Arts) が与えられる。地域重視ではあるが、留学生でも高校卒同等以上資格がありTOEFL等により英語力が証明できれば(普通450から500点)、志願者全員が基本的に合格する仕組みとなっている。日本の専門学校のようにビルのワンフロアを借りたのみの小規模大学から4年制大学並みの大規模大学まで色々な大学がある。州立大学システムの中に二年制大学が設置されており、一定の規定の上で同大学システムの四年制大学に編入できる制度がある。
[編集] 留学する際の注意
4年制大学に編入する際に優先的に審査されるため、学費の安いコミュニティーカレッジで教養科目を取得してから4年制大学への編入を目指す学生も多い。実際に、州立大学への編入率が高いカレッジもある。州立や公立の場合、州内の提携している私立大学や州立大学があるばあいもある。この場合もTOEFLのスコアが必要であり四年制大学の入学と同じくらいのスコアまで英語力を磨く必要性がある。
アメリカの高等教育は四年制大学が中心のため、コミュニティカレッジは低所得者やマイノリティ、シングルマザー、成績不振などの何らかの理由で大学に進学できなかった人々が多い。レベルとしては日本の工業高校や商業高校レベルの内容のため、評価は低い。
[編集] 背景
東海岸13州が独立を果たす前は、その地域のリーダーを養成することを目的とするリベラルアーツ・カレッジが創設され、一部の高所得者層の子弟が進学した。その後、アメリカ合衆国として独立し、農業などの実業を目的とした庶民向けの州立大学が生まれた。その後、ベトナム戦争等に従事した元軍人に対する教育、英語を母国語としない移民や、低所得層に対する高等教育の提供という目的で生まれた。
なぜ「高等教育」が重要視されるかというと、日本の教育制度との違いが大きい。日本は義務教育を小・中の9年間で行う「詰め込み教育」であるが、アメリカは義務教育を小・中・高の12年間で行う「ゆとり教育」なので「高等教育」によってその後の所得や職業などが決まるシステムになっている。よって高校を出た程度ではウェイターや美容師、整備士等の実務系の職業に限られるので「大学を卒業すること」が重要になってくる。よって編入カラキュラムを持つ公立のコミュニティ・カレッジはアメリカでは重要な高等教育機関のひとつであり、たくさんの学生が通っている。また編入のみを目的としたカラキュラムの2年制大学をジュニア・カレッジとも表記している場合もある。
また、コミュニティ・カレッジのほかに単にcollegeやuniversityと表記している大学もある。
[編集] 起源
「コミュニティ・カレッジ」という名前の起源については、デンマークからの移民たちが、母国の成人のための社会教育の期間、市民大学(フォルケホイスコーレ、Folkehoejskole )を元に始めたものと言われている。ただし、デンマークのそれは、グルンドヴィという作家で政治家だった人が始めたもので、これは北欧からドイツ、イギリスなどのそれぞれ形態を若干変えて広まっている。デンマークのものは、学歴、資格は一切付与しないもので、教育制度の中の諸大学とは競合しないとてもユニークなもの。コミュニティ・カレッジの起源については、その他の説もある。
[編集] データ
アメリカ中にある約1100のコミュニティ・カレッジのほとんどは公立で1200万人の学生が在籍している。そのうち6~7割は定時制で多くは仕事をしている。アメリカのアフリカ系の47%、ヒスパニックの56%がコミュニティ・カレッジで学んでいる(2005年度)。 全米コミュニティ・カレッジ協会の推定によれば新しく医療関係の仕事に就く人々の半分以上はコミュニティ・カレッジで学んだ人々であり、2003年度の時点では看護師資格試験の受験者の6割はコミュニティ・カレッジを卒業した人々であった。