ウェルテル効果
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ウェルテル効果(Werther effect)とは、簡単に言えば、一般的に知名度や人気の高い人間が自殺すると、連鎖的に自殺が増えてしまう現象を指す。連鎖自殺、誘発効果、ドミノ連鎖とも言う。
「ウェルテル」効果という名は、若き頃のゲーテの名著『若きウェルテルの悩み』(1774年)という作品の主人公ウェルテルに由来する。物語の中でウェルテルは最終的に自殺をするが、そのことによりヨーロッパで自殺が流行し、ここからこの名が生まれた。
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[編集] 日本における事例
日本での有名なウェルテル効果は、1903年の藤村操の自殺に端を発するものである。「人はなぜ生きているのか不可解也」(人生不可解也)と、客観的に見れば理由にならない理由で自殺、それを真似する青少年が増え社会問題になった。また、1986年4月8日にアイドル歌手の岡田有希子が18歳で自殺すると、やはり同世代の若者の自殺が増えた。その他にも1998年にもX Japanのhideが自宅で急逝し自殺したと報道されると、ファンの女性の自殺が増え、YOSHIKIなど他のメンバーが警視庁の要請で自殺を思いとどまるように記者会見まで開く騒動となった。
[編集] 対象の模倣
これらの現象ではただ後追い自殺をするのではなく、自殺した人間と同じ手法で自殺しているという点が特徴的である。ウェルテルの時代はウェルテルと同じ格好(褐色の長靴と黄色のベスト、青色のジャケット)で同じ手段(ピストルによる)を用いて自殺をしている。岡田の時も、岡田本人と同様の手段である飛び降り自殺が増えたと言うべきであろう。hideの際にも前出の二例と同様の傾向が見られる。
[編集] 自殺以外に見られる同様の現象
これは単に自殺という点においてだけではなく、他の事例でも見られる現象であるという意見がある。例えば、和歌山でカレーに毒物を入れる事件が発生すると、全国で毒殺事件が数多く発生した。また第二次世界大戦が終結した後に東欧で共産主義国が次々と成立、ベトナム戦争でアメリカが撤退すると東南アジアで次々と共産国が成立した。今度はバルト三国が独立すると次々と東欧諸国が共産主義をやめ、ついにはソ連までもが崩壊してしまった。航空事故にも同様の現象が見られる。しかしながらこれらの事例は、同様な事件をマスコミがセンセーショナルに報道する為、連鎖反応が起きているように見えるだけだとの意見もある。
[編集] 2006年のいじめ自殺問題
2006年、いじめ自殺が社会問題化した。これもウェルテル効果の一つであると主張する者もいる。たとえばWHOでは、自殺に関する報道のガイドライン[1]を示しており、これによって示された本来推奨されるべきでない報道を繰り返しているマスコミによって自殺が誘発されているという主張である。確かにいじめ自殺がセンセーショナルに取り上げられるようになって以来自殺が数件立て続けに発生しており、この主張に関してもまた考慮すべき余地がある。
[編集] 関連項目
- 若きウェルテルの悩み
- ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
- 藤村操
- 岡田有希子
- YOSHIKI
- hide
- 低俗霊DAYDREAM(奥瀬サキ原作・目黒三吉作画の漫画。ウェルテル効果を狙って集団焼身自殺を図る集団が登場する)