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エンタープライズアーキテクチャ - Wikipedia

エンタープライズアーキテクチャ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

エンタープライズアーキテクチャ(Enterprise Architecture、EA)とは、組織のプロセス/情報システム/人事・部門などの構造と機能を包括的かつ厳密な手法で記述する手法であり、それによって組織がその戦略的目的に沿って機能するように方向性を与えるものである。情報技術(IT)と密接に関連していることが多いが、ビジネスの最適化という分野に最も関連が深く、ビジネスアーキテクチャ、性能管理、組織構造/組織プロセスアーキテクチャなどとも呼ばれる。

エンタープライズアーキテクチャは、アメリカ合衆国連邦政府での計画立案で普通に使われる手法となっている。Federal Enterprise Architecture (FEA) の参照モデルは連邦政府の各部門でのアーキテクチャ策定の基本となっている。エンタープライズアーキテクチャ作成の第一目的は、ビジネス戦略を確認し、それに沿ってIT投資を行うことである。従って、エンタープライズアーキテクチャはビジネス戦略からそれを支える技術へのトレーサビリティを確保する。

BPインテルフォルクスワーゲングループといった企業もエンタープライズアーキテクチャをビジネスに適用して効率や生産性を向上させた。

目次

[編集] 方法論

エンタープライズアーキテクチャの実行とは、「現在」/「中間」/「目標」の参照アーキテクチャを記述するフレームワークを開発し、それを企業の改造に役立てることである。他にも「as-is」、「to-be」、「マイグレーション計画」といった用語が使われる。

フレームワークには、その組織のビジネス/アプリケーション/技術/データなどの構造に対応した部分を含む。フレームワークによって厳密な分類オントロジーが提供され、ビジネスが実行されるプロセスが明確化され、そのプロセスがどう実行されるのかといった詳細情報が明らかとなる。最終生成物はビジネス実行に関する様々な詳細さの文書と必要なリソースに関する文書である。これら文書は図を多用することが多い。

様々な詳細レベルの文書によって、意思決定者(経営者)はリソースを投資すべき箇所、組織の目標とプロセスの再編成ポイント、中心機能をサポートする方針と手続きについて情報を得た上で意思決定を行うことができる。

よくできたエンタープライズアーキテクチャは次のような質問に回答を与えることができる:

  • 現在のアーキテクチャは組織にとって役立っているか?
  • どのようにアーキテクチャを変えたら組織にとって価値が向上するか?
  • 組織の将来目標に照らして、現在のアーキテクチャはその達成に寄与するか?

特に初めてエンタープライズアーキテクチャ手法を採用する場合、短期的な結果を出すことが推奨される。上記のような基本的疑問の答えを求めるための分析を行うことで、エンタープライズアーキテクチャの重要性が認識されるだろう。具体的成果を出さずに長期間チームを運用するのは無意味である。

エンタープライズアーキテクチャを採用した場合、まずその組織の戦略と目標に関して文書を作成するところから始める。

エンタープライズアーキテクチャで扱う企業構造コンポーネントは一般に以下の4つのカテゴリに分類される:

  1. ビジネス
    1. 戦略マップ、目標、経営ポリシー
    2. 機能構成(例えばIDEF0)、組織モデル
    3. ビジネスプロセス
    4. ハードウェアソフトウェア、サービス等の提供業者
  2. アプリケーション
    1. アプリケーションソフトウェアの資産状況把握
    2. アプリケーション間のインターフェイス - イベント、メッセージ、データフローなど
    3. コンピュータネットワークインターネットイントラネットエクストラネット)およびその上のサービス(EDIeコマース)の接続&使用状況
  3. 情報
    1. メタデータ
    2. データモデル: 概念データモデル、論理データモデル、物理データモデル
  4. 技術
    1. サーバプラットフォームは何で、具体的にどこで誰が管理しているか
    2. LANWANインターネットの具体的な接続図
    3. オペレーティングシステム
    4. 情報基盤ソフトウェア: アプリケーションサーバDBMSなど

可能な限り、上記のすべては計画と意思決定のために明示的に組織の戦略/目標/運用と関連付けられるべきである。最も有用なエンタープライズアーキテクチャは、上記のような現在の技術的情報と理想的な将来の状態(参照アーキテクチャ)を文書化し、最終的にそれらのトレードオフによる目標とする将来状態を示したものである。エンタープライズアーキテクチャ作成のためのソフトウェアが徐々に一般化しつつある。

このようなIT関連の網羅的マッピングは、一般のITで使用されるメタデータ(この場合のメタデータは、企業活動で使われる知識やデータ全般を指す)やITILでいうCMDB(Configuration Management Database)とオーバーラップする部分がある。そのようなデータの正確さを保持することは多大な労力を要する。CMDB は現在状態を効率的に管理するためのものであるが、エンタープライズアーキテクチャの情報は企業のプロジェクトや戦略を計画するためのものである。

ガバナンスは、企業の未来像を定義する明確な目標と戦略を達成するために組織改変をし続ける主要なプロセスである。ガバナンスとは、強力な方針だったり、IT化方針の合意や宣言などを指すこともある。

エンタープライズアーキテクチャを成功させるには、組織内での適切な位置づけが必要である。これについては、都市計画とのアナロジーがよく使われる。あまりに専門家したグループは一種の「象牙の塔」と化し、ガバナンスとの乖離が発生する。専門家グループよりも民主的な小さなグループが最もよい[要出典]

エンタープライズアーキテクチャの実行による中間成果として、ビジネス戦略/ビジネスプロセス/組織図/技術関連資産/システムおよびインターフェイス図/ネットワークトポロジーの包括的な見直しとそれらの相互の関係の見直しが発生する。このような見直し(たな卸しおよび図の作成)は組織の全てのレベルでの意思決定の道具となる。情報が常に役立つよう、実体を反映するよう保守される必要がある。

組織は、現在状態から将来の状態への移行を行うために、常に現在状態を把握し、計画を立案遂行しなければならない。将来状態の計画には以下のような観点が含まれる:

  • 計画をサポートするIT部門の能力と現在の組織戦略とのギャップを埋める
  • 計画をサポートするIT部門の能力と将来の組織戦略とのギャップを埋める
  • IT基盤のライフサイクル管理や規制などの要件の変化に基づいたアップグレードと置換(組織の各部門単位では行われないものも含む)。サービス指向アーキテクチャはそのようなエンタープライズアーキテクチャのチームによるリーダーシップが必要とされる例である。

[編集] 他のIT分野との関係

エンタープライズアーキテクチャは情報技術ガバナンス活動の企業レベルの重要な部分を担っている。企業がITのガバナンスと管理のために形式的エンタープライズアーキテクチャを採用する例は増えてきている。しかし、本項目の冒頭で述べられている通り、エンタープライズアーキテクチャはビジネスの最適化に深く関わっている。エンタープライズアーキテクチャはまた、パフォーマンス・エンジニアリング、ITポートフォリオ管理、エンタープライズITにおける意味でのメタデータなどに関連している。

[編集] フレームワーク

エンタープライズ・アーキテクチャのフレームワークはアーキテクチャ文書を管理可能な部分に分け、それらの間の相互参照を定義する。政府機関が使用するフレームワークは相互に影響を受けて開発された。

[編集] 実例

[編集] アーキテクト認定

[編集] ツール

エンタープライズアーキテクチャ向けのソフトウェアツール。

従来からあるツールでは、現在のアプリケーションとアーキテクチャをモデル化し、さらに将来のものもモデル化し視覚化する。そして、それらの間の変化を示すためにデルタレポートと呼ばれる変化項目リストを使用する。

最近のEA計画ツールはアーキテクチャのみのモデルを対象として、実行計画の作成も可能となっている。複数の計画日程の衝突が自動的に検出され、適切な行動が採られるよう計画を変更できる。これらのツールのさらなる利点として、モデルを最新状態に保つためのプロセスフレームワークもサポートしている点がある。これにより、計画立案が完了した時点で現状の状態が変化していて適用できないというEA計画の失敗する主な要因を防止する。

[編集] 参考文献

  • Tony Shan and Winnie Hua (2006). Solution Architecting Mechanism. Proceedings of the 10th IEEE International EDOC Enterprise Computing Conference (EDOC 2006), October 2006, p23-32.
  • Carbone, J. A. (2004). IT architecture toolkit. Enterprise computing series. Upper Saddle River, NJ, Prentice Hall PTR.
  • Cook, M. A. (1996). Building enterprise information architectures : reengineering information systems. Hewlett-Packard professional books. Upper Saddle River, NJ, Prentice Hall.
  • Groot, Remco; Martin Smits, Halbe Kuipers, 2005. "A Method to Redesign the IS Portfolios in Large Organisations," Proceedings of the 38th Annual Hawaii International Conference on System Sciences (HICSS'05) - Track 8 p. 223a (IEEE)
  • Pulkkinen M.: "Systemic Management of Architectural Decisions in Enterprise Architecture Planning. Four Dimensions and Three Abstraction Levels." In: Sprague, R.H. Jr (ed.): The Proceedings of the 39th Annual Hawaii International Conference on System Sciences (HICSS), January 2006. - p.179
  • Spewak, S. H. and S. C. Hill (1993). Enterprise architecture planning : developing a blueprint for data, applications, and technology. Boston, QED Pub. Group.
  • Zachman, A.J. (1987). A framework for information systems architecture IBM Systems Journal , Vol 26, No, 3, [2]

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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