クワイエット・ストーム (音楽)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クワイエット・ストーム(Quiet Storm)は、ソウルフルなスロージャムを中心に選曲され、都会の雰囲気にマッチしたラジオ・プログラム。ワシントンD.C.地区WHUR-FMのDJメルヴィン・リンゼイが創始したと言われている。名称は、よく使われたスモーキー・ロビンソンの1975年にヒット曲からつけられている。
[編集] ラジオ・フォーマットとしてのクワイエット・ストーム
1976年、メルヴィンのThe Quiet Stormフォーマットの放送は、7分間のスモーキー・ロビンソンのヒットソングから始まった。それは毎夜の恒例となり、ラジオから流れるロビンソンのトレードマークと言えるテノールは、多くのリスナーにとって慌しい一日の終わりのシグナルとなった。それは同時に、優雅で時に情熱的な旋律をBGMに、くつろぎと落ち着いた気分を提供する深夜のひとときの始まりでもあった。この4時間のプログラムは、大人の聴衆に強くアピールした。
実のところ、メルヴィンは代役でDJを務めたのだが、マネージャーに認められこのThe Quiet Stormをメインとした番組を持った。フォーマットは大変な好評を博し、数年のうちにアメリカ中の放送局に瞬く間に広まり、実質的にアメリカ合衆国都市部のラジオ放送で一日の最後に放送される番組となった。
メルヴィン・リンゼイは1992年に没したが、彼が作り上げたクワイエット・ストームのフォーマットは30年以上を経過した現在でも主要なラジオ局で定番となっている。その内容は、当初のジャズだけに留まらずR&Bやソウル・ミュージックからも曲を取り入れているが、相変わらず根幹にはメルヴィンが選んだ曲と、その流れを汲むジャズの分野から選曲されることが多い。
[編集] 音楽ジャンルとしてのクワイエット・ストーム
アフリカン・アメリカン・ミュージックのひとつに含まれるクワイエット・ストームは、杓子定規な表現をすると、メロウな音程と落ちついたリズムとそしてテンポに特徴を持つ音楽ジャンルと言える。もしくは、官能的・扇情的な感情を含有しつつ、それをなだめるが如く抑え、かすかに思わしげに暗喩するような作風の曲と言うこともできる。ジャンル的には、ソフトロックやアダルト・コンテンポラリー・スタイルに近いが、R&Bやジャズからの強い影響も加わっている。結局、都会的で、小粋な、シブく決めた音楽といったところになるだろう。
クワイエット・ストームは1970年代中旬から1990年代初頭のアメリカのベビーブーム世代に最も受けた。
WHURラジオ局を始め、都市部のブラック・ラジオ局の多くは今もクワイエット・ストーム・ショーを深夜枠で放送している。そこには、ネオ・ソウルと呼ばれるヒップ・ホップ系の曲も加わっている。また、クワイエット・ストームはスムーズ・ジャズやコンテンポラリー・ジャズ分野のメロウかつソウルフルな範囲をも含んで分類されている。
[編集] 主なアーティスト
クワイエット・ストーム・プログラムが確立した時期には、ルーサー・ヴァンドロス、アニタ・ベイカー、初期のシャーデーのキャリアと重なる。 古典的なクワイエット・ストームとしては、フランキー・ビヴァリーのボーカルによるメイズのアルバム『Golden Time of Day』、マーヴィン・ゲイの『Let's Get It On』、フィラデルフィア・ソウルの楽曲。アーティストでは アル・グリーン、バリー・ホワイトやビル・ウィザーズ、CTIレコードに所属していた時期のジャズギタリストのウェス・モンゴメリー、そしてサクソフォーン奏者のグローヴァー・ワシントン・ジュニアの曲をあげることができる。尚ワシントンは更に解釈を広げスムーズジャズの礎を作っていくようになる。