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インターフェロン - Wikipedia

インターフェロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

インターフェロン(Interferon:IFNと略す)とは、動物体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質

ヒト白血球インターフェロン
ヒト白血球インターフェロン

ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きを示し、サイトカインの一種に含められる。医薬品としてはC型肝炎のほかいくつかの腫瘍などの治療に用いられる。1957年にA.アイザックスらによりウイルス増殖を非特異的に(抗体ではない)抑制する因子として発見され、ウイルス干渉(Interference)因子という意味でインターフェロンと命名された。それ以前1954年-1958年に長野泰一と小島保彦が同様の抑制因子を報告している。現在の知識から見れば、両因子ともタイプIインターフェロンである。

目次

[編集] タイプ

ヒトでは大きく分けて3つのタイプがある:

  • タイプIインターフェロンは、
    • α(アルファ)アイソフォーム(特異性がわずかに異なるサブタイプ):13種類 - IFN-α(1,2,4,5,6,7,8,10,13,14,16,17,21)、
    • β(ベータ):1種類 - IFN-β1、
    • ω:1種類 - IFN-ω1、
    • ε:1種類 - IFN-ε1、
    • κ:1種類 - IFN-κ、
に分けられる。相同分子哺乳類のほか、鳥類爬虫類魚類で見つかっている。これらに加え、マウスでリミチン(LimitinまたはIFN-ζ)、ウシなどでIFN-τ、ブタでIFN-δが見つかっている。タイプIインターフェロンはすべてIFNAR(IFNAR1とIFNAR2に分けられる)という細胞表面の特異的な受容体複合体に結合する。
  • タイプIIインターフェロンはIFN-γ(ガンマ)のみからなる。成熟したIFNγは反対向きに結合したホモ二量体でIFNγ受容体複合体(IFNGR:サブユニットIFNGR1とIFNGR2の1個ずつからなる)に結合する。
  • 最近発見された3番目のタイプはIFN-λで、3つのアイソフォーム -IFN-λ1、IFN-λ2、IFN-λ3からなる(これらは発見当初インターロイキンIL28A、IL28B、IL29としても命名された)。

[編集] 作用機序

ウイルスの感染や2本鎖RNAなどによって直接誘導されることが知られており、これらにはToll様受容体(TLR)の中でもエンドソームに存在するTLR3、7、9、または細胞内に存在するRIG-I、MDA-5が、関与すると考えられる。また体内にいろいろな抗原が侵入したときそれに反応してIL-1、IL-2、IL-12、TNF、CSFなどのサイトカインが産生される。インターフェロンの産生はこれらのサイトカインによっても誘導される。

インターフェロンにより調節される細胞内シグナル伝達経路の代表的なものとしてはJAK-STAT経路が知られるが、それ以外の経路も関与していると考えられる。

インターフェロンαとβはリンパ球T細胞B細胞)、マクロファージ線維芽細胞、血管内皮細胞、骨芽細胞など多くのタイプの細胞で産生され、特に抗ウイルス応答の重要な要素である。インターフェロンαとβはマクロファージとNK細胞をともに刺激し、腫瘍細胞に対しても直接的に増殖抑制作用を示す。

インターフェロンγは活性化されたT細胞で産生され、免疫系と炎症反応に対して調節作用を有し、リンホカインの一種ともされる。IFN-γにも抗ウイルス作用と抗腫瘍作用があるが弱く、その代わりIFN-αとβの効果を増強する作用がある。IFN-γは腫瘍のある局所で働く必要があり、がん治療への有効性は低い。IFN-γはTh1細胞からも分泌され、白血球を感染局所にリクルートして炎症を強化する作用がある。またマクロファージを刺激して細菌を貪食殺菌させる。Th1細胞から分泌されたIFN-γはTh2反応を調節する作用でも重要である。免疫応答の調節にも関わっており、過剰な産生は自己免疫疾患につながる可能性がある。IFN-ωは白血球からウイルス感染または腫瘍の局所で分泌される。

[編集] 医学的利用

インターフェロンはかつては希少で高価だったが、遺伝子操作により細菌培養細胞での大量生産が可能になった。

現在医薬品として数種のインターフェロン(α、β、γ)が承認され、B型・C型などのウイルス性肝炎、またいくつかの腫瘍の治療に抗がん剤放射線と併用して用いられている。副作用としては、発熱、だるさ、疲労、頭痛筋肉痛、けいれんなどのインフルエンザ様症状、また投与部位の紅斑、痛み、痒みが多い。まれに脱毛、蛋白尿、めまいや抑鬱もある。

多くの症状は可逆的で治療終了後数日で回復する。しかし致命的なものとして間質性肺炎があり、特に小柴胡湯との併用で起こりやすいので併用は禁忌である。

いくつかの異なるタイプのインターフェロンαやβがC型などのウイルス性肝炎に対して認可されている。インターフェロン投与を受けたC型肝炎患者では半数以上に改善がみられる。C型肝炎では感染直後に投与すれば発症を抑えられるとされるが、感染しても発症するまでわからないことが多い。

近年PEG化IFN-αが承認されている。これはインターフェロンにポリエチレングリコール(PEG)を付加し体内での持続時間を延長したものである。通常のIFN-αが週3回注射しなければならないのに対しPEG化IFNは週1回注射すればよい。PEG化IFNと抗ウイルス剤リバビリンとの併用により、ジェノタイプ3と4のウイルス(現在のセロタイプII, 治療に反応しやすい型、日本では患者の約30%を占める)の患者で長期治癒率75%以上、ジェノタイプ2(現在のセロタイプI、米国、欧州、日本で普通の型)の患者で約50%が得られている。またIFNα-2bが慢性骨髄性白血病(CML)や多発性骨髄腫に用いられ、腎癌や悪性黒色腫にもインターフェロンが用いられている。

インターフェロンβ(IFN-β-1aとIFN-β-1b)はC型肝炎肝硬変および多発性硬化症(MS)の抑制と再発防止にも用いられる。MSについては、IFN-βによりグリア細胞によるTNF-αの産生[1]や、抗原提示が抑制される[2]ことによると考えられている。

[編集] 外部リンク

[編集] 参考文献

  1. ^ Teige, I. "IFN-β Gene Deletion Leads to Augmented and Chronic Demyelinating Experimental Autoimmune Encephalomyelitis." J.Immunology, 170, 2003, p.p. 4776-4784. PMID 12707359
  2. ^ Teige, I. "IFN-β Inhibits T Cell Activation Capacity of Central Nervous System APCs" J.Immunology, 177, 2006, p.p. 3542-3553. PMID 16951313


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