エゾシカ
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エゾシカ(学名:Cervus nippon yesoensis)は北海道に生息するシカの一種。ニホンジカ科ニホンジカの亜種である。
北海道全域に分布し、ニホンジカより大きくて、雄は体長90-190cm・体重50-130kg、雌は体長90-150cm・体重25-80kgに達する。夏毛は茶色、冬毛は灰褐色という特徴を持つ。大半は日高支庁・十勝支庁・釧路支庁・根室支庁・網走支庁など道東に住んでいると考えられている。
アイヌはシカ(エゾシカ)はイヨマンテなどの儀礼に使用せず、アイヌ文化においてはシカの神(カムイ)が存在しないと言われている。シカは単なる食料の対象であったと見られている。
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[編集] エゾシカの保護管理の歴史
- 明治21年(1888年):絶滅の危機に瀕したため、全道一円で捕獲が禁止された。
- 明治33年(1900年):絶滅の危機が回避されたので、捕獲禁止が解除された。
- 大正9年(1920年):生息数が減少したため、全道一円で再び捕獲が禁止された。
- 昭和32年(1957年):農林業被害が顕在化したので、一部地域でオスジカの捕獲禁止を解除(可猟区の設定)した。それ以降、概ね3年毎に可猟区の見直しを行った。
- 平成6年(1994年)3月:道東4支庁(十勝支庁、釧路支庁、根室支庁、網走支庁)でのエゾシカの推定生息数12万頭
現在(平成20年作成の「エゾシカ保護管理計画(第3期(案)」)でも、エゾシカの保護管理(狩猟の期間、狩猟者1人1日あたりの捕獲数、捕獲対象性別の制限など)は継続している。実際、北海道東部地域の保護管理の目標に、「絶滅の回避及び個体群の存続」が挙げられている。
[編集] 個体数の爆発的増加
北海道では1990年代よりエゾシカの個体数の爆発的増加が見られ、2000年代に入ると牧草地の被害拡大はもとより交通事故や鉄道事故を誘発するという深刻な被害を出すようになった。
2000年代からはシカの捕獲数の増加を図る試みの一環として、鹿肉を食用として流通させる試みが行われている。十勝支庁管内の足寄町では、1996年に駆除したエソジカの解体処理施設を整備し、エゾシカの肉の食用化を事業化している。従来、鹿肉の利用は鹿刺しや「もみじ鍋」に限られていたが、ハンバーグや加工製品などを使った料理がご当地メニューとして普及し始めた。例としてエゾシカバーガーがある。また、ジビエとしてフレンチ食材とし、地域振興に結び付けようという動きも知床などで盛んである。
禁猟区に指定されている国立公園内では特に個体数が急増したため、森林内の下草はおろか天然林の稚樹まで食害に遭っている。このため、若木の生長(天然更新)は全く期待できない状態であり、数十年後には森林の生態系に深刻な被害が生じるのではないかと危惧されている。
2000年代半ばにはエゾシカ革を使った革製品の製造・販売について試みられるようになった。
本来、エゾオオカミ(北海道からは100年前に絶滅)がエゾシカの数を抑制することで生態系が保たれていたため、エゾオオカミの再導入(オオカミの再導入を参照)が検討されている。
[編集] 参考文献
- 北海道環境生活部「道東地域エゾシカ保護管理計画」(平成10年3月)
- 北海道環境生活部「エゾシカ保護管理計画(第3期)(案)」(平成20年作成)