グレムリン
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グレムリンは伝承上の生物。
機械に悪戯をする妖精とされ、ノームやゴブリンの遠い親戚にあたる。かつては、人間に発明の手がかりを与えたり、職人達の手引きをしていたが、人間が彼らに敬意や感謝をせずにないがしろにしたため、しだいに人間を嫌って悪さをするようになった。どの家庭にもグレムリンが一人は住み着いているという。
20世紀初頭にイギリスの空軍パイロットの間でその存在が噂されたのが始まりと言われている。機械やコンピュータが原因不明で異常な動作をする事をグレムリン効果といったりする。 またインドの北西戦線に駐留していた英国空軍の兵士たちの想像力の産物とも言われる。名の由来は仕官食堂にあった本「グリムの妖精物語」、唯一飲めたビール「フレムリン」の合作とされる。志願部隊のジョフリー・レナード・チェーシャー大佐はその名をヨークシャー空港の航空機トラブルのさいに挙げている。またその名は『薄い青色の線』チャールズクレイブズ著(1941年)で描かれ、「パンチ」、「スペクテイター」、「ニューヨークタイムス」紙(1942~1943年)でも記事として取り入れられた。
グレムリンの正体、起源には諸説ある。そのひとつは、元々高い山の頂に暮らしていたグレムリンが、人類が高空飛行をするようになり、その飛行機械に興味を持ち、乗り移ったとされる。計器に指を突っ込んで指示を狂わせる、ガソリンを勝手に飲んでしまうといった悪戯をなす(米映画『トワイライト・ゾーン』にこの話が元となっている一編がある)。
さまざまな描写で描かれ、身長50センチ、体重8キロ、毛のまばらなジャックウサギに似て渋ずらを浮かべている。または赤い上着、緑のズボン、頭から角を生やし皮の飛行ジャケットとブーツを着ているという説もある。また水かきのある足にひれのついた種類もあるという。上空3000メートルで活動する種類はスパンヂュ-ルと呼ばれる。
いずれにせよ羽を持たぬグレムリンは空を飛ぶためには飛行機に乗らねばならない。技術的に優れた力量を誇り目標の座標を狂わせる、滑走路を上下させる、燃料を使い尽くさせる、機体に穴を開ける、ケーブルを齧る等、などの悪戯をする。一般にそれほど悪意のある妖精に見えずパイロットが無事に基地に集結できるように集団で手助けすることでも知られる。
またグレムリンはその成り立ちの段階から日本および黄色人種を起源とする説、20世紀初頭から出てきた新しい妖精である点、などから戦前の欧米から見た黄渦論(テクノロジーをもって発展するイエロー人種に対する脅威論)の象徴とする説も根強くある。映画グレムリン(1984’)に登場する妖精グレムリンは当時(1960’~1980’いっぱいの)経済躍進目ざましい日本、および日本人の象徴であり(テクノロジーの怪物、工業の怪物とも揶揄される日本人の)、本作を反日映画でもあるとする噂が存在した。
今日なお北米では航空機部品の納入時に、飴玉をひとつ同梱する習慣があるが、これは「どうかこの飴で満足して、大事な部品に悪戯をしないで欲しい」というグレムリンへのお供えであると考えられる。
この話は、映画グレムリン I、IIでも紹介されている。グレムリンの人形などのグッズも販売されている。
[編集] 参考文献
- 「世界の妖精妖怪事典」キャロルローズ著 原書房